「固定費神話」をぶちやぶれ~その農業機械は本当に必要か?~【ゼロからはじめる独立農家#08】

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「固定費神話」をぶちやぶれ~その農業機械は本当に必要か?~【ゼロからはじめる独立農家#08】

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「固定費神話」をぶちやぶれ~その農業機械は本当に必要か?~【ゼロからはじめる独立農家#08】
最終更新日:2020年09月11日

ゼロから農業をやる時、障壁になっているのが初期投資費用の高さ。それに対し、最初は技術不足などから圧倒的に少ないリターン。これでは長続きしません。しかし本来農業はクワ1本からできたはず。そんな思いから初期投資の少ない、小さい農業が生まれました。借金のない農業ほど心強いものはありません。どこに経費をかけるべきか。まず常識を疑っていきましょう。

変動費と固定費

農業はお金がかかるかかると言われます(全国新規就農相談センターが2016年に行った「新規就農者の就農実態調査」では、露地野菜で平均319万円、稲作で平均556万円)。私が就農しようと思った時もそう言われ止められました。その時に考えたのが「何にそんなにかかっているのか?」ということ。ホテル勤務時代に学んだ経理、簿記のおかげで冷静に見ることができ、対策することができました。

まず、一般的にかかる経費には「変動費」と「固定費」があります。「変動費」とは、売り上げに比例して増減する費用のこと。「固定費」とは、売り上げの増減にかかわらず発生する一定額の費用のことになります。具体的な例として、「変動費」には材料費、運送費、販売手数料などがあり、「固定費」には人件費、地代家賃、水道光熱費、接待交際費、リース料、広告宣伝費、減価償却費などがあります。

農業の場合、「変動費」は耕地面積に比例します。種苗代、肥料代、農薬代などが代表的なものになります。それらは全体の売り上げからみるとそれほど大きくありません。問題は「固定費」になります。地代、ハウス建築代、維持費、農業機械代などなど。今、地代はそれほどではありませんが、農業機械には莫大な金額がかかります。

つまり農業の場合、「変動費」は小さく「固定費」が圧倒的に大きい。そして農業の場合、商品(収穫物)は自然環境、また市場環境で大きく変動します。それにもかかわらず、「固定費」が大きい。投資額は変わらないのに売り上げが外的要因で大きく乱高下する。ある意味ばくちのようなものになってしまいます。

売り上げが少なくても経費が少なければ利益はありますし、どんなに売り上げがあっても経費がかさめば利益はありません。つまり農業で利益を出すには固定費をいかに抑えるかが重要です。

なぜ農業機械が必要か

例えばお菓子メーカーでそのお菓子を作るための機械に投資しようとした場合、新しい機械を導入することでその製造物ができる効率が上がる。これまでの機械であれば1時間100個しかできなかったものが新しい機械にしたら1000個できる。なのでそのお菓子をこれまで以上の数量販売し、その増えた利益で新しい機械を減価償却していく。これが機械に投資する基本的な発想です。しかし、農業の場合はこの考え方とは異なるようです。

ベンツほどすると言われている稲刈機・コンバイン(車体価格1000万円を優に超えるものもあります)ですが、性能が上がれば上がるほど効率化されスピードアップする。つまり田んぼに出ている時間が短くなります。性能が上がれば上がるほど納屋(車庫)に置かれる時間が長くなるという不思議。高価な機械なので地域でシェアすればいいのでしょうが、四季の移り変わりのある日本では適期適作の期間が短く、また天気も安定しないため、一番良い時に使いたいと考える農家それぞれが自分の機械を持つことになっています。

120馬力6条キャビン付きコンバイン。価格1500万円以上

それではなぜ農業者は高価と分かっていても機械を買うのでしょうか。これは私も農家になって感じたことなのですが、「この大変な仕事をこれぐらいの金額でやってくれるんであれば買う」というところからスタートしているからだと思います。もちろん現在の専業農家で機械化しないというのはありえませんし、機械化が進んだことで食の安定供給につながっていることは間違いありません。しかしキャビン付きエアコン付きハイスピードのコンバインであっても、古いコンバインでも、同じ面積であれば基本的に収量は変わりません。

