優秀な酵母とは? 震災から再生する瑞鷹の「熊本酵母」に迫る
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生産者の試み

優秀な酵母とは? 震災から再生する瑞鷹の「熊本酵母」に迫る

優秀な酵母とは? 震災から再生する瑞鷹の「熊本酵母」に迫る
最終更新日:2019年01月07日

ヤッホー!! あけましておめでとうございます! 世界で唯一のコンビ揃ってきき酒師の漫才師「にほんしゅ」です! 大好きな日本酒にまつわる漫才や活動をするうちに、全国の酒蔵さんへの訪問も訪問すること100蔵を超えました。お正月はぜひ日本酒で乾杯していただきたい!ということで「日本酒特集」をお送りします!今回のテーマは日本酒を醸す主役「麹と酵母」! 清酒酵母を語る上で外せないのが意外にもきょうかい9号酵母生誕の地、九州熊本! 熊本市で「瑞鷹(ずいよう)」を醸す「瑞鷹株式会社」に突撃インタビュー。

麹と酵母の役割分担

あさやん

今回は日本酒造りの肝! 麹と酵母のお話を聞いてもらって読者の皆さんに日本酒ファン、にほんしゅファンになってもらうでー! 今回もまず北井から簡単に説明よろしく!
あんた楽やなぁ。

北井

では日本酒を醸す「酵母」のスペシャリストの酒蔵さんにお話しを聞く前に「麹と酵母」がどういうものなんかを簡単に説明しますね!
まず「麹」ですが、最近は健康効果が注目されて、麹でつくられた甘酒とか塩麴とか色々ありますけど、そもそも麹菌というのはカビの一種ですね! カビといっても身体に害はないので安心してください!この麹カビ菌の胞子をパラパラっと蒸したお米に降りかけて、お米にもこもこっと繁殖させたものが日本酒に使う「米麹」なんです。麦に繁殖させたら麦麹、芋なら芋麹。そういうものなんですね!
北井

あさやん

日本酒づくりにおける役割は?

日本酒づくりにおける役割は「酵母のためのエサづくり」と言えると思います。アルコール発酵は「酵母が糖を食べてアルコールと炭酸ガスをつくる」ということなので糖と酵母が必要なんですね。ただ、日本酒の原料はお米。お米のメインの成分の「デンプン」を「糖」に変えてあげないと酵母が仕事を出来ないんですね。お酒になれない。だから麹カビ菌が持っている糖化酵素をつくるパワーが必要なんです! 北井

画像提供:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)

あさやん

なるほど。麹の役割はそういうことやったんやね!
あんたは知っとかなあかんで!?

北井

あさやん

あとは酵母をさらっと説明しちゃって!
早く酒蔵行きたいんやから!
なんやねんこいつ!

北井

酵母は地球上のあらゆるところにいる微生物ですね! その中でもパンの発酵に特に向いてるものは「パン酵母」、日本酒の発酵に特に向いてるのが「清酒酵母」といった具合ですが、清酒を醸してくれる様々な酵母たちの中でも、全国の酒蔵さんがよく使う優秀な酵母があります! 清酒酵母界のスター軍団「きょうかい酵母」が今回のお話の肝ですよ!
兵庫の「櫻正宗」、広島の「賀茂鶴」、秋田の「新政」、長野の「真澄」など有名な日本酒蔵に住み着いていた発酵力が強くいい香りを出す酵母たちのことで、この酵母を日本醸造協会が預かり培養し、全国どこの酒蔵でも購入して使用できるようになっているんですね! これが「きょうかい酵母」なんです。「新政」の酵母が「きょうかい6号」、「真澄」の酵母が「きょうかい7号」など、認定されていった順番にナンバーがついていきました。その中でも現在も全国の酒蔵さんが使用し、吟醸酒造りに大いに貢献した熊本県酒造研究所で生まれの「きょうかい9号酵母」に迫ります!
北井

あさやん

まだしゃべる? 先行っとくでー!
待ってくれや! 俺も行くから!

