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トルコギキョウの一大産地を目指す 「花のまち・浪江町」で学ぶ、体験する ”稼げる” 農業

トルコギキョウの一大産地を目指す 「花のまち・浪江町」で学ぶ、体験する ”稼げる” 農業

福島県浜通りの北部に位置する浪江町。海、山、川に囲まれる自然豊かなエリアですが、東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所の事故により町内全域に避難指示が出され、居住人口ゼロという状況が約6年間続きました。
2017年3月に一部地域の避難指示が解除された現在は、帰還した住民が生活を取り戻しています。そんな浪江町では近年、農業従事者の努力が実を結びトルコギキョウの品質が高く評価され、全国から熱い視線が注がれています。
「花のまち・浪江」を合言葉に、トルコギキョウの出荷額1億円達成を目指す浪江町と生産者の取り組みについてお話を伺いました。

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震災後の浪江町に根付いたトルコギキョウという希望

浪江町で花き・野菜栽培のほか、デイサービスセンターの運営も行う特定非営利活動法人Jin(以下Jin)。震災前は、高齢者や障害のある方の支援をメインに野菜栽培、鶏、ヤギ、ウサギの飼育を行っていました。震災から2年後の2013年4月、事業所がある幾世橋地区への日中の立入が可能となりましたが、故郷の風景は変わり果てていました。「浪江町のきれいな景観を保っていたのは農業だったということに改めて気付きました」とJinの設立者である川村博(かわむら・ひろし)さんは話します。農業から町の再生を目指そうと、電気も水道も止まったままの浪江町で現在、Jinの代表を務める清水裕香里(しみず・ゆかり)さんと、井戸を掘ることから始めました。

特定非営利活動法人JInの設立者である(左)川村さん (右)現代表の清水さん

特定非営利活動法人Jinの設立者である(左)川村さん (右)現代表の清水さん

浪江町での事業再開の1年前、Jinでは多くの町民が避難生活を送る南相馬市に『サラダ農園』を開設し、高齢者や障害のある方に仕事場を提供していました。日中の立入が可能となった浪江町は、経験のない花き栽培に乗り出しました。福島県の農業総合センターや双葉農業普及所などから、ゼロから花き栽培について学び、長野県の生産者を訪ねるなどして技術の習得・研鑽に尽力し、2014年8月、東京大田市場に浪江町育ちのトルコギキョウを初出荷しました。市場での評価は徐々に上がり、高値で取引されるクオリティを確立しています。

トルコギキョウの一大産地を目指している浪江町のJinのハウス内

トルコギキョウの一大産地を目指している浪江町のJinのハウス内。現在はトルコギキョウの他にも多くの品目の栽培を行っています

現在ではトルコギキョウ、カラー、ストック、金魚草、フリージア、日本水仙、コスモス、百日草、マリーゴールド、カンパニュラなどの花きの他、ナス、ほうれん草、カブ、二十日大根、キャベツ、レタス、トマト、白菜、きゅうり、小松菜、水菜、とうもろこし、かぼちゃなどの野菜、そしてぶどうまで多種・多品目栽培に加え、漬物・味噌などの加工まで幅広く手掛けています。

売上1000万円を可能にする浪江町流の経営モデルの確立を目指して

「浪江町の花に求められるのは、大きさです」と話す川村さん。一般的に大輪系品種のトルコギキョウの花経※1は8cm程度ですが、Jinの花は12cm程になるのが特徴です。「今までの最高は16cmまで大きくなりましたよ」と清水さんは話します。また、日持ちするように育てているため、長く楽しめることも浪江町のトルコギキョウの付加価値となっています。「高く売れる時期に、より高値で売れる品質の作物を提供できれば、単身者でも売上1000万円、手取りで500万円を目指せます」と川村さんは続けてお話してくれました。「例えば、家族経営なら夫婦で売上2000万円、高齢者なら年金収入では足りない分を栽培するなど、個々の状況に応じて計画をカスタマイズすることが可能です」。

市場から高い評価を受けているJinのトルコギキョウ。特徴は直径12cmにもなる大輪の花

市場から高い評価を受けているJinのトルコギキョウ。特徴は直径12cmにもなる大輪の花

「ハウスの開閉と水やり、草取りなど肉体的にハードな作業はないので、力の弱い女性や高齢者でも十分できますし、やり方次第では副業でもやっていけます。子供との時間を大切にしたい子育て世代やひとり親世帯にも、職業選択の一つとして考えてほしいですね」と清水さんは続けて、花き栽培の特徴を話してくれました。

