直売所の売り場を考える時に、検討すべきポイント
直売所で売り場について検討をするときに、必ず最初にテーマになるのがPOPです。この連載でも、POPについて説明しました(直売所で選んでもらう、楽しくする! POPの工夫【直売所プロフェッショナル#07】)。直売所の売り場について考える際にまずPOPが出てくるのは、多くの直売所が委託方式で、出荷者が取り組めることだからでしょう。けれども、直売所の売り場を構成する要素は当然他にもいろいろあります。例えば、以下のように分けて考えてみましょう。
・店内商品レイアウト
・商品一つ一つの陳列方法
・商品
・POP
・接客
この中で、商品とPOPについてはこの連載でも触れましたし(次世代の直売所に大事なバイヤー気質。仕入れは小売業のキホンのキ。【直売所プロフェッショナル#06】)、直売所を語るうえでよく言及されていると思います。直売所に向く品種など、たくさんの情報が出回っていますし(売上アップの近道! 品種選びで他の農家に圧倒的な差をつけるには)、みなさん興味を持っていることでしょう。ところが、直売所が委託販売であることがほとんどであるがゆえに、店としての判断が必要となる「店内商品レイアウト」や「商品の陳列方法」についての検討というのは、あまりなされていない印象です。接客についても、接客が有名な直売所というのはあまり聞きません。しかし、直売所も小売店である以上、店舗経営という少し引いた視点から、店内の商品レイアウトを考えたり、接客力を高めたりすることもとても重要なことです。接客力については改めて書くとして、今回は商品レイアウトについて考えます。
「何を大事にするか」で商品レイアウトは変わる
スーパーマーケットやコンビニの経営について少し調べると、必ず商品レイアウトについての言及があります。基本的なことだと、右利きの人が多いので買い物をしやすいように反時計回りに設計することや、“ついで買い”を促す工夫など。一方で、直売所で商品レイアウトについて言及されることはほとんどないように思います。それは、とてももったいないことではないでしょうか。POPは購入につながる最後のあと押しになるのですが、そもそもお客様がどのような買い物行動をするかは、商品レイアウトによるところが大きいはずなのですから。
商品レイアウトは、意識的・無意識的に、店からお客様へのメッセージになります。たとえば、入店してすぐの場所に大きなスペースをとってたくさんのトマトを販売していれば、「今日はトマトがオススメです」というメッセージを出しているということになります。また、トマトの横にレタスがあれば、一緒に購入することを自然と促すことになりますし、トマトの横に無造作に果物が置いてあれば雑然とした印象を与える可能性があります。あえて雑然とさせて、宝探しをしているかのような楽しみを提供することも方法としてはあり得ますし、整然と並べて選びやすさを重視するという方法もあります。
つまり、何を大事にしたいか、伝えたいかで、商品レイアウトは変わります。店として何を大事にしたいかを考え、それを意識して商品レイアウトを検討することが重要なのです。「この時期はこの野菜がおいしくてたくさん入荷するのでアピールしたい」、「この野菜は人気だけれどすぐになくなるから、買いまわりを促すためにも奥に置きたい」、「毎回○○さんの野菜を狙って買いに来るお客様が多いので、探す手間をなくすために固定のコーナーを作る」など、意図がはっきりすると、商品レイアウトも必然的に決まります。
たとえば、当社では複数の直売所を運営していますが、店の立地により目指すことは変わります。エキナカで運営している直売所では、じっくり買いまわるお客様もいますが、パッと買って帰りたい人がずっと多いため、定番野菜やよく売れる野菜はそれだけを取って買えるように、なるべくわかりやすい場所に配置し、場所の変更も頻繁には行いません。一方、少し大きめの店舗では、野菜以外の食品を含めて、楽しい買い物体験自体を提供したいため、売れ筋の商品が店内に分散しています。この店舗では商品説明POPを読んだり、配布物を手に取ってもらったりと、じっくり買いまわってもらうことを大事にしているのです。
このように、商品レイアウトというのは、店のスタンスを左右する、重要な要素です。
委託直売所における商品レイアウト
商品レイアウトが重要なことはおわかりいただけたと思うのですが、委託の直売所においては検討できていないことがほとんどではないでしょうか。委託である以上、出荷者が商品を置くので、難しい面もあると思われます。それでも、店として商品レイアウト方針は提示したいところです。そして、改善していくことが、店全体のレベルアップにつながります。
たとえば、月ごとに商品レイアウトの大枠を変えていくことはできないでしょうか。毎月の売り上げ詳細はPOSデータとして持っている直売所がほとんどだと思いますので、そのデータを見ながらレイアウトの大枠を決定するのです。できれば、その意図を出荷者に伝えて、その枠の中で自由に野菜を陳列してもらえれば、ある程度の公平性を維持した上で、店としてのメッセージも明確にできると思います。
また、地場野菜以外の商品については、買い取りで自由にレイアウト設計ができるはずなので、こちらについては積極的に意図を持ったレイアウトにしていきましょう。お客様へはもちろん、出荷者に対しても意図のあるレイアウトが大事だというメッセージにもなります。
一般的に、小売りは細かいノウハウや改善の積み重ねで成り立つ商売です。PDCAを早く回し、日々進化していくことが重要です。委託だからできないではなく、出荷者と店が一体となって改善できるような工夫が不可欠です。
商品レイアウトの小技
商品レイアウトを考える上での王道は、ここまで書いてきたように店の意図や大事にしたいことをまずは明確にし、それに沿うように商品を配置することです。とはいえ、商売にはプラスアルファも大事。最後に、売り上げアップのための小技も紹介しておきます。
客数を増やす小技
立地や店の構造によりますが、店頭に低価格の商品や目を引く商品を配置し、入店の強い動機を用意するというのはオーソドックスな方法です。目を引くというのは、カラフルなもの・大きいものなど、思わず足を止めてしまうようなものをイメージしてください。可能であれば、お店の外にそういう商品を置くのも来店動機になります。
購入点数を増やす小技
よく使うものや常備するようなものを複数箇所に展開することは買い忘れを防ぐのに有効です。たとえば、ジャガイモやタマネギといった常備野菜は2カ所に展開すれば、お客様の見落としを防ぐことになります。また、スーパーなどでよく行われる定番の方法でレジ横に単価が低く思わず買いたくなるものを置くというのもやはり有効です。ちょっと食べられるお菓子のようなものですね。また、一緒に使うものを近くに置くのも基本なので、しっかり押さえたいですね。トマトの横にサラダ野菜を置く、ナスの横に麻婆茄子(マーボーナス)の素を置くといったことです。また、広めの店舗ではオススメ商品を点在させることで買いまわりを促し、結果購入点数が増えるということも考えられます。
このような小技も、必要に応じて活用すればよいと思います。当たり前のことばかり、と思った人も多いのではないでしょうか? そうなのです、普段からスーパーやドラッグストアなどでよく見る小技です。小売店は日本中にあります。日々、いろいろな小売店を観察し、まねをできることはどんどんまねをすればよいのです。その際に大事なのは、店の方針。店にとって必要なこと、店にとってやってはいけないことをハッキリさせておけば、おのずとまねをすべきことが決まってくると思います。
直売所も小売店の一形態。日々の買い物にも改善のネタはたくさんあります。ぜひ、どんどん商品レイアウトを学び、改善していきましょう。