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コロナで真価を発揮、高級ブランド米のファン獲得作戦

連載企画:農業経営のヒント

コロナで真価を発揮、高級ブランド米のファン獲得作戦

新型コロナウイルスによる混乱は、生産者がそれぞれどれだけ安定した売り先を確保できているのかを知るための試金石になった。堅調なのはスーパーなどで売られ、家庭でふつうに食べる食材を作っている農家。では高級路線の生産者にはどんな影響が出たのか。ブランド米の生産や販売を手がける越後ファーム(新潟県・阿賀町)の近正宏光(こんしょう・ひろみつ)さんに取材した。

2つの店舗が2カ月間休業の痛手、乗り越えられた理由とは

越後ファームは、都内でサラリーマンをしていた近正さんが2006年に立ち上げた。稲作を始めるため、コメどころの新潟で農地を探して確保できたのは、山あいの阿賀町にある小さな田んぼだった。効率的にコメを作ることはできないと悟った近正さんは、高級路線に徹することを決めた。
そのために追求したのが、品質で特徴を出すことだ。農薬や化学肥料の量を標準の半分以下に減らす特別栽培米や、農薬も肥料も使わない自然栽培米で一般のコメと差を出した。保管に際しては、雪の冷気で貯蔵する手法を取り入れ、コメの乾燥を防ぎながら鮮度を長期間保つことに成功した。
こうした努力の積み重ねの成果で実現したのが、異例の好立地への出店だ。2013年に日本橋三越本店に店を出し、2018年には伊勢丹新宿店と西武池袋本店にも出店した。高級志向の消費者のニーズを知ることができる場所に売り場を構えたことは、品質のさらなる向上を促す好循環を生んだ。

コメのブランド化を追求してきた近正宏光さん

この売り場をコロナによる混乱が直撃した。政府による緊急事態宣言を受け、日本橋三越本店と伊勢丹新宿店が4月8日から休業したのだ。両店で働いている6人のスタッフには「給料は全額出す」と約束し、全員自宅待機にした。営業を続けている西武池袋本店の仕事を手伝ってもらう手もあったが、スタッフの感染リスクのことを考え、出勤を求めることは見合わせた。
近正さんは当初、「休業はせいぜい1カ月程度だろう」と思っていたという。だが1カ月たっても営業が再開されることはなく、ようやく店が開いたのは5月末。休業期間は想定の2倍近く続いた。
いつ店が開くかわからない日々の中で、近正さんは焦るのをやめ、「仕方がない」と覚悟を決めた。そして休業中の店のスタッフには「新米がとれる秋のことを考えてほしい」と求めた。農家と一緒に店でイベントを開くなど、新米商戦をいかに盛り上げるかをメールで議論してもらったのだ。
もちろん、旗艦店である日本橋三越本店など2カ所の店がほぼ2カ月にわたって販売がストップしたことは、経営にとっては大きな打撃になる。では両店ともすでに営業を再開した今、近正さんはコロナによる混乱のことをどう受け止めているのか。そう質問すると、こんな答えが返ってきた。
「すごい手応えを感じています。うちのお米じゃないとダメと言ってくれるお客さんが大勢いることを確認できました。そのことに感謝しています」

日本橋三越本店にある越後ファームのコーナー

固定客を増やす参考にしたのは、アパレルの販売手法

最初に手応えを感じたのは、休業前の3月半ばごろだ。客足が急激に増え始め、3店舗を合わせた3月の売上高は前年同月比で5割以上増えた。
外食を控え、家庭で食事をする機会が増えたためだ。固定客の中には店に電話をして、「いつものお米をまとめて20キロ送って」と注文する人もいた。「巣ごもり消費」の恩恵だ。いつもはスーパーでコメを買っている人が、品切れになったので百貨店に買いに来たことも、売り上げを底上げした。
営業が再開されると、「やっぱり越後ファームのお米が食べたい」と言って買いに来てくれる人がたくさんいた。主力のコシヒカリは7月に入ると売り切れたため、日本橋三越本店のカウンターに「令和1年産は完売となります。2年産の新米は10月頃を予定致しております」と書いたカードを貼った。

主力商品のコシヒカリの完売を告げるカード

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