北井

「清酒酵母」を語る上で外せない熊本県酒造研究所

JR熊本駅からわずか2駅の川尻に蔵を構える瑞鷹株式会社。日本酒を醸す主役「酵母」を語る上で外せない酒蔵さんです。2016年4月の熊本地震では大きな被害を受けましたが、復活へ向け一歩ずつ前進する、人懐こい笑顔の瑞鷹常務取締役の吉村謙太郎(よしむら・けんたろう)さんに「きょうかい9号酵母」と「熊本酵母」について詳しく伺いました。

「瑞鷹」の常務、吉村謙太郎(よしむら・けんたろう)さん(写真中央)

南国熊本での清酒造りから生まれた「きょうかい9号酵母」

あさやん

謙太郎さーん!今日はよろしくお願いします!
これはこれは。ようこそおいでくださいました!

吉村謙太郎さん

北井

「酵母」のお話ならやっぱり熊本ですから! よろしくお願いします! まずは瑞鷹さんと熊本県酒造研究所の関係や歴史を聞かせていただけますか?
元々熊本(肥後藩)の酒造りは「赤酒」といって灰持酒(あくもちざけ<木灰を入れることによって品質を安定させるお酒>)が主流だったんですね。現在でも瑞鷹ではたくさんつくっていて、お屠蘇(とそ)や料理によく使われますね。明治以降はうちの蔵がいち早く清酒造りを始めたのですが、全県に清酒づくりの文化が広まるのが遅くて、熊本は清酒後進県だったんです。

吉村謙太郎さん

赤酒の瓶詰風景。年末には屠蘇散とともに販売される(画像提供:瑞鷹株式会社)

北井

なるほど。熊本の清酒づくりは苦難のスタートだったんですね。
そんな中で「熊本県全体の清酒の技術を上げよう!」と1908(明治41)年に設立されたのが「熊本県酒造研究所」なんですよ。こういう研究所は公的機関が運営するのが普通なんですけど、日本で初めての民間の酒造研究所なんです。この設立の際に瑞鷹の二代目蔵元の吉村彦太郎(よしむら・ひこたろう)が、敷地や設備などの一切を提供したんですよ。

吉村謙太郎さん

あさやん

すごい太っ腹ですねー! 彦太郎さんは肥後もっこすですね!

あさやん

……肥後もっこすの使い方合ってます?

北井

わからんなら使うなよ!
多分合ってます(笑)。
研究所は初期はうちの蔵の敷地内にあったんですが、1922(大正11)年に現在の場所(熊本市中央区)に移転させて、そこで造る日本酒を「香露(こうろ)」と名付けて正式にスタートさせたんです。
指導にあたったのは「お酒の神様」と言われる野白金一(のじろ・きんいち)先生。先生のおかげで熊本清酒のレベルが上がっていき、一番権威のある日本醸造協会主催のお酒のコンテスト「全国清酒品評会」で1930(昭和5)年には3900銘柄中1位が瑞鷹で、トップ5までの4蔵を熊本酒が独占するまでになったんです。

吉村謙太郎さん

お酒の神様、野白金一先生とスリーショット!

あさやん

それはすごい! 例えるなら……

あさやん

北井、なんかある?

北井

浮かばんなら言うなや!

北井

ドラマのスクールウォーズとか、漫画のROOKIESみたいですねぇ。
いいですね! そんな感じかもしれませんね。
野白先生は現代の吟醸造りの基礎を作った方なので、お酒好きな方はぜひ調べてみてください。(※)

吉村謙太郎さん

※熊本の清酒の歴史(熊本県酒造組合)

「きょうかい9号酵母」と「熊本酵母」は別物?

北井

熊本県酒造研究所で生まれた熊本酵母のお話をもう少し詳しく聞かせていただいていいですか?
簡単に言うと「優秀な日本酒が出来るところには優秀な酵母あり」ということだと思います。
1952(昭和27)年に熊本県酒造研究所で「熊本酵母」の培養に成功して1968(昭和43)年に日本醸造協会と正式契約をして「きょうかい9号」として全国に配布が始まったんですよ。

吉村謙太郎さん

熊本酵母で醸すお酒のタンクを説明する吉村さん

北井

なるほど。「熊本酵母」と「きょうかい9号酵母」は別物なんですか?
元々は同じものですが、熊本酵母を日本醸造協会に預けてそれぞれで培養し続けているので、現在はすこーし違うものになっているということですね。

吉村謙太郎さん

あさやん

……ラーメン屋の“のれん分け”みたいな感じですか?
うまいこと言いますね! そんな感じですね。元株は同じなので酵母の性質として似ているのは間違いないですが、熊本県酒造研究所で現在も培養されているのが「熊本酵母」、日本醸造協会で培養しているのが「きょうかい9号酵母」ということですね。

吉村謙太郎さん

あさやん

なるほど。
ラーメン屋ののれん分けみたいな感じですね!