Jinでは2015年から栽培技術の指導を始め、これまでに4名の方が町内でトルコギキョウの生産を開始しています。2020年から新たに経営を開始した男性は異常気象の影響を受けながらも、音楽を楽しみながら出荷用の花束を作ったり、作業後に家族や友人とバーベキューをしたり、自分のペースで生業なりわいとしての農業を楽しんでいるそうです。「一番人間らしい仕事なのかもしれないですね」と川村さんは農業のやりがい、魅力を笑顔で語ってくれました。汗をかいて働くことの喜びを、多くの方に実感してほしいといいます。

「日本一農業が盛んな町」に向けて、新たなチャレンジを歓迎します

浪江町の震災前の農地面積は約3100ha。全町避難によって耕作面積は一時ゼロになりましたが、現在までに134haで営農が再開しています。震災前は水稲がメインでしたが、震災後は水稲、トルコギキョウ、タマネギ、花木、エゴマなど作付け品目も増加、エゴマオイルやドレッシングなど農産物の加工も広がりをみせています。「浪江町では、震災当時21,500人ほどが居住していましたが、現在は1,467人(令和2年8月末現在)しかおりません。避難の長期化により町民の方が避難先で定住する傾向にあるためです。人口減少基調にある日本の将来の縮図であるとも言え、社会的な課題の先進地です」と浪江町 農林水産課の大浦龍爾(おおうら・りゅうじ)さんは話します。

「新規就農検討者にとって浪江町はチャンスの場」と語る浪江町 農林水産課の大浦さん

「浪江町は可能性に満ちあふれている」と語る浪江町 農林水産課の大浦さん

浪江町は太平洋に面し、気候も温暖で日照時間も長く、あらゆる農業に適した地域であること、また、原子力被災12市町村農業者支援事業を活用することで、初期投資費用の最大3/4の補助が受けられるといったことを始め、様々な補助制度が充実しているのも魅力です。「コンビニが24時間営業ではないなど民間サービスも充足してはいない不便な町かもしれませんが、それを楽しむことができる方、都会に疲れた方(笑)、新たな生き方を模索している方など、まずは浪江町に来て頂き地域の農業にふれ、浪江町を知ってほしいですね」と大浦さん。『Jinふるーる』というオリジナルブランドを持ち、市場でも高値で取引されるJinの栽培・経営ノウハウが学べるこのチャンスをぜひ活用してほしいと話してくれました。

収穫の仕方について取材陣に実演で教えてくれた清水さん

収穫の仕方について取材陣に実演で教えてくれた清水さん。農業インターンシップでは技術、経営知識などが学べます

売上1億円を目標に、トルコギキョウの一大産地化を目指す浪江町。生産体制はJinを含め7組まで増えました。「1000万円の売上×10組ですから近い将来、販売金額1億円を達成するでしょう」と川村さんは浪江町の花き出荷額の可能性についても語ってくれました。将来的には一大産地が形成できるよう、生産者の経営をサポートしていきたいといいます。

Jinでは現在、ミモザと日本水仙の実証栽培を行い、マーケットの傾向を意識した品目選定の研究に余念がありません。日照時間が長く、どんな作物もよく育つ浪江町で、花き栽培のイロハを学んでみませんか。

※1:花の直径のこと

トルコギキョウの品種「オーブピンクフラッシュ」

Jinで栽培されるトルコギキョウ「オーブピンクフラッシュ」。どんな作物もよく育つ浪江町で、花き栽培のイロハを学んでみませんか。

『Jin』の体験メニューをご紹介

10月~翌年3月まで時期に応じた品目の体験が可能です。

・主な体験内容・

花き:播種(種蒔き)・定植・草むしり・収穫・直売所用の出荷調製
野菜:播種(種蒔き)・定植・収穫

◎白菜・大根の収穫時期には漬物作り
◎味噌作り
◎農業経営・経理について(座学)
※時期によって実施します。

特徴

(1)多種・多品目の栽培体験ができる。
(2)基礎から応用まで花き栽培のイロハが学べる。
(3)農業経営について学べる。
(4)農業のみならず東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故の影響を受けた町の今が学べる。
(5)行政と生産者が一丸となり、産地化を目指す取り組み等について学べる。

浪江町新規就農者確保推進事業について

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