身近に最新の農機に触れる機会
2019年11月27日、埼玉県農業機械化協会が主催する「農業機械実演展示会」が、鴻巣市の農研機構農業技術革新工業センター附属農場で開催された。この会は毎年行われており、最新農機具の実演の見学や試乗ができるとあって、時折小雨の降る天候の中約250人が参加し、熱心に最新の農機具の説明に耳を傾けていた。
注目の製品は
ストーンクラッシャー
エム・エス・ケー農業機械株式会社が出展したのはフランスのBUGNOT社のストーンクラッシャーBPV90。圃場(ほじょう)を耕起する際に、土の中から大きな石が出てしまい農作業が中断することがある。その石を取り除くことなくその場で砕く機械だ。石を取り除くと地盤が沈むなどの影響があるため、砕いた石をそのまま土に戻すことでそうした影響を防ぐ。また、石に含まれるミネラル分が畑に還元されることもあるという。出展されたものは90センチ幅で50馬力以上のトラクターでけん引できるタイプだったが、もっと作業幅の広いものもあるとのこと。
見学者は砕かれた石を拾って状態を確かめていた。
草刈り機
関東甲信クボタからはラジコン草刈り機ARC-500が出展された。乗用草刈り機の事故では、のり面での作業中に草刈り機の転覆に巻き込まれる死亡事故などが報告されている。
ラジコンで作業を行うことで作業者が安全な場所から操作を行うことができるため、より安全かつ効率的な草刈りが可能になるとのこと。特にのり面の傾斜角40度まで作業が可能で、落下するときも転覆せずにすべり落ちるように設計している。
草刈りは夏場特に頻繁な作業になることもあってか、実演後も説明を求める人が多かった。
また、同社からは自動運転が可能な田植機も出展され、注目を集めていた。
ネギ管理機
中山間地や小中規模の生産者が使いやすい管理機などの実演もあった。埼玉県の農機具メーカー、マメトラ農機が出展したのは、ロングセラーの手押しのネギ管理機MRVシリーズ。
また、13馬力の乗用管理機もなどもあり、買い替えを考えている生産者にとっては手が届きやすい価格帯も嬉しい。また、発売されたばかりの管理機は立って乗ることもでき、手押しよりも使いやすいと試乗をする人が多くみられた。
ドローン
実演の後には、ドローンを用いた葉色診断の研究について、埼玉県農業技術研究センターの発表もあった。葉色で追肥の必要性を診断することができるが、人の目でやるとなかなか難しいものがある。それをドローンに搭載したマルチスペクトルカメラで圃場を撮影することで必要な場所に必要な量の追肥を行うことができる。
現在はまだ実証実験中だが、実現すればより正確で低コストな生育診断も可能になるという。
関心はスマート農業、希望は省力化
埼玉県農業機械化協会事務局長の笠原隆行(かさはら・たかゆき)さんによると、出展する農機具の選定は生産者からの希望を聞いて行っているとのこと。最近は省力化につながる農機具へのニーズが高いと感じているという。
実際、無人トラクターや自動運転が可能な田植え機、ドローンなど、最新のスマート農業機械の出展が多くみられた。一方で、現状で使っている農機具から移行しやすいモデルや、野菜の選別機などすぐに省力化につながる機械の出展もあり、生産者の志向の幅広さも感じられた。
参加していたある生産者は、長年使っていた農機の買い替えを検討するために参加したという。スマート農業に関しては「大規模な平地であれば検討するが、うちは中山間地なので、現実的ではない」という。また、親の高齢化に伴って農機を選びたいという男性は、「事故も多いので、安全で高齢者にも使いやすく、手間をかけずに作業ができるようなものがあればと探している」と語った。
大規模な展示会は選択肢が多く様々な最新機器に触れることができるが、一方で生産者のニーズに合わせた実演会は短時間で自分の求めることに出会うことができる良い機会ではないかと感じた。忙しい生産者にとっては貴重なチャンスかもしれない。