北井

わかったから! 褒められて調子のるなよ。

北井

熊本酵母の特徴を教えていただけますか?
熊本酵母は吟醸酵母の代表格だと思います。フルーティで華やかな香りを持つ吟醸酒を造るのに向いている酵母ですね。吟醸酒のように上品な味わいとフルーティな香りを出すには、低温での長期発酵に耐えられる「タフで根性がある酵母」じゃないとだめなんですけど、そのタフさを持った酵母だと思います。きょうかい9号酵母も同じような特徴ですね。もっと新しい酵母もあるんですけど、タフさを買われて今でも全国の酒蔵さんで愛用されています。

吉村謙太郎さん

熊本県酒造研究所で培養される「熊本酵母」(画像提供:瑞鷹株式会社)

北井

なるほど! 上品な吟醸酒の味や香りを出すためには上品な酵母ではなくて、タフで根性がある酵母が必要なんですね!
熊本酵母も全国の酒蔵さんは購入できるんですか?
できますよ。きょうかい9号酵母ではなくて熊本酵母を使いたいという酒蔵もけっこうありますから。

吉村謙太郎さん

あさやん

ラーメンでいうと、天下一品の京都本店の味を求めるって感じですね!

北井

ラーメンもうええから!
多分ええ例えやけど!
確かに(笑)

吉村謙太郎さん

熊本地震の被害からの瑞鷹酒造復活の道のり

震災当時の蔵の敷地内。瓦の落下や建物の壁の崩壊など大きな被害があった(画像提供:瑞鷹株式会社)

北井

熊本の酒造りと酵母のお話を色々聞かせていただきましたけど、僕たち前に瑞鷹さんに来させていただいたのが2016年1月で、その3ヶ月後に熊本地震が発生したんですよね。
うちは熊本市内で震源も近かったんで、正直かなり被害はありましたね。従業員がみんな無事だったのは何よりでしたが、瓦が大量に落ちたり建物の被害もありましたし、お酒も一升瓶でいうと2万本くらいは割れてしまいましたね。

吉村謙太郎さん

北井

胸が痛いです。そこから酒造りを再開していくのは本当に大変でしたよね。
「しばらくはこの蔵での酒造りは無理だ」と思いましたね。でも社員たちが自分の生活も大変なのにすぐに出勤して来てくれたり、全国から大工さんのボランティアさんが泊まり込みで助けに来てくれたり、すごく周りの人たちに勇気づけられましてね。一歩ずつ一歩ずつ進んできました。

吉村謙太郎さん

北井

みなさんの瑞鷹愛が溢れていますね!
しかも面白いくらいに蔵の大事な部分ばかり被害が大きかったんです。清酒づくりと赤酒づくりに関わる部分ですね。逆にこれは「生まれ変われ!」と神様からもらったチャンスでもあるなと。冷蔵設備など設備として入れたかったものを入れたりもできました。

吉村謙太郎さん

あさやん

七転八倒ですね!

北井

それ苦しんでるだけやから!

北井

七転び八起きね!
不屈の精神。肥後もっこすですね!

瓶詰めをするスペースを新しくするなど少しずつ前進する瑞鷹(画像提供:瑞鷹株式会社)

しかも熊本の宝、そして瑞鷹の酒造りにも欠かせない「熊本酵母」はあの地震からも熊本県酒造研究所内で厳重に守られていて、3日後には販売してましたからね。これは瑞鷹も「やるしかないぞ!」と。

吉村謙太郎さん

あさやん

瑞鷹さんが中心となって熊本の清酒づくりの技術を向上させよう!という熱い想いの中誕生した熊本県の宝「熊本酵母」の存在が、時を経て大地震でピンチに陥った熊本の酒造り復活への後押しの大きなパワーになった! 熊本酵母も瑞鷹さんも厳しい環境でもタフさが素晴らしい! 必ず大吟醸な未来が待ってますね!
おぉ! ありがとうございます!

吉村謙太郎さん

北井

最後めちゃくちゃうまいことまとめよった!
謙太郎さん、本当にありがとうございました!

瑞鷹株式会社
熊本県酒造研究所

参考文献 『新訂 日本酒の基』NPO法人FBO
 
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