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有機農法を続けて得た熟練の境地「稲に見られている」

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

有機農法を続けて得た熟練の境地「稲に見られている」

作物の声を聞け――。先輩農家から、そんなふうに言われたことはないだろうか。ふつうに解釈すれば、作物がうまく育っているかどうかを、鋭敏に察知できるよう「よく観察しろ」という意味だ。地道な作業がその感性を磨く。だが茨城県稲敷市のコメ農家、大野満雄(おおの・みつお)さんはもっと踏み込んで、「稲に見られている」と話す。経験に基づくリアルな感覚だ。

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有機農法のコメ作り、雑草を抜き続ける日々に訪れた特別な瞬間

大野さんは農業法人の東町自然有機農法(茨城県稲敷市)の代表だ。自社農場の33ヘクタールを中心に、仲間の農家の分を合わせて100ヘクタール近くの田んぼで作られたコメを販売している。販路はパックご飯の製造会社やスーパー、米店など。大野さんの営農の考え方に共感してくれる売り先だ。
栽培で最も重視しているのが、有機農法だ。15ヘクタールの田んぼで農薬や化学肥料を使わずに育てている。その他の多くの田んぼは、農薬や化学肥料の使用量を地域の半分以下に抑える特別栽培でコメを作っている。
有機栽培はコメの生産調整(減反)が1970年に始まった後、東町自然有機農法の前代表だった父親が始めた。理由は二つある。一つは、生産調整で麦や大豆を作った後、畑を田んぼに戻してコメを作ると、水田特有の雑草が生えにくいことに気づいたからだ。もう一つは、栽培方法で特色を出すためだ。有機でコメを育てる農家はいまも少数派だが、当時はもっと珍しかった。

有機栽培を追求する大野満雄さん

大野さんはいま63歳。30代半ばで父親の後を継いで代表になった。そのころ一番苦労したのが、雑草退治だ。前年に麦や大豆を作った田んぼ以外でも、農薬を使わずにコメを作るようになっていたからだ。
田植えをした稲の縦の列を「条」と呼ぶ。田んぼに入り、両手を左右に伸ばして雑草を取ることができるのは5条が精いっぱい。1日かけて雑草取りをしても、50メートルの田んぼを1往復することしかできなかった。
それでも有機栽培をやめはしなかった。いまほど強い確信を持っていたわけではないが、そのころすでに有機農業に意義を感じ始めていたからだ。農薬を使わずにコメを作ることをあきらめず、ただこつこつと雑草を抜き続けた。そうした地道な努力を続ける日々の中で、ある特別な瞬間が訪れた。

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