利きの会「お米の品種編」のワークショップを始める前に、新米の定義や時期について紹介します。そして、新米の人気について探ります。
新米の時期
一般的には、9月頃に稲刈りが終わって乾燥した後に精米されます。10月上旬~11月上旬頃に新米が流通される時期とされています。
新米の定義
新米の表示は、食品表示法の規定にある食品表示基準では以下のようになっています。
1.原料玄米が生産された当該年の12月31日までに容器に入れられ、若しくは包装された玄米。
2.原料玄米が生産された当該年の12月31日までに精白され、容器に入れられ、若しくは包装された玄米であれば「新米」と表示できます。
※農林水産省「新米の季節ですが、新米の表示の定義を教えてください」
この時期限定で、その年に採れた新米ならではの食感やおいしさを楽しめます。最近では、全国でさまざまな品種が販売されていてお米にこだわっている方に人気です。
暮らしに役立つお米の基礎知識
特別栽培米と有機JAS米の違いとは
普段なにげなく食べているお米ですが、栽培方法によって農薬の使用方法や監査などがあり農林水産省のガイドラインで決められています。「特別栽培米」と「有機JAS米」は、規定に沿って生産されて認定されたお米です。
特別栽培米
生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下で栽培されたお米です。
有機JAS米
農林水産省が定めた有機JAS規格に基づいて、多年生の植物から収穫される農産物にあってはその最初の収穫前3年以上、それ以外の農産物にあっては種又は植付け前2年以上無農薬・無化学肥料で、ほ場、栽培場や採取場で管理し生産されていること。そして、登録認定機関の監査を受けたのちに認定されたお米です。
※農林水産省 はじめての人のための有機JAS規格
※有機食品の検査認証制度
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お米について少し理解できたでしょうか。さて、AKOMEYA厨房にはワークショップを受講する方たちが徐々に集まってきました。講師は、AKOMEYA TOKYO 銀座本店の店長でAKOMEYA TOKYOの‟お米コンシェルジュ”でもある、木村篤育(きむら・とくやす)さんです。今回は、お米コンシェルジュの木村さんがお話しする内容をもとに説明します。
◆お米コンシェルジュ:木村篤育さん◆
AKOMEYA TOKYOのコンセプトである「お福分けのこころ」から、お客様においしいお米を楽しんでいただく為にできたのがAKOMEYA TOKYOのお米コンシェルジュ制度です。AKOMEYA TOKYOスタッフで一定の基準を満たし、お米の知識、保管の仕方、炊き方、炊く道具にいたるまで幅広くご提案をしています。金のお米バッジがお米コンシェルジュの証です。
新米を試食して自分好みのお米を探そう!
一口に新米と言っても、もっちり、あっさり、しっかり、やわらかといった食感やうまみ、甘みなど味と香りの違いがあり、それがお米の個性となっています。上記の表より食感とバランスを見ながら好みのお米を探ります。
新米を炊くポイント
分づきの提案
AKOMEYA TOKYO 銀座本店では、玄米をお好みの分づきに合わせた店頭精米を行っていて、玄米、三分づき、五分づき、七分づき、白米より選べます。好みにもよりますがおすすめなのは五分です。水に浸ける時間は3~5時間と少し時間はかかりますが、白米に比べると栄養価が高く玄米より食べやすいため選ばれる方が多いです(※)。
お米の糠(ぬか)には、優れた栄養が多く含まれているので分づき精米をすることで、ビタミンB1やカルシウムなどをとることが期待されます。玄米だと12時間以上水に浸けてまわりの糠を軟らかくしていきます。
玄米から白米までの精米分づきサンプルを見ると分かりますが、七分は糠の70%、五分は50%、三分は30%、白米は10%(1割)を削っています。加工方法にもよりますが、無洗米は約12%ほど削っているそうです。
※精米サービスがない店舗もあります。
お米の洗い方
お米はスケール(はかり)を使いましょう。その理由は、1合カップなどのすりきりで計ると数グラムほど誤差が出ます。同じようにお水もスケールを使って計ります。今回は、3合450グラムを有田焼の黒釉土鍋(くろゆうどなべ)で炊きます。
1.まずは軽く洗って水を捨てます。
2.このままの状態で20~30回かき混ぜて手早く洗います。
この時ににおいもかいで確認します(まだ糠の香りがして、かなり白濁しています)。
3.2回目を洗って水を捨てます。
4.同じように、この状態でかき混ぜて洗います(においも確認する。2回目は少し濁っています)。
5.濁りはありますが、3~5回洗うのがベストです(洗いすぎるとお米の香りが無くなってしまいます)。
6.土鍋に火を付けてお米を炊きます。3合だと中火で、12分かかります。
お米は、洗っている間にも水を吸収しています。洗う前は450グラムでしたが、洗った後に量ると530グラムになりました。約100ミリリットルの水をお米が吸っていることになります。
お米4品種の食べ比べ
土鍋ご飯が炊けるまで、お米4品種の食べ比べ利き米体験を行います。「利き米体験 記入シート」に、お米を食べた感想を外観・香り・粘り・硬さ・うまみを記入していきます。品種は左から順番に、夢つくし、風さやか、もりとう農園 コシヒカリ、雪ほたかの新米4種が並びます。食感のチャート表を見ながら○をつけて総合的に評価します。
・外観:粒の大きさ、形や色を見ます。
・香り:鼻を近づけて香りをかいだり、お箸でお米を崩すことで香りを感じることができます。
