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ジビエペットフードが真のブーム! ジビエ業界のパイオニアを直撃【猟師・垣内規誠さん】

連載企画:狩猟入門

ジビエペットフードが真のブーム! ジビエ業界のパイオニアを直撃【猟師・垣内規誠さん】

いま、シカ肉のペットフードが脚光を浴びているのをご存じですか? 愛犬に与える良質なたんぱく源として、中山間地域の新ビジネスとしても活路を見いだしています。食肉処理施設「京丹波自然工房」の代表・垣内規誠(かきうち・ただまさ)さんは、2013年からジビエペットフードを作っているパイオニアです。そこで今回は、垣内さんに詳しいお話を伺いました。最後に、田舎暮らしを考えている人に向けた大切なメッセージもありますので、ぜひ読んでみてください!

2019年度はシカ・イノシシ年間124万頭捕獲、ジビエ利用11万頭

はじめに日本におけるシカ・イノシシの捕獲状況について解説しておきます。
※ 各数値は「令和元年度野生鳥獣資源利用実態調査報告」(農林水産省)による。捕獲頭数は2020年9月時点の速報値。

2019年度、野生鳥獣による農作物被害額は158億円でした。その約7割がシカ・イノシシ・サルによる被害です。

被害対策のため、10年ほど前からシカ・イノシシの捕獲数が大きく増加。2019年度はシカ60万頭、イノシシ64万頭が捕獲されました。

そのうち全国の667ジビエ処理加工施設で処理されたジビエ利用頭数は、シカ8万1869頭、イノシシ3万4481頭でした。ジビエ利用量は捕獲数全体の約1割にすぎません。たくさんのシカやイノシシが廃棄処分されている現実があります。

2019年度のジビエ利用量をみると、人が食べるための食用は前年より減り、ペットフード利用量が増えています。

ジビエ業界のトップランナー垣内さんを直撃!

そこで今回は、ジビエペットフードについて詳しく探るため、京都府船井郡京丹波町にある食肉処理施設「京丹波自然工房」代表の猟師・垣内規誠さんにお話を伺いました。

垣内さんはペットフードを作るほかにも、「鹿肉のかきうち」のブランド名で京都高島屋やザ・リッツ・カールトン京都、京都ホテルオークラなどに最高級のジビエを卸しているジビエ業界の第一人者です。
垣内規誠さん

■垣内規誠さんプロフィール
1961年京都市生まれ、兵庫県宝塚市育ち。猟師だった叔父の狩猟犬に魅了され、自らも猟師を志すように。狩猟犬を飼いながらの田舎暮らしに憧れ、結婚を機に27歳で京都府福知山(ふくちやま)市にIターン。家庭犬の訓練士などの仕事を経た後、2007年、田舎暮らしをあっせんするための不動産会社「株式会社ART CUBE(アートキューブ)」を京都府船井郡京丹波町に設立。2013年に食肉処理施設「京丹波自然工房」を開設し、ジビエビジネスに参入。

シカの死体の山を見て「なんとか地域の特産物に」

ジビエペットフード

──もともと個人の趣味として狩猟をしていた垣内さんが、ジビエ業界に参入しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

20年ほど前からかな、地元の福知山市で有害鳥獣駆除の活動をするようになって。それまでは冬の3カ月間しか狩猟をやっていなかったのが、有害駆除活動で一年中狩猟に携わることになって。活動するなかでシカ・イノシシの死体の山を見て、なんとかそれを利活用できないかと……。

僕はIターンで、よそから来た移住者。都会育ちで農業もやったことがないし、地域に貢献できることがひとつもない。何かできることがないかと考えていた時に、ジビエを特産物として出し、地域ブランド化することを計画しました。

──それで京丹波自然工房を開設したのですね。

きちんとしたジビエを流通させるためには、保健所の許可をとらないといけません。そこで、食肉処理施設を開設して許可をとり、ジビエを販売することになりました。

京丹波自然工房の「犬も人も一緒に食べられるジビエ」

鹿ジャーキー

人気商品の「鹿ドライジャーキー」

──京丹波自然工房では、ペットフードと人が食べるためのジビエの両方を作っています。当初から両方をやる計画だったのですか?

もともと僕はペットフードがやりたくて施設を作りました。自分の飼っている狩猟犬にも何十年とシカ肉を与えてきて、犬にシカ肉が良いことは実感しているし、自信を持って犬にシカ肉をすすめられるから。

僕の考え方は、ワンちゃんにも人と同じようなクオリティーの高いものを与えたいというコンセプトなんです。「犬も人も一緒に食べられる、高品質のジビエを作ろう」と事業をスタートしたら、人が食べてもおいしいと評判になって。それで、ホテルや百貨店にも納めるようになりました。

いまはペットに良いものをあげたいというオーナーさん(飼い主)が増えているし、我が子のように犬を思うオーナーさんが多いでしょう。将来も犬の地位は上がっていくだろうと考えています。だから、人が食べてもおいしいぐらいの高品質のペットフードを販売しています。

──法令上は、ペットフードの製造・販売にはペットフード安全法による規制がありますが、食肉と違って保健所の許可は必要ないのですよね。国の交付金(鳥獣被害防止総合対策交付金)も受けられるようですし、やはり新規事業としては参入しやすいのでしょうか。

ペットフードは届け出をすれば、誰でも事業として参入できます。全国でペット専用の処理加工施設も増えはじめています。食肉としてジビエに取り組むには、お金もかかるし保健所の許可も必要ですから、これから参入する場合は、まずペットフードからスタートするのもよいと思います。

それからは、どこを目指すのかっていうこともすごく大事なんです。地元の道の駅などで買ってもらう程度であれば、高額の施設を作らなくても十分だと思います。僕は事業としてしっかり地域ブランド化して全国展開していくためにも、かなりの設備投資をして、衛生管理なども徹底して行っています。

