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葉も茎も花も種も食べられるフェンネル 余すところなく使える万能野菜を育てる

武井 敏信

ライター:

連載企画:育てるならレア野菜

葉も茎も花も種も食べられるフェンネル 余すところなく使える万能野菜を育てる

日本では意外にも平安時代からウイキョウとして漢方薬にも使われていたフェンネル。食用としてはなじみが薄いのですが、実はすべての部位を食べられるのが魅力。余すところなく使えるフェンネルを自分で育てて楽しむ方法を伝授します。

西洋野菜をはじめ珍しい野菜を年間約140種類、19年間で350種類以上栽培し、それらを直接レストランへ販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)が、レア野菜の魅力や育て方のコツを余すところなく紹介します。

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フェンネルとは?

地中海沿岸が原産地とされ、英語で「フェンネル」、イタリア語で「フィノッキオ」、フランス語で「フヌイユ」、日本語では「ウイキョウ」と呼ばれているセリ科の多年草の植物です。そして3つの種類に分けることができます。

スイートフェンネル
主に葉と種が使われ、ハーブやスパイスとして利用されています。

ブロンズフェンネル
葉の色が銅色になることからこの名前が付いています。スイートフェンネル同様食用の他、観賞用や寄せ植え用としても利用されています。

フローレンスフェンネル
スイートフェンネルと違い、バルブと呼ばれる肥大した株元が野菜として位置づけられています。葉、花、種は同じく食用に利用できます。

私が栽培しているのは主に「フローレンスフェンネル」。毎年フェンネルを栽培している理由は、販売先でもある飲食店からのニーズがあることはもちろんなのですが、いろいろな料理に使えるバルブのおいしさにはまってしまったためです。バルブがふっくらと太り、理想のサイズに成長したときの気持ち良さは何とも言えない生産者ならではのうれしさでもあります。多年草というところも好きですね。

というわけで今回は、フローレンスフェンネル(以下フェンネル)に注目して進めていきます。

フローレンスフェンネル

フローレンスフェンネル。白く肥大している部分を「バルブ」と呼ぶ

フェンネルに似ているハーブに、ディルがあります。どちらも地中海沿岸が原産のセリ科ですが、フェンネルは多年草で背丈が100センチを超え、ディルは1年草で70~100センチほど。どちらも料理に使われ、魚料理やサラダ、マリネに相性が抜群です。
栽培する際には交雑しやすいので、近くに植えないようにしましょう。

ふっくらと太ったフェンネル

ふっくらと太った理想のフェンネル

おいしく食べる方法

ハーブやスパイスとして知名度が高いフェンネルですが、すべての部位を食用として用いることができます。強めの甘い香りが肉や魚の臭み消しにも使われ、中でも魚との相性は抜群です。調理法も多く、魚料理以外との相性も良いです。
ここで、各部位の使い方についてご紹介しましょう。

サラダや料理のアクセントとしてトッピング。オリーブオイルに漬けてフェンネルオイルにするのもおすすめ。
その他、フェンネルペーストやフェンネルバター、ソースに。

スズキのポアレとフェンネルのソース

スズキのポアレとフェンネルソース

バルブ

フェンネルにはさわやかな甘みがあり、香りにも独特の甘みが感じられます。バルブの食感はセロリに似ているので、セロリや新タマネギと同じようなイメージで使えます。サラダ、炒め物、スープ、マリネ、ピクルスなど。薄くスライスしたフェンネルとイワシを使ったパスタは定番メニューです。

