目指すのは、自走できる自立した地域
流通経済研究所は、1963年に民間企業の共同出資で設立された研究機関を母体として1966年に財団法人となり、2013年に公益財団法人として新たなスタートを切った団体です。モノやサービスの流通・マーケティング専門調査研究機関として広く社会に貢献しています。とりわけ農業分野では「農業・地域振興研究開発事業(AMRプロジェクト)」を立ち上げ、農業活性化、地方創生、地域振興に向けた官公庁や自治体の取り組みを支援しています。
農業・地域振興研究開発室室長の折笠俊輔氏は、同プロジェクトについて次のように語ります。
「農産物の商品化と販路開拓、6次産業化、地域ブランド構築、直売所や道の駅の立ち上げ・改善のコンサルティング、農産物流通の実態調査と戦略策定、農業者育成における支援などを提供しています。シンクタンクでありながらコンサルタント的機能も有しており、両面からのアプローチが可能です。最大の特徴は、農業をサプライチェーンの起点と捉えて流通・マーケティング支援を実施していること。また、私たちが支援した自治体がいつまでもサポートを受け続けるのではなく、地域としてできるだけ早く自立していく、いわば『自走』できる取り組みにしていくことを最も重視しています」
サポートにあたって大事にしているのが「現場視点」。まず、農業・地域産業の現場で綿密な打ち合わせ・調査を行い、根底にある課題や目指すべき方向性を精査します。その上で、地域の生産者や事業者を積極的に巻き込みながら事業を進めていきます。
「地域の自走に向けては、地元の生産者や事業者に、『これは自分たち自身の取り組みである』と認識してもらうことが重要です。地元のキーマンを中核メンバーとしてプロジェクトに取り込むこともあります。地元をポジティブに巻き込むためには、現場に足を運び、生産者や事業者の話を丁寧に聞くなど、現場の意見を尊重することが大切です」
地元を巻き込む多彩な戦略でブランディング
これまでの実績のひとつとして、山形県新庄市から委託を受けた「地域の6次化商品、地域ブランディング構築コンサルティング」プロジェクトが挙げられます。同事業は2014年度に始まり、現在も継続して支援を行っています。地域ブランドづくりを目指すにあたり、新庄の食文化と風土を広めるため、同地に昔からある産品を現代風にリニューアルする戦略を市や地元生産者・事業者と立案しました。現在も打ち合わせを重ねながらブランディングや販路拡大を進めています。
地域産品と一口に言っても、一つ一つの生産者は当然ながら異なります。そこで目指したのが、市を挙げての団体戦。「SHINJO ii-nya FOOD(新庄いいにゃ風土)」という統一ブランドを立ち上げ、新庄市全体がまとまって勝負できる販売戦略の構築を支援してきました。
「将来的には『いいにゃブランド』を基点に、生産者や事業者の自社商品の購入につなげる循環を目指しています。同プロジェクトは現在ほぼ自走状態になりつつあり、市と地元が自力で事業を続けていける形になっています」
そのほか同研究所では、農産物の生産時期や販売時期、ニーズ、端境期等を調査分析する流通実態調査を実施しています。「どの地域で、今何が求められているのか」「いつどんな作物を生産するとよいのか」を検討し、産地化に向けた自治体の戦略づくりを支援しています。
ミッションは、日本の一次産業を支えること
自治体の自走を念頭においた多面的な支援が可能な同研究所ですが、そのリソースを有効に活用するポイントはどんな点にあるのでしょうか。
「あらかじめ結論や仕様が決まった事業についてご相談をいただくよりも、地元農産物の付加価値を高めて販売したいので方策を検討したいなど、共に具体策を考えていく方が現場視点で考える私たちの姿勢と合致しやすいかと思います。
また、私たちは、公益財団法人として、自社の利益というより公益のために活動をしている側面があります。担い手減少傾向に歯止めがかからない現在、公益財団法人として一次産業を支えていくことが、私たちの大事なミッションと考えています」
公益のために、より良い社会を実現するために、という指針は、自治体が担う役割と相通ずる面があります。多くの公的機関から永く信頼を勝ち得ている理由もこの使命感に拠るところが大きいといえるのではないでしょうか。
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