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性質を知ってオリジナル培養土をつくろう!【基本用土の基礎知識】

伊藤 雄大

ライター:

連載企画:凄い!農家のアイデア集

性質を知ってオリジナル培養土をつくろう!【基本用土の基礎知識】

ホームセンターなどに並んでいる赤玉土や、鹿沼土などの基本用土。それぞれ一体どんな性質があるのでしょうか? 性質を知っておけば、単体で覆土や挿し木の用土など用途に合わせて自由自在に使え、それぞれを混ぜ合わせることで自分が使いやすい「オリジナル培養土」をつくることも可能です。それぞれの特徴とともに、筆者の使い方も紹介します。

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赤玉土

性質

赤玉土は、関東ローム層の黒土の下にある、火山灰が堆積(たいせき)してできた赤い土です。
掘り出した赤土を乾燥後、ふるいにかけて選別しており、大小さまざまな粒状のものが販売されています。
もともとは粘っこく保水力のある土ですが、粒状であるがゆえに保水性と排水性を兼ね備えており、盆栽やサボテンの基本用土によく使われています。
難点は、強い勢いでかん水したり、霜に当たったりすると粒が崩壊して、べっとりとした粒子の細かい粘土になってしまうこと。粒子が崩壊すると、排水性が極端に悪くなります。
「硬質」と書いてあるものはより丈夫なのですが、農業の育苗で使う際には、あまり気にすることはありません。同じ用土に長期間植えこむ盆栽や多年草とは違い、短期間ですし、霜に当たることはまずないでしょう。

特徴と、農業での使い方

私の場合は、主にセルトレイで育てた果菜類の苗を、ポットに植え替える(鉢上げする)際に、市販の培養土の排水性を高めるために赤玉土を1〜2割ほどブレンドしています。
市販の培養土だけよりもずっと根張りが良くなりました。ゴロッとした隙間(すきま)に根っこがよく絡みつきます。

鹿沼土

性質

赤玉土とよく似ていますが、それよりも少し白っぽい粒状の土です。その名のとおり、主な産地は栃木県で、火山の噴出物がかたまり、風化してできたものです。赤玉土同様、大小さまざまなサイズがあり、より細かい「細粒」もホームセンターで購入できます。
弱酸性で、赤玉土よりも崩れにくく、排水性がより良く、長く保たれます。そのため、山野草などの宿根(多年)草の培養土や、酸性を好むサツキなどの植物によく使われています。

特徴と、農業での使い方

水に濡れると黄色っぽくなり、乾くと白くなる

濡れていると黄色っぽいのですが、乾くと遠くから見ても一目瞭然なほど白く見えるので、水やりのタイミングがわかりやすい鹿沼土。
この性質を利用して、セルトレイ等で大量に育苗している農家が、覆土として鹿沼土の小粒を使っていました。水切れやかん水ムラが一目でわかるからです。
また、鹿沼土は市販の培養土よりも重く、ホウレンソウやパクチーなど、子葉に種の皮が残りやすいものに使うと、皮残りがなくなります。

やや小粒のものを挿し木の床として活用中

また、保水性と排水性のバランスが良いので、挿し木の床にはうってつけです。

バーミキュライト

性質

ひる石という鉱物を800〜1000度程度の高温で焼成し、膨張させた人工培土です。見た目はウッドチップのようですが、ほどよく細かく、軽い。保水性、排水性も良く、通気性もあります。

特徴と、農業での使い方

バーミキュライトを覆土として薄くまいたペチュニア

保水力が高いうえに粒状なので、種まき培養土や育苗培養土によくブレンドされています。鹿沼土などと同様に、挿し木床にも使われることがあります。
私の場合は、ペチュニアやバジル、トルコキキョウなど、種子が1ミリほどと細かいうえに、発芽の際にある程度の光を必要とするもの(好光性種子)の覆土としてバーミキュライトを薄くまきます。
こういった種子はたいてい「覆土は必要ない」とありますが、まったくの覆土なしでは表面が乾燥して発芽しにくくなってしまいますので、それを防ぐためです。

ピートモス

性質

ビカクシダやランなどの着生素材としてよく使われる水苔(みずごけ)が、自生地の湿地で長年かけて堆積し、分解された土です。保水力がとても高く、軽い。
鹿沼土よりも酸性が強いですが、「pH調整済み」と書いてあるものは中性に調整されています。

特徴と、農業での使い方

一番左がピートモスで、かん水後に水がしみこむのがとても遅い

酸性であるのを生かして、酸性土壌を好むブルーベリーの用土などにブレンドされています。また、軽くて水持ちが良いため、種まき培養土や育苗培養土にもかなりの確率で混ざっています。
ピートモスが混ざった種まき培養土は、ほど良い水分を長期間保ってくれるため、うまく使えば発芽まで水やりをしなくてもいいのですが、乾燥には注意が必要です。
乾燥したピートモスは水を弾くようになり、水がしみこみにくくなっています。
ピートモス単体はもちろんのこと、ピートモスが混ざった培養土は、購入してしばらくたち、一度乾燥してしまった場合、使う前に水をかけて練るなど、しっとりした状態に戻すことが大事です。

腐葉土

性質

落ち葉や樹皮などが堆積、朽ちてできた黒い土です。保水性が良く、ここまで挙げた用土とは違い、肥料成分もあります。

特徴と、農業での使い方

保水性が良すぎるので単品ではまず使うことがないですが、腐葉土を主体に、赤玉土や鹿沼土、軽石などをブレンドしたものが、庭木や花壇の土として販売されています。
一方で、他の用土と比べて肥料成分が多く含まれているため、根っこがまだデリケートな小さな苗や、種まき用土としては向きません。

市販の培養土を観察する

左から、花壇向け培養土、育苗培養土、種まき培養土

ホームセンターに行くとさまざまな専用培養土があります。
種まき用だったり、育苗用だったり、庭木・花壇用と書いてあったり、さらにはブルーベリーや観葉植物、クジャクサボテン用など、ニッチなものも含めてとても種類が多く、わかりやすいようで、どれを選べばいいか迷ってしまいます。
農業でよく使うのは、種まき用と育苗用ですが、これもメーカーによって全然違います。水はけがいいもの、水持ちがいいもの、かん水時に水がサッとしみこむもの、軽いものなど、さまざまです。
でも結局は、どの培養土もそれぞれのメーカーが用途に合うように、紹介したような基本用土をブレンドしたもので、基本用土の性質を覚えておくと、自分のお気に入りの土を見つけやすくなります。
また、性質がわかれば、自分で自由にブレンドすることだって可能です。
それぞれの性質を生かして、オリジナルの培養土をつくってみましょう!

我が家の宿根草や多肉植物用の培養土。赤玉土と鹿沼土、軽石が入っており、植物によって腐葉土やバーミキュライトなどを加える

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