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日本酒の「大吟醸」って? お米を半分以上削るワケとは

日本酒の「大吟醸」って? お米を半分以上削るワケとは

ヤッホー!! あけましておめでとうございます! 世界で唯一のコンビ揃ってきき酒師の漫才師「にほんしゅ」です! 大好きな日本酒にまつわる活動や漫才をするうちに、全国の酒蔵さんへの訪問も100蔵を超えました。お正月はぜひ日本酒で乾杯していただきたい! ということで「日本酒特集」をお送りします!今回のテーマはお正月に飲みたい「大吟醸」!なんだか高そう? 冷やして飲むべき? 皆さんの疑問に答えるべく「大吟醸」にこだわる兵庫県姫路市で「龍力(たつりき)」を醸す「本田商店」に突撃インタビュー。

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「大吟醸酒」や「純米酒」はどこがどう違う?

あさやん

「大吟醸」とか「純米酒」とか聞いたことはあっても実際にはどういう違いで日本酒って分けられてるのかよくわからんって言われるのよねー!
この基本を覚えるだけでも日本酒通に近づくからね!

北井

あさやん

じゃあ解説は任せた! 手短にやれよ!
偉そうやなぁ!

北井

では簡単に解説させていただきます。
覚えるポイントは3つ! 1つめは「原料」の違いですね。「純米酒」や「純米大吟醸酒」など「純米」と名がつくものは文字通り原料が「米」「米麹」のみで、「純米」と名がつかないものは原料が「米」「米麹」「醸造アルコール」となってますね! この原料の違いで「純米大吟醸」や「大吟醸」などの違いになってるんですね。醸造アルコールとは甲類焼酎と同じ製法で造られた蒸留酒のことで、その役目はフルーティーな吟醸酒の香りをより引き出すことや、味わいを軽快にするため。
北井

あさやん

OK!! どんどん行けよー!

お前楽やな!

北井

そして2つめは「精米歩合」の違いですね! 日本酒はお米を精米してから仕込みますが、精米をする目的は味わいを雑味なくすっきりさせるため(※1)なんですね。精米歩合35パーセントだとお米の外側65パーセントを削り、35パーセントが残っているということですね!

※1 米の表面に近い方がタンパク質や脂質などの栄養が多く、それらがお酒造りにおいては雑味につながることがあるので精米して削ることで、酒の味がスッキリすると言われる。
北井

特定名称酒の分類表(画像提供:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会〈SSI〉)

あさやん

ということはたくさん米ぬかが出るってことやな? さぁ、その米ぬかたちはどこへ行くんでしょう? それは蔵元さんの解説でのお楽しみー♬
なんか腹立つな!!

北井

そして3つめは「吟醸造り」をしているかどうか!
吟醸造りとはざっくりいうと「すっきりした味わいとフルーティーな香りを引き出す手間暇かけた造り方」のこと。
現代の日本酒造りの技術の結晶なんです!
北井

あさやん

OK!! さぁ、それでは今回のテーマの「大吟醸」の詳しい解説を大吟醸にこだわる蔵元さんのところへ突撃やー♬
レッツラゴー!!
ダサいまとめ方やめてくれー‼

北井

「究極の大吟醸」を追い求める、本田商店5代目蔵元

網干駅からもはっきり見える本田商店のシンボルの大看板

瀬戸内海にほど近く、年間通じて穏やかな気候で酒米にも恵まれる兵庫県姫路市に蔵を構える本田商店。駅から3分ほど歩くと「龍力」を醸す本田商店5代目蔵元の本田龍祐(ほんだ・りゅうすけ)さんがにこやかな笑顔でお出迎え。大吟醸の基本から伺いました。

北井

龍祐さん、今日はよろしくお願いします!
ようこそ! 今日はよろしくね。

本田龍祐さん

あさやん

はい! 早めに切り上げて魚町に呑みにいきましょう!

北井

取材はちゃんとすんねん!
ちゃっかり姫路の飲み屋街のことは調べてきたんかいな。

後でゆっくりな(笑)!

本田龍祐さん

北井

本田さんもノリノリやないですか!
まあ、僕も早く飲みたいですけど。

米麹づくりをする部屋「麹室」でも熱い解説をしてくださる本田さん

北井

本田商店さんはすごく大吟醸にこだわってらっしゃいますよね。
「大吟醸」って一般消費者の方もちょっといいお酒、高いお酒みたいなイメージがあると思うんですけど、ずばりなぜ高いんでしょう?
大きく分けて2ポイントかな。
まずは「原料」。簡単に言うと値段が高くて品質のいい酒造好適米、うちでいうと兵庫県産の山田錦の特A地区のものを仕入れて、その高いお米をたくさん精米すると高くなる。

本田龍祐さん

北井

なるほど。シンプルな話ですね!
本田商店さんといえば山田錦へのこだわりも凄いので、これは別で取材させてください。
もう1つは「手間暇」やね。原料さえよければいい大吟醸が出来るわけじゃなくて、きれいな味わいとフルーティな香りを出そうと思ったら手間暇かけた造り方が必要なんやね。

本田龍祐さん

あさやん

ほんまに手間暇かけてますかー?

北井

どこ疑ってんねん!

ちゃんとやっとるがな(笑)!
吟醸造りを言い換えると「長期低温発酵」っていう造り方のこと。一桁台の低温での発酵にも耐えられる酵母が吟醸酵母の特徴やねん。低温でじわじわ~と普通のお酒より長い時間をかけて醸すことで、雑味のないきれいな味わいとフルーティな香りを出すんやね。

本田龍祐さん

北井

なるほど! 原料コストは高いし、造りにおいては神経も使うし、醸す時間も長いんですもんね! そりゃあ少し高くなりますよね!

