生える雑草を意図的に変える! 雑草の法則を知ろう【畑は小さな大自然vol.92】

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生える雑草を意図的に変える! 雑草の法則を知ろう【畑は小さな大自然vol.92】

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生える雑草を意図的に変える! 雑草の法則を知ろう【畑は小さな大自然vol.92】
最終更新日:2020年10月06日

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。雑草というと場所を選ばず生えてくるようなイメージがあるかもしれませんが、実は雑草の生え方にも法則性があり、環境の変化によって生える雑草の種類も変わっていきます。特に畑は人の手が入りますので、手の入れ方によって生える雑草の種類も変わっていきます。逆に言うと手の入れ方を変えることで、雑草の生え方をある程度コントロールすることもできます。今回は雑草の移り変わりと手入れの関係性・法則性についてご紹介しますので、ぜひ雑草対策の参考にしてもらえればと思います。

雑草は環境によって生え変わる

畑に生えてくる雑草はランダムでたまたまそこに生えてくるように思われがちですが、実際は自然界は競争の激しい世界であるため、本当にその畑の環境に合った雑草だけが生えてきます。そのため畑の環境を変えることで、生える雑草をある程度コントロールすることができます。これを行うためには自然界にもともとある植物の生え変わりの仕組みを理解することが必要になりますので、まずはそれについて説明していきます。

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植物には自然と生え変わっていく仕組みがある

植生の遷移 カラー

例えば畑では、人が手を入れなくなり耕作放棄地になってしまったような場所は、最初は何も生えていなくても勝手に雑草が生え始め、だんだんと背の高い植物が生い茂るようになっていきますよね。このように自然界には人が何もしなくても、生える植物が変わっていき、最終的には森になっていく仕組みが存在しています。この時間の経過とともに生える植物群が移り変わっていく現象は生物学の用語で「植生の遷移」と呼ばれているようです。具体的にどのように移り変わっていくのか、今回は簡単に5つのステップに分けて説明していきます。基本的にはステップ1から5に進めば進むほど、生物多様性は増え、その営みを支える土壌も豊かな状態になっていきます。

ステップ1:土がなくても生える植物たち

植生の遷移の始まりとなるような環境は、例えば岩場や、火山が噴火した後に溶岩で覆われた土地など、全く土もなく草も生えていない状態です。初めに雨の養分や光合成だけでも生きていけるコケ植物や地衣類(菌類の仲間)から始まります。これらがいずれ枯れてその土地に積み重なることによって、少しずつ土の層ができていきます。

ステップ2:土壌の開拓者、夏型一年草

次に生えてくるのが一年草と呼ばれる一年の中で芽生えては種を残し、枯れていくサイクルを持つ植物です。その中でも特に荒れた環境でも繁殖しやすいイネ科雑草などの夏型一年草が増えていきます。これらの雑草は土の中の数少ない栄養をかき集める力に優れていて、痩せた土地でも育ちやすく、根の力によって硬い地盤を少しずつ溶かし、土の層を増やしていきます。また夏型一年草を中心に、さまざまな微生物や虫が集まってくるようになります。

夏型一年草の例:メヒシバ、オヒシバ、エノコログサ、イヌタデ、スベリヒユ、ツユクサなど

ステップ3:虫と共生する冬型一年草

夏型一年草の次に増えてくるのが、冬型一年草です。夏型一年草が無くなるわけではありませんが、一年を通して見ると冬型一年草の割合が増えていきます。冬型一年草には色とりどりの花を咲かせるものが多く、ハチなどの虫を呼び寄せて繁殖を助けてもらいます。ステップが進めば進むほど、生物多様性は増えていきますので、より生き物同士の関係は複雑になっていきます。その中では他の生き物と闘って孤独に生きる植物よりも、協力し合いながら助け合って生きる植物の方が生き残っていきやすいようです。

冬型一年草の例:ハコベ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウなど

ステップ4:寿命の長い多年草

一年草中心の植生から、次はより寿命の長いススキやチガヤなどの多年草と呼ばれる植物たちが中心の植生に変化していきます。彼らは一年草に比べて寿命も長く、他の植物の繁殖を妨げる生育阻害物質を地下茎から分泌する種類が多いため、どんどんテリトリーを広げていきます。根を広げる力もより強力になり、土壌をさらに深く開拓していきます。

