1つの株から100本も穫れる!! 茎ブロッコリーの底力
茎ブロッコリーは、ブロッコリーと、中国野菜の「カイラン菜」を掛け合わせた野菜。アスパラガスのような長い茎に、小さいブロッコリーのような花蕾(からい)がつくのが特徴で、次々と出蕾する性質を備えている。
花蕾はブロッコリーと同じように食べられ、甘みがある茎もおいしい。ブロッコリーのようにゆでてマヨネーズをつけてもおいしいし、炒め物にしても茎のサクッとした食感がイケる。
栽培する側からすると、ブロッコリーとは違って、「1つの株から何度も収穫できる」という性質がうれしい。私のような兼業直売農家にとっては、一度植えるだけで長くとれる野菜は手間が省けるという意味で、都合のよい野菜である。
タネ袋には「1本から15本程度収穫できる」と書いてある。だが、茎ブロッコリーの限界はそんなものじゃない。結論から先に言うと、100本くらいとれる。15本収穫して、見切って片付けるのではもったいないと私は思う。
温暖地では梅雨越しすれば独壇場
上記がタネ袋にある栽培暦。
私の住む大阪(温暖地)では、3月中旬にタネをまき、4月下旬に定植するまでは、暦どおり。だが、5月下旬に収穫が始まって6月中旬にとり終わるのではなく、年末までの約6カ月間、ずーっと収穫をしている。つまり、梅雨越しさせるのだ。
だいたい2日に1本ずつ収穫できるから、少なく見積もっても1株から年に100本くらいはとっているはず。6〜7本で150グラムで1袋。それを130〜150円で販売するから、一度植えればたった1株で年間2000円弱は稼げるというわけだ。
梅雨明け後の7月中旬から10月初旬まではブロッコリーはもちろんのこと、うちの直売所では茎ブロッコリーもほぼ出てこないので、まさに独壇場。高値をつけてもすぐに売り切れてしまう。ブロッコリーが目が飛び出るほど高い初夏から秋にかけての茎ブロッコリーは、お客さんにとても喜ばれる。
切り戻しと追肥で「アンチエイジング」
バラっとした花蕾が出たら老化のサイン
では、どうして梅雨を越せないのか。暑さにあまり強くない茎ブロッコリー。春に植えた株が疲れてきた頃に、ちょうど梅雨に入り、多湿高温によって老化が加速するからだと私は思っている。茎が細くなるに従い、下の写真のように花蕾がバラっと開いたら、その株が老化しているサイン。寿命を全うしたので、早く花を咲かせたい気分なんだと思う。そのまま放っておくと、花茎が鉛筆ほどに細くなり、1円玉サイズの小さな花蕾しかとれなくなる。
そんな老化を防ぎ、若返らせるのが「切り戻し」と「追肥」。この2つで「アンチエイジング」してやると、青春がよみがえり、また大きな力強い花蕾がビンビンと立ってくる。
大胆に切り戻す
株が老化したなぁと思ったら、思い切って、ハサミで大胆に切り戻す。
地際のほうの茎から、新しい枝や芽がいくつか出ているので、1本の茎に対して枝(芽)が1〜2本ずつ残るように切り戻す。
切り戻した後に傷口から雨水が入ると、茎が腐ることがあるので、晴天が続く日を選ぶ。また、切り口に雨水が溜まらないように、斜めに切ったほうがうまくいく。
残す芽の数は、たとえばアブラムシがついて弱った株は多めに芽を残すなど、株の状態に応じて、工夫する。
追肥で勢いをつける
切り戻した後は、速効性の化成肥料(オール14 ※)を2株に1握りほど株元からやや離してまいて、新しい芽を勢いづかせる。肥料が効き始めるまでは弱々しい花蕾がしばらく出るが、早めに摘んでしまって、野菜炒めなどで自家消費する(そのまま放置すると若返りが妨げられる)。2週間もたつと、元気な花蕾が再び出てくる。
※ 窒素、リン酸、カリウムの含有率がそれぞれ14%の化成肥料。
この茎ブロッコリーの「アンチエイジング」は、梅雨時期のみならず、老化したサインが出たら適宜やる。私の場合は、6月中旬から2カ月おきにしている。
何度でもよみがえる茎ブロッコリーを見ていると、こっちまで元気になってくる。今年ももう終盤戦、茎ブロッコリーのように若々しさを保ちながら、年末まで駆け抜けたい!