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日本酒の聖地から未来へ! 神の水と地元米で醸す「みむろ杉」躍進の秘密

日本酒の聖地から未来へ! 神の水と地元米で醸す「みむろ杉」躍進の秘密

ヤッホー‼ 世界で唯一のコンビ揃ってきき酒師の漫才師「にほんしゅ」です! 最近では特に米作りからの酒造りを大切にする地酒蔵に惹かれます。全国の酒蔵を巡る中で感じるのは「テロワール」という考え方の広まりです。今回の舞台は、日本酒の聖地とも言われる奈良県桜井市三輪。若き蔵元が地元の水と地元の米で醸す地酒「みむろ杉」は数年で全国の日本酒ファンをうならせる銘酒に! 歴史を継ぎ未来志向で日本酒作りに向き合う「今西酒造」に突撃インタビュー。

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今西酒造の歴史はお酒の神様「大神神社(おおみわじんじゃ)」と共に

創業万治3(1660)年という非常に歴史ある今西酒造。その歴史は日本最古の神社であり、酒の神様としても信仰される「大神神社」を抜きには語れません。全国の酒蔵や酒販店などで見かける杉玉も大神神社が発祥であり、まさに日本酒の聖地である奈良県桜井市三輪。この地で20代で蔵を継ぎ、自ら酒造りも手掛ける今西酒造14代目蔵元の今西将之(いまにし・まさゆき)さんがさわやかな笑顔でお出迎え。まずは大神神社の歴史からお話を伺いました。

大神神社

あさやん

今西さーん!

北井

今日はよろしくお願いします!
こちらこそよろしくお願いします!

今西さん

あさやん

今西さん! 蔵のすぐ近くに有名なお酒の神様の神社がありますけど知ってました?

北井

絶対知っとるやろ!
んー……
大神神社ですか?

今西さん

北井

今西さんも乗らなくていいですから! 

あさやん

知ってて良かったです。これでもう安心ですね。三輪そうめんを食べに行きましょう。

なんでやねん!まだなんの取材も出来てへんから。

北井

まず「大神神社」のことを教えていただいてもいいでしょうか?
はい。大神神社は日本最古と言われる神社なんですよ。本殿はなく、ご神体は三輪山です。古事記にも登場するなどすごく歴史のある神社で、国造りと農工商全ての産業の神様で、酒造りの神様でもあるんです。毎年11月14日には醸造祈願祭といって、新酒の醸造の安全を祈る祭典があって、全国から蔵元さんや杜氏さんがお参りに来られるんですよ!

今西さん

大神神社の敷地内には奈良県の酒蔵をはじめ全国の酒蔵の樽が並ぶ

北井

すごいですねー! 本当に「酒の聖地」で酒造りをされてますね。

あさやん

素晴らしい環境ですね。あ、僕たちも醸造祈願祭は来たことがありますよ!

北井

そうやね、一回来させてもらったな!
全国から酒造家さんたちが集まってすごい賑わいですよね。

あさやん

その点今西さんは交通費がかからなくて羨ましいです。

北井

どこ羨ましがっとんねん! お参りにそういう考えを持つなよ。
たしかに交通費ゼロでお酒の神様にお会いできますね(笑)。ほんまにありがたい環境です。
大神神社の中には日本書紀に現れる杜氏の祖先神・高橋活日命(たかはしいくひのみこと)を祀る、日本で唯一の杜氏の神社「活日神社(いくひじんじゃ)」もあるんですよ。

今西さん

北井

酒造りに関わる人ならお参りに来るしかないですね!

日本で唯一の杜氏の神社……。

あさやん

世界で唯一のコンビ揃ってきき酒師の漫才師「にほんしゅ」も負けてられへん!

北井

神様に対抗してどうすんねん!
お二人にはいい笑いを醸してもらいたいんでぜひ参拝してくださいね!

今西さん

北井

はい! いいパワーをいただいてきます!

活日神社の案内看板

あと、全国の酒蔵さんの蔵の軒先に「新酒が出来ましたよ」の意味合いで吊るされる杉玉の発祥も大神神社なんですよ。三輪山の杉で作られたものが全国の酒蔵さんへ届けられるんです。

今西さん

北井

日本酒を語る時には「大神神社」は欠かせませんね!

