日本で売られるサカキのほとんどは中国産
サカキは、緑の葉が茂った枝を束ねて神棚に供えたり、神社で参拝者が神前にささげる玉串(たまぐし)に使われたりする植物。名前の由来には、神と人間の境界にある境木(さかき)を語源とする説がある。
一般に「サカキ」と呼ばれているものには、「ホンサカキ」と葉っぱがやや小さい「ヒサカキ」の2種類がある。いずれもツバキ科の常緑広葉樹で、国内に広く自生している。ここでは両者を区別せず、サカキと表記する。
なぜ日本の神事に使うサカキが中国産なのか。背景の一つが林業の衰退だ。国産の杉やヒノキが売れていたときは、森林の手入れの一環として下に自生しているサカキを切り出し、販売していた。
だが輸入木材に押されて林業の収益性が下がり、森林を手入れする機会が減るのに伴い、サカキの供給も細っていった。林業に携わる人が高齢化し、作業をする人が減ったことがこうした流れに拍車をかけた。
そこに登場したのが中国産だ。今から30年ほど前に日本の業者が中国でサカキの栽培や加工の仕方を教え、日本向けに輸出し始めた。今や日本で流通しているサカキの8割以上は中国産と言われている。
そこに商機を見いだしたのが、当時20代後半の佐藤さんだった。