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グリーン・ツーリズムに始まる農泊の歴史 政府の取り組みの背景とは【これからの農泊 第3回】

グリーン・ツーリズムに始まる農泊の歴史 政府の取り組みの背景とは【これからの農泊 第3回】

最終更新日:2018年09月25日

地域活性に大きく影響を与える農泊の推進のために、国はさまざまな対策をし、予算も投入しています。農林水産省が掲げる政策目標は、2020年度までに500地域の「農泊をビジネスとして実施できる体制を持った地域の創出」をすること。この背景として、日本の農山漁村地域にどのような課題があるのでしょうか。平成初期の「農山漁村余暇法」の成立にさかのぼり、どのように国が農山漁村地域の活性に取り組んできたかを紹介します。

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平成初期から懸念されていた農村の疲弊とその対策

農泊

欧州型の余暇活動をモデルとしたグリーン・ツーリズムの提唱

平成4年、農林水産省に設置されたグリーン・ツーリズム研究会中間報告で、欧州では農村に滞在しバカンスを過ごすという余暇の過ごし方が普及しているという状況を踏まえ、グリーン・ツーリズムを「農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動」として定義し、その推進を提唱しました。

農山漁村余暇法のポイントとは

1994(平成6)年には、「農山漁村余暇法(農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律)」が成立しました。
この法律の目的は以下の2つです。

① ゆとりのある国民生活の確保と農山漁村地域の振興に寄与するため、農山漁村滞在型余暇活動のための基盤の整備を促進すること
② 農村滞在型余暇活動に資するための機能の整備を促進するための措置、農林漁業体験民宿の登録制度を実施すること
農泊

旅館業法で定められたさまざまな規制も、農林漁業体験民宿業関係では様々な規制緩和が認められてきました。例えば、農家がいろりやかやぶき屋根のある自らの住宅を民宿として利用する場合、小規模で避難上支障がなければ、新たな内装制限を適用しない(建築基準法上の取扱)などがあります。

グリーン・ツーリズムの教育的ニーズ

こうした農林漁業体験民宿業での農山漁村体験にマッチしたのは、小学生を中心とする教育旅行のニーズでした。

子ども農山漁村交流プロジェクト

子ども農山漁村交流プロジェクトホームページより

2008年度から、農林水産省だけでなく、文部科学省、総務省も一体となって「子ども農山漁村交流プロジェクト」が始まりました。
「子ども農山漁村交流プロジェクト」は、子どもたちの学ぶ意欲や自立心、思いやりの心、規範意識などを育み、力強い成長を支える教育活動として、小学校における農山漁村での長期宿泊体験活動を推進するものです。最近では中高生の参加も多くなっています。

教育旅行の地域の受け入れの実態は

教育旅行の受入は、主に地元自治体などで構成される協議会を中心として運営されています。受け入れ側は、小学校側からの申し込みにより、協議会からの依頼を受けて子どもたちを受け入れます。
プロモーションの必要もなく、集客に関しても旅行会社などが代行することから、子どもたちが喜んでくれるという意義は十分にあるものの、受入料金が安いことなど持続的な経済活動としては難しい面もあります。
一方で、プロジェクトの発足から10年がたち、受け入れる農家民宿の経営者も高齢化し、受け入れが難しくなっている面もあります。
そして、地域自体も疲弊している状態は変わらず、人口の減少、担い手の減少を食い止める手段を模索しつつあったことが、農泊推進の土壌となりました。
農泊

「農泊」という言葉はいつから?

2016年3月30日に「明日の日本を支える観光ビジョン」が発表され、「滞在型農山漁村の確立・形成」がその施策の一つとして挙げられています。
このころからグリーン・ツーリズムに代わって「農泊」が「農山漁村滞在型旅行」を指す形で使われるようになってきました。

「農泊」という言葉は、大分県の「安心院町(あじむまち)グリーンツーリズム研究会」が「農村民泊」の略として使い始めたものです。「都市等の人々が農家及び民家に泊まり体験や食事を通じ『心の交流』を深め、人が人を呼び、農産物の直売等を含む各産業を循環させる新しい経済流通の源とな」るものを指しています。
2003年には、安心院町グリーンツーリズム研究会が「農泊(農家による宿泊施設の提供)」を商標登録し、2018年6月には、農林水産省が専用使用権の設定を受けています。

※参考:安心院町グリーンツーリズム研究会ホームページ農林水産省ホームページ (「農泊」の商標について)

個人旅行もターゲットに

農林水産省は、2017年度から「農泊」を農山漁村の所得向上を実現する上での重要な柱として位置付け、「農山漁村振興交付金(農泊推進対策)」の公募を開始しました。
これは、主要観光地に集中しているインバウンドを含めた旅行者を農山漁村に呼び込み、宿泊者の増加や農林水産物の消費拡大を図るためのものです。2020年までに農泊地域を500地域創出するとの目標に向け、「農泊」をビジネスとして実施するための現場実施体制の構築、地域資源を魅力ある観光コンテンツとして磨き上げる取組等がその支援の対象となります。

国が農泊を推進する理由

政府が農泊に改めて着目する背景には、外国人観光客のニーズに広がりがみられることもあります。従来の東京から大阪を結ぶゴールデンルートでの観光に飽き足らず、さまざまな日本の文化を体験することを求める、いわゆる「コト消費」のニーズが増えているのです。
観光庁の2017年度訪日外国人動向調査の中で、訪日外国人が「次回したいこと」として「自然体験ツアー・農漁村体験」を15.6%の人が挙げています。

2017年 訪⽇外国⼈消費動向調査(観光庁)をもとに農林水産省作成(「農泊の推進について」より)

2017年の訪日外国人による旅行消費額は約4兆4000億円、うち宿泊及び飲食消費額は2兆1000億円にのぼります。その消費が農泊によって地方にも流れ、農山漁村における持続的なビジネスとして成立し、活性化していくことを目指しているのです。
 

【次回予告】
地域がどのようなプロセスを経て農泊を地域の産業として受け入れていったか、具体的な事例について農林水産省の担当者に伺います。
 
【参考】
農泊の推進について(農林水産省農村振興局)
 
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