台風で60トンのネギが消失して得た教訓
こと京都は設立が2002年。アパレル会社に勤めていた山田さんが会社をやめて実家で就農し、事業を大きくするために立ち上げた。ネギを自社で生産するだけではなく、全国の農家からも仕入れており、売り上げは約20億円。山田さんは現在、日本農業法人協会の会長も務めている。
「栽培がうまくいかなかったことを天候のせいにするのは簡単。でも売り先にいくら天気が悪かったと訴えても、『ああ、そうですか』と言われておしまい」。山田さんはそう話す。売り先は他の調達先を探し、農家は販路を失う。だが山田さんは「我々にはできることがたくさんある」と強調する。
販路は飲食店やスーパーが中心。農協や市場を通さず、直接売っている。そのためにとくに重視してきたのが、欠品しないことだ。栽培技術をいくら高めても、収量はどうしても天候に左右される。そこで打った手が、約束した量よりたくさん作ることだ。天候不順で仲間の農家の収量が落ちたときは、自社農場で多めに作っておいた分で補い、売り先に約束した量を出荷する。

台風で倒れたネギ
仲間の農家の栽培が順調なら、自社で多めに作った分は余る。そのときは乾燥させたり、粉末状に加工したりして商品化し、廃棄に回さないですむように工夫してきた。だが、そうした地道な努力だけでは対処できない大きな災害が日本を襲った。2017年10月に日本に上陸した台風21号だ。
西日本一帯に暴風が吹き荒れたこの台風で、こと京都が自社農場で栽培していたネギのうち200トンが倒伏し、そのうち傷みがひどい60トンは出荷できなくなった。その結果、スーパーへの出荷を2018年1月から4月ごろまでストップせざるを得なくなった。1億円以上の売り上げが消えた。
ふつうなら、災害を嘆いて終わるかもしれない。だが山田さんは「人災の側面もある」と指摘する。スーパーなどとの契約を守ろうとして、残っていたネギをまとめて出荷してしまったのだ。生育途上の短いものも、カットネギに加工して販売した。1月以降に出荷するネギがなくなったのはそのためだ。
二つの課題が明らかになった。