多年草の例:ススキ、チガヤ、ヨモギ、セイタカアワダチソウ、スギナなど

ステップ5:雑草から樹木・そして森へ

多年草の次はいよいよ樹木の登場です。一年草と多年草が土壌を深く開拓してくれたおかげで、より深く根をはる必要のある樹木がそこで成長することができるようになります。低木から中木、高木というふうに段々と背の高い樹木中心の植生へと変化していきます。

野菜はステップ3の環境でよく育つ

ホトケノザとわさび菜

冬型一年草のホトケノザとともに育つわさび菜やルッコラ

畑という環境では人が森などを開墾したり、草を刈るなどの人為的な行為を行うことによって、強制的に植生の遷移がリセットされて土が裸の状態になり、そこからまた遷移が始まります。とは言ってもこの開墾初期の状態はステップ1まで戻るわけではなく、基本的には夏型一年草を中心とした植生から始まりますが、多年草の地下茎や塊茎などが土に残っていれば、それらもまたすぐに再生して生えてきます。つまりステップ2と4の間のような不安定な状態になります。またそのまま放置されると多年草が増えてステップ4に戻りやすく、繰り返し手を入れることでステップ2〜3の状態に留まることができるようになります。

畑で栽培される作物は、基本的には一年生の植物がほとんどです。そのため、より大きく寿命の長い植物である多年生の雑草には特に負けやすく、畑という環境の中では多年生の雑草が生えないようにし、一年生の植物が生えやすいステップ2〜3の環境を維持することが大切となります。特にステップ3の段階で生える雑草は、他者と共生するものが増えていきますので、野菜の生育を邪魔しにくくなります。

土の地力に関しては、開墾する前から遷移が進んでいてもともと地力が高い状態であれば、開墾したあとも土壌自体は地力が高いままで栽培を始めることができます。そのままの地力を維持できるかどうかは、土づくりなどのその後の手入れの仕方によって変わってきます。すぐに植生がステップ3に進むようであれば、地力は高いまま維持できていると見ることができます。

Screenshot

畑に生える雑草の変化の様子。筆者作成

ステップ3の環境を作るポイント

雑草の生える畑

うちの畑。多様性を増やすために、野菜の生育の邪魔にならない位置の雑草は刈らずに残している

ステップ3の環境を維持するためには、自然界の遷移していく流れを生かしてステップ2から3に進めつつ、ステップ4までは進みすぎないように止めるということが必要になっていきます。まず、遷移する流れを生かす方法は、単純に言うと生物多様性を高めることです。例えば堆肥(たいひ)を入れて土づくりをすることも、土壌の微生物を増やし生物多様性を高めています。また地上部では単一の作物ではなく、さまざまな種類の野菜を組み合わせたり、適度に雑草を残しておいたりすることで植生が多様になっていきます。

逆に土を乾燥させすぎたり、土壌消毒を行う、草を取りすぎる、単一の作物だけを植える、害虫を全て駆除すると言うようなことを過度に行うと生態系はバランスを崩し、遷移は進みません。結果的に荒れた環境でも繁殖しやすい夏型一年草中心の植生になり、土自体の力を衰えさせてしまうことにつながります。

次にステップ4まで進めさせないためには、まず当たり前ですが畑を放置しないことです。手入れしていないと遷移が勝手に進んでいき、ステップ4の多年草が増えやすい環境になっていきます。そしてすでに生えている多年草に対しては、越冬させないようにする、つまり地下茎や球根などの地下部に養分をためさせないようにします。地下部ごと全て引き抜いてもよいですが、地上部を繰り返し刈りつつマルチングを行うことで、徹底的に光合成をさせないことでも多年生雑草は弱って越冬できなくなります。地下茎雑草への対策については以下の記事も参考にしてください。

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雑草の種類とその変化を意識してみよう

今回ご紹介した雑草の変化はあくまでも僕の経験によるところも大きいですし、分かりやすいようにと単純化しているところがあります。ただ畑の手入れの仕方や環境によって、生える雑草の種類が変わると言う部分は、自然界の変わらない法則として確実に存在していますので、ぜひ皆さんも畑にどんな種類の雑草が生えているか、そしてそれが手入れによってどう変化しているかを観察してみてください。

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