コロナ関連の補助金で軽バンとスプリンクラーを購入
荒木さんは枝豆やホウレンソウ、パクチーなどの野菜を育てている。JA全中では農政の調査などを担当。就農後は補助金を活用し、元手ゼロで1000万円のハウスを建てるなど、助成策に関する豊富な知識を営農に生かしてきた。
そのノウハウは、新型コロナで農林水産省が設けた支援策を使う際にも生きた。補助金を原資にスプリンクラーと軽バンを導入したのだ。
支援策の名称は「経営継続補助金」。マスクの購入など「感染拡大防止の取り組み」を対象にしたものと、機械の購入や販路の開拓など「経営継続に関する取り組み」を対象にしたものの二つがあり、荒木さんは後者を利用した。
補助率は経費の4分の3で、支給上限は100万円。経費のうち6分の1以上が、コロナ対策に関連していることが条件になる。従業員同士の接触を減らしたり、少人数で作業できるようにしたりする省力化投資などだ。
荒木さんの場合、スプリンクラーがコロナ対策と認められた。自宅近くの畑に水をまくため、これまで使っていたのは畝に沿って地面にはわせた8本の灌水(かんすい)チューブ。水道の蛇口とチューブを長いホースでつなぎ、チューブに開いたたくさんの穴から水をまいていた。
ここで負担になっていたのが、チューブにホースをつなぐ作業。8本のチューブにホースを順番につなぎ直すのに、かなりの時間を割いていた。これに対し、スプリンクラーは畑の真ん中に1台置けば、全体に水をまくことができる。
荒木さんは現在、2人のスタッフを雇っている。もしどちらかがコロナに感染すれば、水やりが滞ったり、水やりに時間をとられて他の作業に影響したりする可能性がある。スプリンクラーはその対策として認められた。
では「コロナ対策が経費の6分の1以上」という条件との関係はどうだったのだろう。スプリンクラーと軽バンの購入費は合計で142万円。その6分の1は約23万7000円。そしてスプリンクラーの値段は24万円。条件をぎりぎりのところでクリアし、経営継続補助金の支給を受けたのだ。
一方、経費の4分の3という補助率を適用すると、支給額は約107万円になる。ただ支給額には100万円という上限があるため、荒木さんは100万円の補助を受けることになった。残りの42万円は自己資金をあてた。
売上減ではなく需要増により申請
補助金で軽バンを買った目的も見てみよう。