冬場の人手不足解決にJAはどう動くのか 県内の受け入れ強化、PCR検査の支援も

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冬場の人手不足解決にJAはどう動くのか 県内の受け入れ強化、PCR検査の支援も

冬場の人手不足解決にJAはどう動くのか 県内の受け入れ強化、PCR検査の支援も
最終更新日:2020年11月04日

柑橘(かんきつ)類の生産量が全国トップの愛媛県が、秋冬の収穫期の人手不足に悩まされている。特に影響が大きいのは、同県産温州ミカンの生産量の過半を占めるJAにしうわ(本所・八幡浜市)。これまで県外から「みかんアルバイター」を受け入れてきたが、コロナ禍で従来通りとはいかなくなったからだ。県外から訪れるアルバイターがPCR検査を受けるのを支援したり、県内からの人材受け入れに異業種と連携したりと、11月に本格化する収穫を前にさまざまな手を打っている。

コロナ禍で強まる農業現場の人手不足

外国人技能実習生が来日できなくなり、地域によっては県境を越えた移動への理解が得にくくなるなど、コロナ禍が全国の農業現場に与えた影響は少なくない。11月から収穫で繁忙を極める柑橘の産地は、人手の確保に奔走している。

「今年はこれまでと何が違うかというと、アルバイターを県外に依存していたのが、これまでのような受け入れが難しくなった。一定の人数を県内で確保しなければならず、県内の労働力確保がキーワードになる」

JA全農えひめ営農食糧部営農支援課の山下太司(やました・ふとし)さんはこう話す。業者と県内のJAを仲介し、「人手を確保できるよう、JAにアクションを起こしてもらった」という。
その一つがJAにしうわだ。秋冬の収穫時期に、県外から「みかんアルバイター」を受け入れており、年々人数を増やしてきた。2019年度に受け入れたアルバイターは380人以上で、人数に働いた日を掛けると、延べ1万5000人を超える。ところがコロナ禍で、地域内で従来通り県外からアルバイターを受け入れることに不安が強まってしまった。
例年、JAを含む八幡浜市内の農業関連団体で構成する各地域の雇用促進協議会でアルバイターを募集してきた。今年はこれをとりやめ、個々の農家による募集に切り替えた。これまで八幡浜市内の改修した廃校を宿泊施設としてきたけれども、相部屋でクラスターになりかねないため、今年は開放しない。

県内の受け入れ強化に加えPCR検査の支援も

JAにしうわは、県内からの人手の確保で、人材派遣・紹介事業のアビリティーセンター(同県新居浜市)と連携する。同様に人手不足に悩むJAえひめ中央(本所・松山市)とJA全農えひめも加わる「えひめの農業応援プロジェクト」は、アルバイト100人募集を掲げ、松山市で説明会を開いた。アルバイトの期間は、JAにしうわ管内まで同市内から無料の送迎バスを出す。未経験でも気軽に参加でき、かつ地域の農家の助けになることをアピールしている。

えひめ農業応援プロジェクト

ほかにも、当サイトで紹介した松山市のスタートアップ・株式会社KIRI(キリ) の仲介で、県内の観光業者と連携する。久万(くま)高原町の宿泊事業者2人にJAの選果場に働きに来てもらう予定だ。松山市の結婚相談所と連携した有償ボランティアのしくみもある。収穫を手伝ってもらい、地域限定のクーポンを渡し、地域内での消費を促す。人を集めるために幅広く対策を打ってきた。

県内からの受け入れ強化と併せて、個々の農家による県外からのアルバイター受け入れも支援する。
「地域の方にも安心してもらえるように、県外から来るアルバイターのPCR検査を農協でとりまとめ、農家の支援をしようとしている」
JAにしうわ農家支援課の大杉充(おおすぎ・みちる)さんはこう話す。県外から県内に入ったアルバイターに、県内のホテルに宿泊してPCR検査を受けてもらい、陰性の証明が出れば、ホテルから農家に移ってもらう。ホテルの宿泊費や検査費用を行政とJAにしうわで助成する。
検査を受ける予定のアルバイターは、9月末までに約220人が集まった。とはいえ、昨年受け入れた約380人とは開きがあり、農繁期となる11月中旬までにどの程度が集まるかは未知数だ。
「11月10日ごろからが最も忙しい時期。それまでにまだまだアルバイターの応募があると考えている」(大杉さん)
感染予防のため、募集する農家はアルバイターごとに個室を確保する。

アルバイターの収穫

JAにしうわ管内で清見タンゴールの収穫をするアルバイター

JA全農は観光業と連携へ

仕事に閑散期があり、コロナ禍に伴う観光客の減少にも悩む観光業界と、農業界を結び付ける動きは、JAにしうわに限ったことではない。JA全農は今夏、旅行大手のJTBとの連携を打ち出した。観光業やイベント業で仕事が減った人に農業現場で働いてもらおうというのだ。JTBがホテルや旅館、交通会社などからどの程度の人数を送り出せるか取りまとめ、JAグループから紹介された農家の作業を受託するという構想だ。

全国に先駆け、大分県で連携が始動しつつある。8、9月にJTBからの紹介を受けた別府市内のホテルの経営者と管理職が、キャベツとカボスの収穫体験をした。ホテル側は、余剰人材に農業現場で働いてもらうことによる雇用の維持、ホテルで提供する食材の発掘、農家との関係強化と農家のホテル利用の可能性などをメリットと感じている。ホテルの従業員を10月以降、研修もしくは副業として農業現場に送り出していく。

JA全農労働力支援対策室長の花木正夫(はなき・まさお)さんは「人口減少下における農業分野の人手不足は、全ての施策を総動員しないと、解決できないだろう」と話す。考えられるのはスマート農業、外国人労働者、農福連携、そして農業現場の近くで労働力を確保する労働力支援のしくみだ。花木さんは「中でも労働力支援が一番大きいファクターだ」と期待を寄せる。
新型コロナウイルス感染症の流行次第で、県境を越えた移動がどうなるかは読めない。それだけに、観光業との連携といった、農業に地域内の労働力を活用する手法が注目される。

農業労働力確保緊急支援事業情報

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