今、スマート農業と言うことでドローンを使ったりロボットを使ったりする農業というのがこれからトレンドになっていくだろうと言われています。しかしスマート農業を導入することで収量が倍になったり、スマート農業で育てた農産物が2倍の価格で売れるわけではありません。もちろん機械の進化、スマート農業化は先述したように大規模農家であればその価値はあるでしょうが、これからはじめる農家はその投資に対してリターンはあるか、よく考えなければなりません(もちろんスマート農業には別の点で可能性もありますので、この辺はまた書きたいと思います)。

ではこれから農業をはじめる小さい農家は、限りある資本をどこに投資すべきなのでしょうか?

農家の一番の財産とは?

常識を疑い、小さく百姓的に起農した私。「菜園生活 風来」をスタートするにあたっての初期投資は143万円でした(詳細は自著「農で1200万円!」<ダイヤモンド社>に書いてあります)。最初に持った農業機械はヤフオクで買った3万円の管理機です。途中、中古で安いトラクターがあり購入したのですが、故障した時の修理費がよけいに高くつき部品も手に入らなくなるということで手放しました。

就農して20年。今持っているなかでエンジンがついた農業機械は、管理機とハンマーナイフモア(自走式草刈り機)そしてハンドタイプの草刈り機の3つのみです。ちなみに管理機は2代目でこちらもヤフオクで1万8000円にて購入。またハンマーナイフモアはクラウドファンディングで資金募集したところ、22万円の達成金額に対し39万円集まりました。

ヤフオクで3万円で購入した1代目管理機

畑が30アールと小さいこと、少量多品種、また半不耕起栽培ということで畝の場所と形を15年間動かしていないことなどで、機械が少なくてすむようにしています。それでも大きく変えなければならないときは、時には機械をオペレーターごとレンタルしています。その時は高いと感じても、所有することに比べたら安くつきます。自然相手だと機械は消耗がはげしく、また大型機械だと動いていない時の保管する場所を確保するのも大変だったりします。

実感として思うのは、借金のない農家ほど強いものはないということ。これから農業をはじめる人の最大の強みは、少なくても農業に対しては借金がないということです。常識にとらわれず固定費を少なくして、変動費に多くかけられる。固定資産を持たないことで百姓的に身軽に動くことはリスクの分散にもなります。判断基準としておすすめなのは「その機械を買う時に補助金がなくても買うかどうか?」です。

高価になればなるほど納屋に寝ている時間が長くなり稼働時間が短くなることもある農業機械ですが、農家にとって24時間、365日稼動しているのは農家自身です。農業機械、ビニールハウスなど目に見える固定資産は分かりやすいですが、目に見えない内面を磨いていくことが大切。前にも書きましたが、パソコンも今や農機具のひとつとして農家も使いこなしていく時代。そうすることで農産物のPRもでき、またネット販売することで利益率が変わってきます。そういった技術も必要となってきます。

そして農家は生産だけしていればいいと思っていると、収穫できる農産物には限りがあるので売り上げも頭打ちになります。特に小さい面積でも売り上げを上げるには、農産物に限らず畑全体を活用する(私は畑を舞台として考え、いろいろなことに挑戦しています)。そしてそのためには知恵が不可欠です。私自身知恵を親から(具体的には漬物、かきもち、みそ、よもぎ団子の作り方など)さずかったおかげで経営上かなり助かりました。畑のじゃまものであるよもぎも団子にすることで利益が生まれる。また2番米(粒が小さい規格外のもの)も糀(こうじ)にすることで価値が出てきます。一度身につけた知恵は誰からも奪われませんし、いつでも取り出すことが可能です。そんな知恵をふくめ、さまざまな技術を身につけるために惜しみなく自分に投資しましょう。それこそ最高の資産形成になります。

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