・粘り:ご飯を噛んで、歯を離すときにを感じる感覚です。
・硬さ:ご飯を噛むときに感じる硬さや、歯ごたえ、弾力の強さです。
・うまみ:口に含んだときや、飲み込むときに感じる甘みやうまみです。
・総合:喉越しの良さや、食べたときにおいしいと感じるか総合的に○を付けます。
お米のうまみは、奥歯で噛むと甘みがどんどん出てきます。また、甘みがさっと引いていく品種もありますので、1~5で評価します。お米を食べるときは一口大を思い切って食べながら、一品種ずつ楽しみます。
さて、4品種の食べ比べで人気があっておいしかったお米は何でしょうか。そして、食べ比べたお米の味や料理の相性を説明します。
・みやま市産 夢つくしは、AKOMEYA TOKYOの中でもバランスが良く和食に合う硬めのお米です。硬めのお米は人気があります。
・中野市産 風さやかは、さっぱりとした品種なのでお刺身や酢に合います。魚の繊細な味を邪魔しません。
・もりとう農園 コシヒカリは、甘みが強いお米です。味の濃いお肉料理などが合います。このお米は、お米コンシェルジュもおすすめで参加者にも人気のあったお米です。
・コシヒカリ 雪ほたかも、甘みのあるお米です。お肉料理と相性が良いです。
お米を土鍋で炊くこと12分。ようやく蒸気が立ち上ってきました。蒸気がだんだんと強くなると炊き上がってきた合図です。このタイミングで火を切り、ここから12分蒸らします。
おすすめの新米2品種
AKOMEYA厨房に用意していただいた食事のお米は、AKOMEYA TOKYOが今年イチオシの「お福米」です。島根県飯南町産コシヒカリで、出雲大社に実りと収穫の感謝、ご加護と御縁を願い奉納された特別なお米です。甘みがあって粒がしっかりしています。
また、もう一方のおすすめ「もりとう農園 コシヒカリ」は、酒粕と米糠を土壌に入れて育てた甘みのあるお米です。‟日本一の米を作りたい” ‟日本一の酒を作りたい”。 農家と杜氏がタッグを組んで、手間暇かけて栽培したコシヒカリです。
「AKOMEYA TOKYOに勤めて5年目になりますが、酒粕と米糠を入れて栽培したお米は初めてです」と店長の木村さんは語ります。
お米と合う4種の小鉢
今回、AKOMEYA厨房に作っていただいた「新米と一緒に食べるとおいしい小鉢」を紹介します。どれもお米と良く合うこだわりの品です。
・AKOMEYA TOKYOの鯖缶
新米に合わせて材料から調味料までこだわっている生姜入りの鯖缶です。今回は、大根おろしにゆず風味のなめ茸を加え仕上げにポン酢をかけています。
・こんにゃくの白和え
こんにゃくをスライスして一晩凍らせてしみこんにゃくにしています。とび魚の白だしで解凍しながら煮ています。アコメヤの白だし(とびうお)を使用しています。
・鰆のお刺身
焼き霜造りで皮目をバーナーで炙っています。さわらは脂が乗っていて美味しく食べられます。また、奥出雲で作ったお刺身に合う濃厚なお醤油を使用しています。
・きのこと菊花のおひたし
酸味を効かせた三杯酢を使用して、仕上げにゆずの香り付けをしています。
・お碗
焼きあごを煮出した香り豊かなだしで、甘エビのしんじょが入っています。
さあ、土鍋ご飯の蒸らしも終わって炊き上がりました。外蓋と内蓋を取ると、ほかほかと湯気が立ちます。お米にぽこぽこと‟かにあな”がしっかりできているのがおいしく炊けている証拠です。
ご飯を十字に切ってひっくり返します。お米は洗い過ぎないほうが、良い香りがします。新米だからといって、水分量が多いので水を少なくする必要はありません。お米は、収穫してから農家がしっかりと乾燥させ納品しています。ですから、水の量を特別に調整する必要はありません。
ですが、新米は収穫してから日が浅く油分が少し多いのが特徴です。吸水に影響が出るので、しっかりと浸水させましょう。
お米の雑学Q&A
Q.お米を保管するにはどこが良いですか?
A.お米を保存する温度は、15~17度が適していて家庭だと冷蔵庫の野菜室が最適です。シンクの下に置きがちですが、なるべく空気に触れないように、酸化が進まないように保存します。パッチン留めなどではなくジッパー付きの保存袋で小分けにして保存すると使いやすいです。
Q.料理に使う土鍋とお米を炊く土鍋の違いは?
A.米炊き用土鍋は、土とフォルムが違います。強度のある土を使用しているので、遠赤外線効果があります。そして、お米が対流しやすいフォルムで作られています。土鍋で炊くとお米がしっかりと艶やかに炊き上がります。
Q.家庭の炊飯器で新米を炊くコツは?
A.お水にしっかりと浸けることです。お水に浸ける時間は季節で変わります。水温が関係しているので、今だと1時間くらいが目安です。夏は水温が高いので30分ほどで、季節で温度や湿度によって調節してください。暑い夏は冷蔵庫で冷やしたお水で洗米をするとしっかりと炊き上がります。
Q.土鍋で炊いたご飯を保存する方法は?
A.土鍋で炊いたご飯は粗熱を取ったらすぐにラップに包み、冷凍することをおすすめします。
Q.玄米を上手に炊くには?
A.玄米は吸水に12時間以上かかります。おがみ洗い(両手で擦り洗い)をすることで表面に傷がついて吸水しやすくなります。炊き上がり時間も短くなってしっかりと炊き上がります。
利きの会「お米の品種編」ではさまざまな品種の新米との出会いがありました。そして、疑問を解決したり意見交換ができ、新しい発見や気付きもあります。みなさんも、この時期に自分好みの新米を見つけて楽しんでみてはいかがでしょうか。
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