──京丹波自然工房は、国産ジビエ認証制度第1号認証施設でもありますね。

より高品質なジビエにするために、厳しい衛生管理基準や流通規格を順守して、トレーサビリティーの確保にも取り組んでいます。

京丹波自然工房では、捕獲の方法として銃は使わずに、わなで捕獲した獲物のみを取り扱っています。捕獲からすべて専任スタッフが行っていて、捕獲現場の状況把握、獲物の体温計測、血抜きなど、スタートの段階からトレーサビリティーがはじまります。

血抜きから1時間以内に施設に持ち込むなど、徹底して品質にもこだわってる。だからこそ、おいしいジビエができる。こだわらないといけないところだと僕は思っています。

ジビエ処理加工施設

──獲物はすべて自社スタッフが捕獲しているのですね! 一般ハンターからの持ち込みがないというのは、ほかの施設にはない際立った特徴です。京丹波自然工房には何人のスタッフがいて、年間の捕獲数はどれぐらいに?

専任スタッフは僕のほかに男性3人と女性1人です。捕獲から解体、加工まで、すべて自社で行っています。2020年度の捕獲数はシカとイノシシの合計で450~500頭ぐらいになる予定です。

──利用量としては、ペット用と人用の割合は?

利用量はいま現在は半分ずつだけど、将来は人用を減らしてペット用を増やしていきたいというのが僕の経営戦略です。高級ホテルに卸しているものと同じ品質のジビエで、ペットフードも作っているっていうのがわが社の強みかな。

需要拡大中のジビエペットフード! どんな犬に必要とされている?

鹿ペットフード

シカの生肉もよく売れるのだとか。「はじめは少しだけ加熱して、慣れたら生肉のまま食べさせるのがおすすめです」と垣内さん


──ジビエペットフードは、どのような犬に適しているのでしょう?

生まれた時から高齢犬まで、あらゆるワンちゃんに良いですよ。育ち盛りでしっかり筋肉を付けたいとか、老犬でタンパク質を多くとりたいとか。ドッグフードで犬にもアレルギーが出ることがありますが、そういうワンちゃんにも天然自然のお肉であるジビエはおすすめできます。

──ジビエペットフードの中でも、特にシカ肉が普及しているようです。

ジビエペットフードの出はじめがシカ肉でしたし、栄養の面でも高たんぱく・低脂肪で犬に最適です。

最近はイノシシも人気がでてきて。同じものばかり食べていると犬も飽きるから、シカもイノシシもあると飽きないようです。あと、最近はキャットフードでもシカ肉が注目されてきていますよ。国内のネコは新規飼育頭数が増加傾向なので、今後はキャットフードにも力を入れていきたいです。

──なんとネコもジビエを食べるとは! イヌもネコもグルメになっているんですね! ドッグイベントなどで垣内さん自ら対面販売することもあるそうですが、やはりジビエペットフードの需要は伸びていると実感していますか?

事業をスタートした2013年頃と現在とでは、まず認知度が全然違う。ペットフードにこだわるオーナーさんも増えていますし、シカ肉の魅力の認知度としては、人の食用ジビエよりも犬の方が知れ渡っています。

イベントなどでもオーナーさんがすでに効果をわかっているから、シカ肉の何が良いのかっていう説明をしなくてもいい。ジビエは人より犬の方がブームです。

必読! 田舎暮らしを考える人へ、垣内さんからの大切なメッセージ

鹿肉のかきうち

──私もジビエペットフードがますますはやる予感がしています。狩猟免許を取得する農家も増えていますし、中山間地域での副業や新しいビジネスとして、ジビエペットフードに期待したいです。

僕はずっと不動産業も続けていて田舎暮らしのあっせんをしているから、新規就農者や移住者のお世話をするんだけど、皆さんに狩猟免許を取ってくださいと言っています。

いま新規就農しようと思ったら、害獣駆除が必須になっているから。電気柵をつけたり、わなを置いたりしないといけないけれども、それを猟友会の猟師さんにやってもらうっていうのは、これからの時代には合わないと思います。

自分で農地を守る、そのお肉を自分で食べる。もしくは地域ブランド化して商売にもできる。ペットにもあげられる。農業で自立するまでのあいだは、いまは捕獲の報奨金もある。

移住者も、狩猟をやっていると田舎に入りやすいんです。「うちの近所にくるシカやイノシシをとってほしい」とお願いされて、地域の方との接点になりますし、地域の役にも立てる。

──狩猟と農業を両立して、自分で農地を守る。新時代の生き方ですね。

僕は安心安全なきちんとしたジビエが広がってほしいし、狩猟をしっかりやりたいという人を支えたい。

狩猟のやり方、田舎暮らしの生計の立て方は、僕が教えます。マイナビ農業の読者のみなさんも、まずはホームページのお問い合わせ先からどんどん聞いてください! 本格的に狩猟を勉強したい人は、受け入れもしています。

働きながら狩猟を学んで、最終的には、自分が新規就農したい場所で、猟師として獣害対策もやりながら自分のやりたい農業もやっていく。最初はペットフード事業からスタートするのもいい。こんなに素晴らしいことないですよ。

──垣内さんが相談に乗ってくれるなら、これほど心強いことはありません! すでに中山間地域の活路となりはじめているジビエペットフード、令和時代の新商材として大注目です。

※ 情報は2021年2月末時点のものです。

画像提供:株式会社ART CUBE

株式会社ART CUBEhttp://www.artcube.in/(問い合わせはこちらから)
京丹波自然工房https://www.kyotogibier.com/
鹿肉のかきうちhttps://shikaniku-kakiuchi.com/

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