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東京オリジナルの新品種「東京おひさまベリー」情報交換会に潜入!

東京オリジナルの新品種「東京おひさまベリー」情報交換会に潜入!

東京都農林水産振興財団が主催する、「東京おひさまベリー」の情報交換会に潜入してきました!
「東京おひさまベリー」は東京都オリジナルのイチゴの新品種です。
栽培した生産者や、「東京おひさまベリー」を使ったスイーツやドリンクの試作品をつくった飲食店・企業、これから栽培をしようと検討している生産者などが集まり、意見を交換しました。「東京おひさまベリー」の特徴と、情報交換会の様子をお伝えします。

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東京の新品種イチゴとは?

東京都が約20年かけて開発した新品種「東京おひさまベリー」は露地栽培用のイチゴです。
果実が大きくて硬い「女峰(にょほう)」に露地栽培に適した「宝交早生(ほうこうわせ)」を1999年に交配した結果、甘みと酸味のバランスが良く、香りの高いイチゴができました。
これまで流通してきた「宝交早生」よりも果実のサイズが大きく約1.4倍あり、果肉は中まで赤いのが特徴です。

東京おひさまベリー

そもそも「東京おひさまベリー」はなぜ開発されたのでしょうか。

まず露地栽培の品種の開発という点からみると、さまざまな理由がありました。
露地栽培のイチゴは、都内でよく行われている畝売り(※)ができるなど、少量多品目栽培をしている生産者が輪作品目や直売品目として栽培するのに便利です。また、施設栽培ほど収益性は高くはありませんが、初期投資をほとんど掛けずに始めることができます。
施設がいらないため、家庭菜園・プランター栽培など一般家庭でも楽しむことができます。

ただ、これまでの露地用の主力品種である「宝交早生」は、高収量で食味も良いのですが、果実が大きくならなかったり、果皮が柔らかくなってしまうといった問題点がありました。イチゴの露地栽培となると品種は「宝交早生」以外に選択肢がほとんどない状況だったため、この点を改善した新しい品種を作ろうということになりました。

しかし、簡単に新しい品種を生み出すことはできません。1年で一作しか栽培できないため、長い時間を必要とします。「交配しても品質の良いイチゴが生まれるとは限らず、ほとんどのものは育種目標に達せずに廃棄されました」と東京都農林総合研究センターの沼尻勝人(ぬまじり・かつひと)さんは振り返ります。約20年の研究を重ねた結果、「女峰」の皮の硬いところや粒の大きい特徴を引き継ぐことができ、「東京おひさまベリー」が誕生しました。

※ 畝売り:畝上にある野菜を、植えられたままの状態で丸ごと販売すること。

「東京おひさまベリー」について加工する人・栽培する人はそれぞれどう思ったのか

東京おひさまベリーを育てた、あるいは栽培を検討している生産者や加工事業者などが集まり、東京都農林水産振興財団の講堂(西立川)で厳重なコロナ対策のうえ、「東京おひさまベリー」の情報交換会が開催されました。
この情報交換会では加工事業をしている企業や地元の飲食店がそれぞれ試作品を持ちより、試食会がおこなわれました。
用意されたのは、

・東京おひさまベリーのジャム入りミルク飴
・東京おひさまベリーのバタークリームサンド
・東京おひさまベリーのチェッロ(リキュール)
・東京おひさまベリーのバルサミコ煮込み
・東京おひさまベリーのほっぺ(ムースをスポンジで包み込んだ洋菓子)

加工する側のレビューで目立った意見は、東京おひさまベリーの「香りの高さ」と「味の強さ」。
加工してもイチゴの存在感がある仕上がりになるとのこと。

筆者も試作品を食べてました!(やったー)
どの加工品を食べても、しっかりイチゴの味がしておいしい!
東京おひさまベリーのチェッロをお土産で少しいただいたので、家で牛乳で割って飲みました。高級なイチゴミルクの味がして、思わず飲み過ぎてしまうところでした

特に評判が良かったのは、「東京おひさまベリーのほっぺ」。イチゴのムースとカスタードクリームをふんわりとしたスポンジで包んだお菓子です。「東京おひさまベリーのほっぺ」をつくった洋菓子マロニエの大石修(おおいし・おさむ)さんは、「東京おひさまベリーは酸味が強く香りも高いため存在感があり、他のクリームと合わせても味が埋もれない」と評しました。

東京おひさまベリーは中の色まで赤く、味と香りも強いので加工にも向いている品種といえそうです。

実際に栽培を試みた生産者の声

実際に「東京おひさまベリー」を栽培した生産者からは、育てた感想の共有がありました。
「作りやすい品種だと感じた。暖冬だったため、肥料を減らして栽培してみたのが良かったのだと思う」、「露地栽培でイチゴを育てるのは慣れていなかったので、収穫までなかなかうまくいかなかった」など、さまざまな意見がありました。

実は今回の情報交換会は、東京おひさまベリーを育てた生産者が加工品などの商品開発に期待を寄せているとの声が東京都まで届いたため実現したものです。

情報交換会は、東京おひさまベリーの特徴や魅力を認知させるだけではなく、育てる・加工する・届けるなどさまざまな立場の人が集まり、意見交換することで東京おひさまベリーの可能性を広げる会となりました。

東京おひさまベリーは5月から6月上旬が収穫時期で、最盛期は5月中旬です。露地栽培の品種のため期間は短いですが、本来の旬のイチゴが味わえます。生産地の指定はなく、一般のご家庭も含めて全国で作れます。ぜひ、東京おひさまベリーを楽しんでみてください。

東京おひさまベリー栽培マニュアル(令和2年度暫定版) [PDFファイル/3.07MB]

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