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畑の雑草図鑑〜スギナ編〜【畑は小さな大自然vol.30】

畑の雑草図鑑〜スギナ編〜【畑は小さな大自然vol.30】

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。家庭菜園初心者からの相談が多い「雑草」の悩み。今回のテーマは、地下茎でどんどん増えていき除草の大変な「スギナ」。実は春になるとよく見かけるあの有名な植物です。その生命力は3億年もさかのぼるスギナの祖先に由来があるとか。スギナの自然界における役割や特徴を知って、目の敵にせず上手に対処する方法をお伝えします。

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生命力が高く、栄養豊富な雑草

スギナの地下茎

スギナという雑草を知らない方でも「ツクシ」と聞けば分かる方も多いかと思います。スギナはツクシの葉っぱの部分にあたり、子孫を残すための胞子をまくためにツクシが出てきます。このツクシとスギナの部分は地下茎と呼ばれる地下で張り巡らされる茎によって繋がっています。スギナは胞子で繁殖する以外にも、この地下茎は30cmほど層の中で張り巡らせ、そこでまた根を張り、芽を出してそのテリトリーを広げていきます。この地下茎は、切られたとしてもその一部が土に残っていればまた再生します。
 

背丈は15cmほどでそこまで大きくなりませんし、葉も細いため、野菜を日陰にしてしまうようなことはそこまでありませんが、地上部を刈ったり、焼いたりしてもまたすぐ生えて来てしまうため、畑の雑草としてはとても厄介な部類に入ります。
 
また、スギナは栄養成分が豊富であることでも知られています。カルシウムやマグネシウム、カリウム、リンなどのミネラルやビタミンなども豊富です。

スギナの祖先は電柱サイズだった!?

3億年前に生えていたロボクのイメージ図(筆者作成)

スギナはシダ植物の仲間で、その祖先は3億年前から存在していたと言われています。それはロボクという植物なのですが、なんと体長10mほどだったとか。この時代に生えていた巨大なシダ植物の堆積物が、今私たちの文明を支えている石油になったという説がありますが、本当にそうだとしたらとても感慨深いものがあります。とても小さくなってしまったとは言え、こんな大昔から存在していたと考えると、生命力が高いこともうなずけます。

スギナはどんな場所で増える?

特定の雑草を生えにくくするための対策を考えるときは、まずはその雑草がどんな土壌で生えやすいかを調べます。そこにスギナがたくさん生えているのはたまたまではなく、スギナが繁殖しやすい土壌だったからこそ生えているわけです。

スギナは一般的に酸性土壌のやせ地で生えることが知られています。このような土地はほとんどの植物が嫌う環境なのですが、スギナは数少ない栄養をかき集める力があり、酸性土壌の影響も受けないため、優先的に生き残ることができます。中性土壌でも生えないわけではありませんが、中性土壌だと他の雑草も生えやすくなるため、スギナの割合は減って行きます。

スギナが生える土地の地力レベルは?

地力 特徴 生える草 適した野菜
レベル4 ほとんどの野菜が育つ ハコベ、ホトケノザ、オオイヌノフグリなど ナス、ピーマン、キャベツ、白菜、玉ねぎなど
レベル3 肥料を入れて大体の野菜が栽培可能 スベリヒユ、カラスノエンドウ、ノボロギク、ツユクサなど ミニトマト、きゅうり、人参、大根など
レベル2 栄養の絶対量が少ない スギナ、ハハコグサ、イヌタデ、シロツメクサなど さつまいも、大豆、枝豆、ジャガイモなど
レベル1 土が硬く痩せている セイタカアワダチソウ、ヨモギ、チガヤなど ヒエ、アワなどの雑穀

スギナが多い土地ではさつまいもや大豆などが適している

上の図は地力(ちりょく)=「その土地が植物を育む力」を便宜的に4段階に分け、そのレベルごとに生えやすい雑草を表したものです。地力の最大値をレベル4とすると、スギナが生える地力はレベル2に該当します。つまりチガヤがたくさん生えている畑は恐らく地力も低いのだろうと見当をつけることができます。
この診断方法についてや地力レベルについての詳細は、「雑草で診断!その土で野菜は育つのか?【畑は小さな大自然vol.7】」の記事をご覧ください。ただしこの診断方法は学術的に確立されたものではありませんので、あくまでも目安程度にしてください。また、スギナの多い土壌は酸性に傾いていることが多いですが、必ずしもそうではない場合もありますので注意してください。

スギナはどう対策する?