大神神社から送られる杉玉には証として「三輪明神・志るしの杉玉」と書かれている

「三輪を飲む」がコンセプト。お酒の聖地で醸す今西酒造の酒造り

今西酒造14代目蔵元の今西将之さん

あさやん

今西さんの造る「みむろ杉」はすごく美味しいし、大神神社最寄りの三輪駅の目の前や、大神神社への参道にも今西酒造さんのお土産ショップがあるくらいですから、正直儲かりますよね?

北井

身も蓋もない聞き方すなよ!
どストレートですね(笑)! おかげさまでこの数年はなんとか前を見て進めるようになりましたね。
僕は1983年生まれの35歳なんですが、元々「絶対蔵を継ぐ!」と思っていましたし、そのために社会のことも知って経営の勉強などもするために東京で会社員をしていたんですよ。で、30歳で蔵へ戻って、10年かけて日本酒の世界のこと、酒造りのことを勉強しながら蔵の引継ぎをして、40歳で社長を継ごうと思っていました。

今西さん

北井

蔵を継ぐのは学生時代から決めていたんですね。
そうなんです。ところが先代社長である父が急逝してしまい、28歳で急遽蔵へ戻ることになって、蔵の経営状態のことも日本酒造りのことも分からないまま社長となってしまいました。

今西さん

北井

それは大変ですね! 人生プランが大幅に前倒しになってしまったんですね。
そうなんですよ。父は酒造りの現場にはノータッチでしたけど、経営者として酒造りが続けられるようにとレストランや宿泊施設をやるなど多角経営をして、蔵を懸命に存続させてくれていました。アイデアマンだったしパワフルな人で、今でも尊敬しています。しかし、蔵へ戻って経営状況を見てみるとどの部門も赤字で……このままでは非常にまずい! という状況でした。

今西さん

あさやん

そうだったんですね! なんか親近感がわいてきます。

どこで親近感わいとんねん!

北井

その状況からたった7年で地酒ファンをうならせる「みむろ杉」を造ってきたというのは生半可な努力では無理ですよね。やっぱり今西さんのパワーはすごい!
ありがとうございます。
色々ありましたが、この7年で酒造りに関わる人も設備も全て変わりました。
蔵へ戻ったころのうちの酒の味は正直胸を張れるものではありませんでした。自分でも造りをやるしかない!と意気込みましたが、知識が全然無いところからスタートだったので、酒造りの本をとにかく読んでやってみて……。
最初の2年ぐらいは行き当たりばったりで迷走もかなりしましたね。
でも僕の考えや想いに共鳴してくれる若い蔵人が続々と仲間入りしてくれて現在蔵人は12名になりました。平均年齢が28歳という若いメンバーで「みむろ杉」を造っています。

今西さん

「みむろ杉」を支える若い蔵人のみなさん(写真提供:今西酒造)

北井

歴史も古く、お酒の聖地で醸される「みむろ杉」は歴史を受け継ぐだけでなくこの数年で大きく生まれ変わっていたんですね!
今西さんが蔵へ戻ってから酒造りが変わっていったということですが、酒造りにおいて大切にしてることやコンセプトってあるんでしょうか?
良い質問をありがとうございます!

今西さん

あさやん

今西さん、酒造りにおいて大切にしてることやコンセプトってあるんでしょうか?

北井

お前が聞いたみたいにするなよ! 俺がええ質問したんや!
(笑)。
コンセプトはずばり「三輪を飲む」です!

今西さん

北井

「三輪を飲む」! 良いコンセプトですねー!

あさやん

「三輪を飲む」? 一体全体どういう意味ですか?

北井

だいたい分かるやろ! 詳しく聞かせてもらおう!

日本酒造りにおける三輪の風土とは

神の水が仕込み水

今西酒造は酒造りの神が鎮まる三輪山の伏流水でお酒を仕込む(写真提供:今西酒造)

北井

「三輪を飲む」というコンセプトはワインの世界でいうその土地の気候や風土、人の気質などを表す「テロワール」を大切にしたいということでしょうか?
そうなんです。三輪の水、三輪の米で仕込んだ「三輪テロワール」を表現していきたいですね。
仕込水は三輪山の伏流水で、酒造りと商売の神が宿る水なんです。軟水なので口当たりの柔らかいお酒が出来ますね。

今西さん

あさやん

神の水で仕込む酒……。テロワールを語る上で最強じゃないですか! ちょっとずるいです!

ずるいってなんやねん!

北井

すごく誇れる仕込水ですね!