フェンネルのサラダ

フェンネルのサラダ

葉と同様にサラダや料理のアクセントとしてトッピングで利用できます。葉よりもパンチが強いので少量ずつ使うことをおすすめします。

シード(種)はスパイスとして利用します。カレー、魚介スープ、ピクルス、サラミやソーセージに入れるなど。ハーブティーとしてもおすすめです。

フェンネルの育て方

フェンネルの種はホームセンターやオンラインショップで入手できます。株が肥大するフローレンスフェンネルの種を購入してください。

栽培の流れ

種まき
7月中旬~下旬。5×5のセルトレイに4~5粒ずつまいて1本に間引きます。

植え付け
8月下旬~9月中旬。株間50センチ、畝幅90センチ。

収穫
時期によって収穫する部位が違います。

  • バルブの収穫
    11月中旬~12月上旬。拳大ほどの大きさになったら地面スレスレで刃物を使ってカットします。
  • フェンネルの発芽

    フェンネルの発芽

    栽培初期のフェンネル

    栽培初期のフェンネル

  • 葉の収穫
    11月頃から。柔らかい葉を選んで収穫してください。
  • 花の収穫
    翌年6~7月頃。適時収穫してください。
  • シードの収穫
    花が咲き終わり、実がふくらみはじめたら、株元から刈り取ります。逆さにして風通しのよい日陰で乾燥させた後、フェンネルシードとして利用できます。

成功するための4つのひけつ

1. 家庭菜園なら直まきがおすすめ
フェンネルはこぼれ種からも発芽する丈夫な植物ですが、根のダメージに敏感です。畑に直まきするか、育苗の場合は植え付ける際に根を傷つけないよう慎重に作業してください。

フェンネルの直播き

畑に直まきしたフェンネル

2. 軟白作業は必須
株元に土寄せして軟白作業をすることで、白くて良い形のものが収穫できます。また、霜が降りる頃になるとバルブ部分が茶色くなってしまいますので、土寄せすることで多少なりとも防ぐ効果もあります。
バルブが卵くらいの大きさになったら、覆うようにして土寄せしましょう。

3. 選ぶなら早生(わせ)品種
オンラインショップなどではさまざまな品種が販売されていますが、栽培するなら早生品種をおすすめします。できるだけ茶色くなる前に収穫を終わらせるためです。そして、品種によって種まき時期に違いがありますが、私の経験上、7月中旬~下旬がベストです。春のバルブの収穫を目的とするとすぐにトウ立ちしてしまいます。短日・低温期に栽培、収穫となるパターンがベストで、長日と高温はトウ立ちを促進してしまいます。

4. 根を残して収穫
バルブを収穫して根を残しておくと春に再び生育がはじまります。バルブとしてはあまり良いものができませんが、葉や花、シードを目的とするのであれば、そのまま畑に残しておきましょう。
畑の邪魔にならない場所に数本残しておくと、放置した状態で毎年葉や花を楽しむことができます。

フェンネルの花

フェンネルの花

病害虫について

病気には強いのですが、セリ科の植物ですので、ニンジン同様にキアゲハと赤と黒のストライプ模様のアカスジカメムシが付きます。キアゲハの幼虫はあっという間に葉を食べてしまうので見つけ次第対処してください。私の場合は、見つけ次第、捕殺しています。ふんや食べられている葉があったら必ず近くにいるはずです。

販売について

主にレストランでの需要があります。フレッシュなフェンネルは輸入物がほとんどですが、最近では国産のフェンネルも出回りだしています。特徴でもある、アニス(お菓子に使われるスパイスの一種)のような甘い香りは、鮮度が良い方が強いので、これからさらに需要が増えてくるのではないでしょうか。
日本の種メーカーから出ているスティックタイプのフェンネルは、作りやすさもあってか直売所やマルシェなどでも見かけるようになってきています。

まとめ

ハーブやスパイスとして知名度が高いフェンネルですが、バルブは食べたことがないという人は農家でも多いのではないでしょうか。
レストラン以外でフェンネルのバルブを口にすることは滅多にないもの。インターネットなどで購入は可能ですが、自分で育てればフェンネルのすべてを余すところなく食べることができるので、ぜひ栽培してみてください。私のようにフェンネルのとりこになってしまう人もいるのではないでしょうか。

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