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くくり罠・箱罠・電気柵のポイントを「けもの道」編集長がアドバイス!

連載企画:狩猟入門

くくり罠・箱罠・電気柵のポイントを「けもの道」編集長がアドバイス!

狩猟専門誌「けもの道」編集長の佐茂規彦(さも・のりひこ)さんは、ご自身も狩猟をしながら、全国各地のハンターを取材しています。「けもの道」の誌上では、趣味の狩猟者を取材するだけでなく、有害鳥獣対策に関する情報も幅広く網羅。そこで、農地における獣害対策について、佐茂編集長にアドバイスをもらいました。

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くくり罠(わな)とは

くくり罠にかかったシカ。岐阜県にて

──獣害対策によく使われている「くくり罠」とは何ですか。

「くくり罠」は、バネやワイヤーなどを組み合わせた法定猟具で、シカやイノシシの足をくくって捕獲するために使われます。獲物が足をつくところに「くくり罠」を仕掛け、踏み板を踏むとバネの力でワイヤーが締まって獲物の足をくくる仕組みです。「くくり罠」を使用するためには、「わな猟免許」を取得しなければなりません。

山に設置途中の「くくり罠」。上から軽く土、落ち葉などをかぶせて獲物に気付かれないように隠せば完成

──「くくり罠」のどんな点が農地の獣害対策に適しているのか教えてください。

「くくり罠」は箱罠に比べると安価です。また、軽量・小型で設置が簡単なため、比較的初心者でも一人で設置することが可能です。頻繁にシカやイノシシが出没する農村地域や里山における捕獲方法として選択しやすいのではないでしょうか。

くくり罠を設置中の岐阜大学の森部絢嗣(もりべ・じゅんじ)准教授(「けもの道」取材時に撮影)。

ただし効率良く捕獲するためには、獲物が足をつくところにピンポイントで設置しなければなりません。足跡の見極めができるように経験を積んだり、トレイルカメラ(遠隔操作撮影カメラ)を設置して獲物の行動を調べておいたりすることが必要です。

──危険は伴わないのでしょうか。

かかったシカやイノシシが暴れて、金属製のワイヤーや自分の足でさえ引きちぎり、人に襲い掛かってくることがあります。見回り時は獲物がかかっていることを想定して、必ず獲物より高い位置からゆっくり近づき、万一に備えなければなりません。

さらに止め刺し(捕獲した獲物にとどめを刺すこと)は最も危険ですので、まずは熟練の方の指導を仰ぐとか、近隣の銃砲所持者を呼んで、少し離れたところから銃で安全に撃ってもらうなどの方法をとるのがいいと思います。

箱罠の誘引は難しい!

餌付けのため新しい米ヌカを入れた箱罠

──罠による対策として「くくり罠」の他に「箱罠」もありますが、「箱罠」を置いてもなかなかイノシシが入らないと聞きます。

箱罠猟は、エサで獲物を中まで誘引できて初めて捕獲に至ります。最もよく使われる誘引物は米ヌカですが、箱罠猟師も日々工夫を凝らしています。「けもの道」編集部では、誘引物の生成方法について、全国の箱罠猟師に電話アンケートを実施しました(2018年春号掲載)。

そこで聞いた話ですと、米ヌカに添加物を加えている方が多くいらっしゃいました。酒粕や赤ワインで発酵させたり、パイナップルと塩を米ヌカに混ぜたり。ニオイを強くすると誘引しやすい傾向があるようです。また、サツマイモ農家さんで、米ヌカを使わずにクズ芋やでんぷん用の芋を置いている方もいました。

くくり罠も箱罠も、野生動物との知恵比べです。そうそう簡単には捕獲できません。獣害対策では、まずは田畑をワイヤーメッシュや電気柵などで防除することを検討すべきでしょう。

電気柵設置の注意点とは

サル対策に効果のある電気柵「おじろ用心棒」。支柱にも通電しているため、サルが支柱をよじ登って侵入することを防ぐ

──ネットや電気柵で防御する際は、どのようなことに気を付ければ良いでしょうか。

簡易なネットだけで獣害を防ぐことは難しいので、電気柵を組み合わせることは有効です。ただし、電気柵は設置後に漏電を防ぐための下草刈りをきちんと行うとか、風雨にさらされて新たな侵入経路ができていないか点検するとか、メンテナンスが大切です。

──電気柵が壊される場合もあるのですか。

電気柵はバチッと一瞬でも痛い目に遭うことで、動物が田畑に近寄らなくなることを期待するものです。しかし、耕作をしていない時期に通電していない電気柵をそのままにしておくと、動物が電気柵を怖がらなくなってしまい、いざ耕作時期に通電させても効果が薄くなって無理やり侵入する動物も出てくると聞きます。必要のない時期は柵自体を取り除いた方がいいでしょう。

──他にも電気柵設置の注意点があれば教えてください。
勝手に作った自作の電気柵は絶対に使わないでください。過去には農家の方が作った自作の電気柵で他人が感電し、死傷するという事故も起きています。現在、電気柵は電気事業法に基づいて、人に対する危険防止のために設置方法などが厳しく定められています。正規に販売されているものを正しく設置・運用しなければなりません。

ドローンの活用とこれからの獣害対策

農業

──問題が山積みの獣害対策ですが、最近はドローンの活用が話題になっていますね。

ドローンを使って効率的に獣害対策を進めようという動きが活発になっています。「けもの道」でも、長野県で行われたドローンの一大イベント内で実施された「鹿検知コンペティション」を取材しました(2018年春号掲載)。

農業

競技内容は山林に置かれたダミーのシカを、参加チームが各々独自の手法で検知し、その正確さを競うというものです。基本的にドローン自体の性能や飛行技術はすでに高いレベルにあるのですが、ドローンでどういった情報を収集するか、得られた情報をどう分析し獣害対策につなげるか、といった具体的な視点が利用者側に必要だということを痛感しました。

──今後、農業被害が改善される兆しはあるのでしょうか。

少なくともシカやイノシシに関する農業被害対策の方法論は確立されつつありますが、生息域も拡大しており、対策の担い手を確保しなければどうしようもありません。さらにサルやアライグマなど小型の動物による獣害については、もっと後手に回っているのではないでしょうか。獣害対策の従事者を確保すること、成功事例を素早く共有することが今後ますます重要だと思います。

「けもの道」では、獣害対策関連の情報も掲載しています。これからも各地域の取り組みなどを紹介していきますので、少しでも被害に悩む方々の参考になればと思います。

 
「けもの道」狩猟の道を切り開く 狩猟人必読の専門誌
発売:春号Hunter’s sprinG/4月、秋号Hunter’s autumN/9月(年2回発行)
定価:本体1800円+税
発行:三才ブックス

けもの道本舗

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狩猟・有害鳥獣駆除・射撃・アウトドア用品販売
※実銃(部品含む)・実包・火薬類は取り扱っておりません

写真提供:株式会社AEG

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