神の水と同水脈での酒米造りにも取り組む

仕込み水と同水脈の水で育てられた山田錦は品質も上々(写真提供:今西酒造)

あさやん

しかし、お米は適当に買ってきてるんでしょう?

なんであら探しみたいになっとんねん!

北井

酒米も地元産にこだわっているんでしょうか?
そうなんですよ。酒米も仕込み水の三輪山の伏流水と同水脈の水で育てられる田んぼのお米を使わないと「三輪を飲む」とは言えないと思います。僕が蔵へ戻ってから同水脈で米作りをやっている農家さんに手当たり次第に声をかけました(笑)。

今西さん

北井

手当たり次第(笑)! 今西さんらしい!
その中で「みむろ杉」の酒造りに共感してくれる農家さんが徐々に増えて、今では12名の契約農家さんと共に酒米作りをやっていて、地元産のお米に切り替えてきました。

今西さん

北井

すごいスピード感で「三輪を飲む」が実現していってますね!
どんな品種を作っているんでしょうか?
品種は酒米の王様といわれる「山田錦」と現在奈良県だけで栽培されている「露葉風(つゆはかぜ)」ですね。露葉風はコクと力強い酸が味わいとして出る良い酒米なんですが、山田錦と比べるとまだ品質が安定しないのでこれからさらに品質を向上させていきたいですね!

今西さん

あさやん

なるほど! 山田錦といえば兵庫県が原産で兵庫県産が最高峰とも言われますけど、奈良県産では品質はどうなんですか?

北井

そこは気になるね!
兵庫県産山田錦は確かに素晴らしいと思いますが、実際同水脈で作られた山田錦で仕込んでみると浸漬(しんせき<米に吸水させる工程>)で米が割れにくいですし、米と水のフィット感を感じます。味わいも僕の感覚ではよりきれいな味になったと思います。

今西さん

北井

それは最高ですね! 三輪の水と米が生み出すお酒の一体感!

三輪山を背景にした田んぼの田植えに参加する今西さん(写真提供:今西酒造)

伝統を支えに未来に向かう今西酒造

あさやん

いよいよ記事も終盤です。盛り上げようと失礼なボケを重ねたことをお詫びします。

北井

いや、取材終わってから言うてくれ! 冷めるから!
いえ、プロとして頑張ってるあさやん、素晴らしいです。

今西さん

北井

今西さんも応えなくていいですよ! 熱い二人やなぁ! なんか逆に僕が恥ずかしい(笑)!
良かったら「みむろ杉」の試飲をしませんか?

今西さん

あさやん

やったー! ありがとうございます。

限定流通ブランド「みむろ杉 ろまんシリーズ」(写真提供:今西酒造)


いただきます!

北井

……うまい! 三輪の歴史を聞いた後に飲む「みむろ杉」はたまりませんねぇ。いつも美味しいけどさらに美味しい!

あさやん

うん。香りは派手過ぎず穏やかで、味わいはフレッシュでありながらその若さを包みこんであげるようなキレイな米の旨味が感じられ、一体感を感じさせたかと思いきや後味は爽やかにキレていく……。うまい!

北井

いや、コメント素晴らしいな!
もうボケる気一切なし!?
ありがとうございます! そうなんです。いくら神の水で仕込んでます、とか、テロワールを語っても飲んで単純に「うまい!」と思える酒でないとだめなんです!
「うまい!」が先に来るようにこれからも頑張ります!

今西さん

あさやん

日本最古の神社であり、酒造りの神様でもある「大神神社」の麓で醸される「みむろ杉」。
このお酒には急遽蔵を継ぐことになった若き蔵元と、その想いに共鳴する若き蔵人たちの熱いドラマがあった。まさに「歴史」と「未来」のタッグ。
世界中の日本酒ファンが酒の聖地、三輪へやってきて「みむろ杉」を飲み、大神神社へ参拝に押し寄せる日もそう遠い未来ではなさそうだ。
そして彼らは国へ帰ったとき友達に「日本へ行って日本酒を飲んできたのかい?」と聞かれ、こう答えるだろう。
「いや、日本酒は飲んでいない…三輪を飲んできたんだよ」……とね。

北井

なんやねんその口調!
ありがとうございます! 三輪が世界中の人に「日本酒の聖地」と認識される未来へ向けて頑張ります!

今西さん

北井

やっぱり熱い人や!
「みむろ杉」最高!
今西さん、ありがとうございました!


今西酒造株式会社

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