観光から留学まで。世界中から人が集まるオーストラリア

パースにあるナンブング国立公園の石灰岩の尖塔群。貝殻でできている
オーストラリアと言えば、青い海や、コアラやカンガルーなどの野生動物、世界遺産や自然遺産など、世界中の多くの人を魅了してやまない観光大国。『エアーズ・ロック』、『グレート・バリア・リーフ』、『オペラハウス』といった観光スポットをご存知の方も多いことでしょう。
人口は2499万人(※1)と、日本の5分の1ほどのオーストラリアは、海沿いを中心に、最大都市であるシドニーをはじめ、ブリスベン、メルボルン、アデレード、パースなどの都市が点在しています。イギリスの統治下にあった歴史から、ブリティッシュ様式の建造物が数多く残る街並みも、観光の目玉です。

シドニーにある『オペラハウス』
南半球にあるオーストラリアは、日本とちょうど反対の季節のめぐりとなるため、日本が冬の間は、オーストラリアでは夏を迎えます。そのためクリスマスシーズンには、サンタクロースに扮したサーファーが波に乗っている姿がいたるところで見られるのだとか。
日本の約21倍という国土を有するオーストラリアでは、四季のある地域もあれば、1年を通じて温暖な地域、乾燥した砂漠地域など、さまざまな気候があります。自分に合った気候の都市を選べるからか、世界各国の学生がこぞって留学しにくる、留学大国でもあります。その数なんと年間約40万人(※2)と、人口と比べてもその多さが伺えます。
世界の食糧基地、オーストラリア

オージービーフは、赤身でヘルシー。意外と柔らかい
そんなオーストラリアですが、実はさまざまな農作物を栽培している農業大国でもあるのです。オージービーフは言わずもがなですが、ラム肉、小麦、コメ、メロンやブドウ、タマネギや人参、ブロッコリーなど、多種多様な作物を栽培しています。カロリーベースでの自給率は223%(※3)であり、国民の食はもちろん、世界の人々の食も支えています。
国土の2/3以上が乾燥地帯のオーストラリアでは、国土の半分が農用地でありながらそのほとんどが放牧地。地域によっては水の確保が難しい所もあり、各地域で気候や灌漑用水へのアクセスに応じた農業が営まれています。例えば内陸の乾燥地帯は、肉牛や羊の放牧が盛んで、世界100カ国以上に輸出しているオージービーフの生産を支えています(※4)。

雨が比較的降る沿岸地域では酪農が行われており、牛乳やチーズが作られています。その中間的な気候の地域では、放牧に加え、小麦や豆類など穀物が栽培されています。
川が近くにある地域では灌漑農業が営まれており、果樹や野菜、コメの栽培が盛ん。ちなみにオーストラリアで生産される米の75%は、日本の米の味に似たジャポニカ系の中粒種で、残りは、インディカ系の長粒種です。

一面に広がるブロッコリー畑
広大な土地を生かしたオーストラリア農業は、日本の平均経営面積が2.27haなのに対し、オーストラリアでは2940.4haと、1000倍以上(※5)。文字通りけた違いの大規模農業が営まれています。

日本ではなかなかお目にかかれない、超大型農機。写真は薬剤散布用の機械
基本は露地栽培であるため、干ばつなど気候や天候によって、国内の農業生産量が大きく左右されてしまうといった課題もありますが、干ばつに強い品種の開発や、農作業の省力化のためのスマート農業の導入など、新しい試みが政府や民間企業によって着々と進展しています。
農業の最先端地域クイーンズランド州の農業を見てきた

ブリスベンにある、オーガニック乳製品を生産・加工・販売する『Barambah Organics』
そんなオーストラリアで、何か面白い農業ニュースを発掘したい…。そう思い、マイナビ農業制作部員が今回視察に行ってきたのが、クイーンズランド州というオーストラリアの北東部の街。州都であるブリスベンは国内で3番目に大きな都市であり、「サンシャイン・キャピタル」と呼ばれるほど温暖な気候で、観光客にも人気の街です。

セント・ジョージにある、ワイン園『Riversands Vineyards』
人間が過ごしやすい気候は、作物にとっても良い気候であるということ。州内では幅広い作物が盛んに生産されています。また、空港を5つ抱えるなど、国内外への流通インフラに恵まれており、生産から加工、流通まで一貫して経営している農家も多くあります。

イングルウッドの『Coolmunda Olive Grove』でランチ。オリーブの木がそこら中に生えていた
クイーンズランド州の街をめぐる5泊7日の行程の中で、たくさんの農場と、農家を訪れ出会ったのは、日本ではまずお目にかかれない農業事情の数々。その中で、マイナビ農業読者の皆さんに、ぜひお届けしたい農業ニュースをピックアップして、レポートにまとめました。次回はオーストラリアのマーケットから見える、最新農産物のトレンドについてお伝えします。お楽しみに!
※1 2018年6月。豪州統計局出典。
※2 2016年の数値。オフショア教育も含む。「Statistics Report on TEQSA Registered Higher Education Providers – August 2018」より引用。
※3 2013年。農林水産省出典。
※4 「Meat & Livestock Australia Limited」より引用。
※5 「農業構造動態調査」、「USDA/NASS資料」「EU農業センサス2010(速報値)」より引用。
(参考サイト)
・日本貿易振興機構 農林水産部「平成20年度 コンサルタント調査 オーストラリアにおける農産物の生産・貿易政策の現状」