あさやん

いや、話聞いてへんやろ!

北井

聞いとるやろ! 理解したわ。
あと、大吟醸を語る上で外せないのが「醸造アルコール(※2)」を入れるか入れへんかということやね。ここでも違いが出てくるのよ。
純米大吟醸なら味わいがしっかりとしたものができて、香りが少ない。香りがでるときはアルコール入れて大吟醸にするのよ。すべてお酒のなりたいように醸してる。
酵母が生み出したフルーティな吟醸の香りは、お酒を搾るときに酒粕(固体)の方に残ってしまう。でも、醸造アルコールを入れると、ちゃんとお酒(液体)の方に連れてきてくれて、より香りを引き立たせ定着させてくれるのよ。ひと夏越えても香りが定着しているのは醸造アルコールが添加されたものやね。
※2 日本酒に添加されるアルコールのこと。原料は、糖蜜やとうもろこしの場合が多いが、米から作られるものもある。

本田龍祐さん

手間暇かけて丁寧に作られる本田商店の大吟醸酒、特に1番左の「純米大吟醸 龍力 米のささやき 秋津」は一升瓶で税抜30000円の日本酒好き憧れのお酒

「精米」をもっと詳しく! 削ったあとの米ぬかはどこに行く?

精米機が轟音を立てながら精米中。お米の具合をチェックする本田さん

北井

おー‼ さすが! 自社精米機がこんなにあるんですね! 大きい!
そうそう。今は合計4台の自社精米機があるよ。

本田龍祐さん

あさやん

ちょっと精米機の音うるさいんで一旦止めますね!

北井

勝手にボタン触ろうとするな!

あさやん

精米業者に依頼する酒蔵さんの方が多いですが、自社精米機が4台もあるとはさすがですね!「大吟醸」を造るためには最低でも50パーセント、つまり半分お米を磨く必要がありますよね。50パーセントまでお米を磨くには何時間ぐらい精米し続けるんですか?

北井

急にちゃんと進行しだした! なんやねん! 確かに気になるけど。
多少酒蔵によって違いはあるやろうけど、うちは精米歩合50パーセントまで磨くのに50時間って感じやね。精米歩合35パーセントで100時間ぐらいかな。

本田龍祐さん

あさやん

へー! かかりますねー!
じゃあ精米歩合0パーセントだと300時間ぐらいかかりそうですね!
もうそれ米無くなってるやん(笑)!

本田龍祐さん

北井

あさやんちょっと静かにしてくれる?

北井

業者への依頼での精米ではなく「自社精米すること」って、やっぱりこだわりの大吟醸造りには欠かせないものですか?
そうやと思う。自社精米にした理由は、うちが早々に大吟醸を自社製品の軸にしようと決めたから。そのころはまだまわりに頼れる精米屋さんも見つけられなくて、自社で精米もやるしかない!と判断してのことやったのよね。ただ昔は大変やったみたいでね、最初の精米機は50年くらい前のもので、今みたいにボタンで設定すれば精米機に任せられる、というものじゃなくて精米担当者が徹夜で付きっきりでチェックせなあかんかったらしいんよ(笑)。

本田龍祐さん

あさやん

それって、もしかして、大変ですか!?

北井

絶対大変やろ!

米ぬかの使い道

酒造好適米が入った米袋(右)と米ぬかが入った大きな袋(左)

あさやん

ということでそろそろ最後の質問です!

北井

ちょいちょい仕切ってくるな!
質問させてもらい。

あさやん

大吟醸や精米について色々聞かせてもらいましたが、たくさんお米を磨くと米ぬかが沢山出るじゃないですか? もったいないような気がするんですが、その米ぬかたちはどう使われるんですか? 気になるんです! 正直に答えてください!

北井

急に熱くなっとる!! 怖いな。
米ぬかで廃棄するものはなくてね、色んな所に行くのよ。例えばぬか漬けの原料とかになるからぬか問屋さんを通していろんな食品メーカーさんへ行ったり、あとは家畜の飼料とかにもなるし、米粉なのでおかきの製造メーカーへ行ったりね。

本田龍祐さん

北井

色々使い道があるんですねー!
酒造好適米が原料のおかきってなんか贅沢ですね!
あとね、精米歩合35~50パーセントあたりの白い米ぬかは自社で焼酎にして日本酒に入れる醸造アルコールにすることもあるで。

本田龍祐さん

あさやん

出たー! それもおもしろい! 大吟醸のあのフルーティな香りを引き立てる役目ですよね! 大吟醸をつくるためにはたくさん米ぬかは出るけど、その米ぬかをもとにつくった醸造アルコールを少し入れることで大吟醸の香りがさらに生きる! 大吟醸造りで出る米ぬかも無駄になってないんですねー。
ということで大吟醸造りへのこだわりを至るところで感じさせてくれる「龍力」を醸す本田商店さんからのレポートは以上です! お正月のようなハレの日には大吟醸で乾杯しましょうねー!

北井

最後きっちりまとめよった!! 大吟醸で乾杯!
龍祐さん、丁寧な解説ありがとうございました!

ありがとうございました。

本田龍祐さん

株式会社本田商店

参考文献 『新訂 日本酒の基』NPO法人FBO
 
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