地下で広がる厄介な雑草
チガヤはイネ科の雑草で、イネのように平均的に40〜60cmほどの細長い葉がツンツンと立つのが特徴で,田畑の土手などによく生えています。5〜6月になると尻尾のような白い穂がつくのでより見分けやすくなります。
種による繁殖だけでなく、地下茎と呼ばれる根のような器官を地中に伸ばし、広がった先でまた芽を出すというような繁殖の仕方をしていきます。芝生のようなイメージをしてもらえればわかりやすいかもしれません。この地下茎を持っているため、地上部の葉っぱを刈っても、地下茎が残っていればまた芽が出てきます。
多年草で、冬の間も葉が枯れることはあっても、地下茎は枯れないため生き残り続けます。またこの地下茎からは他の植物を生えにくくするような化学物質が出ているため、他の雑草を押しのけてそのテリトリーを広げていきます。
昔はあえてチガヤを育てていた?
その旺盛な繁殖力ゆえに嫌われているチガヤですが、昔の人はこのチガヤが田畑の土手に繁殖するように意図的に手入れを行っていたと言われます。地下茎が残っていればまたすぐ生えて来るという性質を活かして、定期的に草刈りや野焼きを行うことで、チガヤだけがそこに残るようにしていたのです。
その目的としては、①土手崩れを防ぐ、②家畜の飼料にする、③田畑への堆肥として利用する、という3つがあったようです。
地下茎を取り除くだけでは根本的な対策にはならない
畑の中にチガヤが生えている場合、他の草のように地上部を刈り取るだけではダメで、地下茎から全て掘り起こさなければなりません。鍬や耕耘機などで耕し、出てきた根を全て畑から取り除くというなかなか地道で大変な作業になりますが、最初にこれを頑張ってやっておくことで、そのあとの野菜づくりのしやすさがかなり変わります。
しかし地下茎を全て取り除くだけでは根本的な対策にはなりません。取りこぼした地下茎が残っている場合もありますし、どこかからか種が飛んできて広がっていくということもあるからです。根本的に解決するためには、チガヤのタネや地下茎が多少あってもそこで繁殖しにくい環境にしていく必要があります。
チガヤはどんな土壌で生える?
特定の雑草が生えにくくするための対策を考えるときは、まずはその雑草がどんな土壌で生えやすいかを調べます。そこにチガヤがたくさん生えているのはたまたまではなく、チガヤが繁殖しやすい土壌だったからこそ生えているわけです。
チガヤは基本的に硬くて栄養の少ない土地で繁殖します。他の植物はあまり好まないような地力(土が持つ植物を育む力)の低い土地でも生き延びることができます。上の図のように地力の最大値をレベル4とすると、チガヤが生える地力はレベル1に該当します。つまりチガヤがたくさん生えている畑は恐らく地力も低いのだろうと見当をつけることができます。
この診断方法についてや地力レベルについての詳細は、「雑草で診断!その土で野菜は育つのか?【畑は小さな大自然vol.7】」の記事をご覧ください。ただしこの診断方法は学術的に確立されたものではありませんので、あくまでも目安程度にしてください。
チガヤの3つの役割とそれを肩代わりする方法
地力レベルは単純に生えてきた雑草を刈って敷くを繰り返すだけでも次第に上がっていきますが、とても時間がかかります。
そこで、地力をレベルアップのスピードを早めるための適切な土づくりが大切になってきます。その土づくりとは、「チガヤの役割を肩代わりする」という方法です。
地力のレベルが上がってくると、チガヤの役割がなくなって生えなくなり、次第に他の雑草が生えるようになります。つまりチガヤが行っている役割を土づくりによって肩代わりすることで、チガヤが生えなくなりますし、地力のレベルも上がっていきます。
チガヤが行なっている役割としては以下3つが大きいと考えています。その役割を肩代わりする方法として考えられるものも一緒に解説していきます。
役割①土を柔らかくする
チガヤの特徴でもある地下茎を張りめぐらせる力は、硬い土を掘り進み、先陣を切って他の植物や土壌生物が生きやすい環境を整える役割があるのではないかと考えています。
これを肩代わりするために有効なのは、根を残した草刈りを行うことです。ただしチガヤのような地下茎で増えていく雑草の根は最初に全て取り除いておきます。するとそのあとはそれ以外の雑草が生えてきます。地下茎の植物以外はそのほとんどが根が残っていてももう再生することはありません。こういった雑草の根はむしろ残していた方が、土にとってのメリットも大きく、チガヤのような地下茎の雑草は生えにくくなるのです。
これは少しコツが要りますので、詳しくは「雑草は根から抜いちゃダメ!? 草刈りの新常識【畑は小さな大自然vol.4】」をご覧ください。また次に紹介する有機物を土に補給していくことも土を柔らかくすることに繋がりますので、併せて行いましょう。
役割②有機物を補給する
チガヤをはじめとするイネ科植物は、空気中からも窒素を吸収する微生物と共生しているため、痩せた土地であってもどんどん大きくなっていきます。そしてそれが枯れたり、刈られて土に帰ることで豊富な有機物が土に補給される事になり、良い土の原料となっていきます。
これを肩代わりするために有効なのは、有機堆肥を土に入れることです。特に土の中の腐植質を増やすために「腐葉土」や「雑草堆肥」がオススメです。
詳しくは「初心者でも簡単!雑草堆肥で土づくり【畑は小さな大自然vol.8】」の記事をご覧ください。
役割③土の微生物を増やす
チガヤはサトウキビと近い種ということもあり、糖分を蓄える性質があります。若い花穂や若い根をかじると甘みがあると言われて、昔は子どものおやつにもなったそうです。この根から出る糖分によって土の中の微生物が寄り集まり、そこで増えていくのではないかと考えています。
これを肩代わりするためには、発酵させて微生物が豊富な堆肥を入れるのが有効です。特にもともと畑にいる微生物を増やすという意味で、畑にある雑草で堆肥を作るのがオススメです。
始めは小さいスペースで、一気に土壌改良してしまおう
チガヤが畑の中に生えていると本当に厄介で、刈っても刈っても出てくるので、困っているという話をよく聞きます。中途半端な対処だと野菜も育ちませんし、延々と大変な草刈りを繰り返すことになります。広い面積だとなおさら心が折れやすくなります。ですので特に畑仕事に慣れていない方には、とにかく小さい面積で良いので、そこだけはしっかり根を取り除き、土づくりを行いましょうとアドバイスしています。そしてそこで成功すれば同じやり方で、また少しずつ広げていけば良いのです。ぜひ皆さんもチガヤに負けずに少しずつ土づくりをしていってください。
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