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出産・育児で栽培縮小、理想の畑へプラスアルファの戦略とは

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

出産・育児で栽培縮小、理想の畑へプラスアルファの戦略とは

農家の女性は妊娠や出産に際し、どうやって畑を切り盛りしているのだろうか。かつてと比べて便利な農機具や資材があるとはいえ、農作業は依然として体への負担が大きい。東京都西多摩郡瑞穂町で就農し、第2子の出産を9月に控えた田口明香(たぐち・さやか)さんに作付け計画を聞いた。

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作業を頑張りすぎた1人目の出産から学んだこととは

田口さんは2015年の年末に新規就農した。農家になりたいと思い始めたのは中学生のころ。その思いを抱き続けて東京農大に進学し、有機農家のもとで学んで瑞穂町で就農した。これまで多くの新規就農者を取材してきたが、農業への情熱という意味では最も強い印象を受けた一人だ。

夫の智也(ともや)さんは自動車部品の設計の仕事をしており、農業は栽培から出荷まで基本的に田口さんが担っている。売り先は個人顧客や飲食店など。面積は40アール弱で、野菜の多品種少量栽培。では具体的に何を作っているのか。そのことを確認しようとしたら、次のような答えが返ってきた。
「ジャガイモはシャドークイーンやレッドムーン、タワラムラサキなど。あまり流通してないものを作るようにしてます。サツマイモはムラサキイモやコガネセンガンなど。ちょっと珍しい品種を作ってます」
思わず「まるでお芋農家みたいですね」と突っ込みを入れると、田口さんは「それ以外の品目は」と前置きしてトマトやナスなどの果菜類やルッコラやスイスチャードなどの葉物野菜、さらにブルーベリーなどの名前を挙げてくれた。じつは最初の答えが、今回の作付け計画の重要なポイントなのだが、そのことがわかったのはもう少し質問を重ねた後のことだ。

第1子が生まれたのが2017年5月。そのときは農作業が響いて早産になりそうになり、1カ月半入院した。体に負担にならないよう気をつけていたが、気づかないうちに無理がかさんでいた。定期健診で病院に行ったとき、「今日から入院してください」と言われるほど危ない状態だった。

就農準備で畑を開墾する田口明香さん(2015年撮影、東京都西多摩郡瑞穂町)

出産は無事終えたが、畑から約3カ月離れることになった。智也さんや妹が雑草を刈ってくれたため、畑が荒れるのは防ぐことができた。ただ収穫や出荷は田口さん本人でないとできない作業だ。そのため、「収穫できるまで育っていた野菜をどこにも出すことができず、とても残念なことになってしまいました」という。

出産の2~3週間後には畑に出た。ブルーベリーが収穫期に入ったため、つい作業を再開してしまったのだ。その影響とみられ、1~2年にわたってあまり体の調子は良くない状態が続いた。そのころのことを、「産後しっかり休まず、畑に出てしまったことを本当に反省してます」とふり返る。

無理を押して農作業をしたことには理由もあった。他の農家の女性が出産の前後も畑に出ているのを見て、「自分もしゃかりきに頑張ってしまった」のだ。だが後に知人に指摘され、間違いに気づいた。他の農家の多くは夫婦で作業を分担しているのに対し、田口さんはほぼ一人でこなしている。そのことを考えず、「尊敬する農家の奥さん」を見習い、畑に出てしまったのだ。

一連の話は一般的な営農の失敗談とは違い、かなりプライベートなエピソードなので、記事にすべきかどうかを迷った。そのことを話すと、田口さんは「無理をしすぎるとどうなるか。農家の女性も旦那さんもそのことを知ってもらえればうれしいです」と話した。
そして田口さんは2020年2月、第2子を授かったことに気づいた。それでは前回の反省を踏まえ、どんな作付け計画を立てたのだろうか。

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