スギナは地下茎が残っているとまた生えてきます。また、地下茎が張り巡らされた場所では野菜が根を広げにくくなるため、そこで野菜を育てようとする場合は地下茎を全て掘り返すことが必要になります。掘り返した地下茎は土の上に広げて乾燥させてしまえば、再び根をはることはほとんどありません。しかしただ掘り返すだけだと、少しでも地下茎が残っていればまた繁殖してしまうので、スギナが繁殖しにくいような土づくりも合わせて行っていきましょう。それを行うことで、自然とスギナが生えてこないような環境になっていきます。

スギナの役割とそれを肩代わりする方法

自然には生態系を豊かにする仕組みがあり、そのために全ての生き物は何らかの役割を持っていると、僕は考えています。畑に生える雑草も、何かしらの役割があるからこそ生えている。ですからその雑草の役割を肩代わりし、雑草の役目をなくすことで、その雑草が自然と生えなくなりますし、地力を高めることにもつながります。
ということで今回は、スギナの役割とそれを肩代わりする方法を考えていきます。

スギナがその土地の生態系を豊かにするための役割は特に以下の3つだと思っています。
①ミネラルの補給
②土壌の中和
③土を柔らかくする

役割①ミネラルの補給

木灰をまくことで、ミネラルの補給と土壌中和を同時にできる

スギナは土の中の少ないミネラル分をかき集める力に優れています。そのために痩せた土地でも生きていけるわけですが、これが枯れて土に還るとき、今度は逆に土にミネラルを還して補給する働きがあるのではないかと考えています。もちろん土から吸収した分だけ還すので、絶対量は変わらないでしょうが、栄養素の蓄え場所となる腐植質とともに土にミネラル分が還ることで、より次の世代の植物が利用しやすい形で遺されるのではないかと考えています。
 
スギナに土にミネラルを 補給する働きをしてもらう方法は、刈ったスギナをそこに敷くことです。地下茎もそのまま土の上に置いておけば、再び根付くことはほとんどありません。また雑草や落ち葉から作った堆肥もミネラルが豊富でバランスも良いですし、木を燃やした灰もカルシウムやカリウムが豊富ですので、オススメです。

役割②土壌の中和

スギナはカルシウムが豊富で、ほうれん草の150倍含まれていると言われています。カルシウムといえば、石灰の主成分ですね。スギナは酸性土壌で生えてきやすいですが、石灰と同じようにここでスギナが土に還ることで、酸性土壌を中和する役割があるのではと思います。
 
スギナが酸性を中和するという働きを肩代わりするためには、土壌が酸性に傾いている場合、土壌のpHを6.0〜6.5ほどの弱酸性に近づけていくことが重要です。酸性土壌を中和させる資材としては、家庭菜園には初心者には有機石灰または木灰をオススメしています。詳しくは以下の記事を参考にされてください。

役割③土を柔らかくする

地下茎以外の雑草は、根を残して刈る

スギナはその地下茎を張り巡らせていくことによって、養分を集めていきますが、やがてその地下茎が枯れた際には、その穴はトンネルとなり、水や空気、土壌生物の通り道となります。また他の植物の根も張りやすい状態になります。
 
これを肩代わりするために有効なのは、根を残した草刈りを行うことです。ただしスギナのような地下茎で増えていく雑草の根は最初に全て取り除いておきます。するとそのあとはそれ以外の雑草が生えてきます。地下茎の植物以外はそのほとんどが根が残っていてももう再生することはありません。こういった雑草の根はむしろ残していた方が、土にとってのメリットも大きく、スギナのような地下茎の雑草は生えにくくなるのです。
これは少しコツが要りますので、詳しくは「雑草は根から抜いちゃダメ!? 草刈りの新常識【畑は小さな大自然vol.4】」をご覧ください。また腐葉土や有機堆肥、雑草堆肥などの有機物を土に補給していくことも土を柔らかくすることに繋がりますので、併せて行いましょう。

スギナの特徴をうまく活かそう

スギナがたくさん生えている畑は、酸性で痩せている土地が多く、地下茎を取り除くのも大変です。しかし、そのスギナがもつ豊富な栄養をうまく活かし、彼らがしようとしていることを肩代わりすることで地力も上がり、スギナも自然と生えなくなっていきます。スギナが生えてお困りの方はぜひ試して見てください。
 
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