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どの作物の影響が大きいか、データで浮かぶコロナ下の明暗とこれからの経営

連載企画:農業経営のヒント

どの作物の影響が大きいか、データで浮かぶコロナ下の明暗とこれからの経営

新型コロナウイルスの感染拡大は、農業経営にどのような影響を与えているのだろうか。日本政策金融公庫はそれを確かめるため、肉用牛や果樹、花、茶など業種ごとに営農の実情を調査した。その結果、影響の大きさや対応策に業種によって大きな違いがあることが浮かび上がった。

コロナで景況感は軒並みマイナス

調査は2021年1月に実施した。対象は日本政策金融公庫から長期融資「スーパーL資金」を借りている農家など1万8060人。自治体の支援の対象になるなど「担い手」とされる農家だ。回収率は32%だった。
まず農業経営が2020年に「良くなった」という回答の比率から、「悪くなった」の比率を差し引いて算出する「景況DI」から見てみよう。
結果はほぼすべての業種で「悪くなった」の比率のほうが高かった。

日本政策金融公庫調べ。数値は景況DI

とくに深刻なのが茶で、景況DIはマイナス78。次いで肉用牛がマイナス43.9と状況が厳しく、採卵鶏や花、都府県の稲作などもマイナス幅が大きかった。

次にコロナが売り上げにどう影響したかを見ると、「マイナスの影響がある」という回答の比率が最も大きかったのはやはり茶で、90.1%。肉用牛や花もそれぞれ86.2%、74.2%がマイナスの影響があると回答した。

日本政策金融公庫調べ

コロナが売り上げに響いたと感じた業種と、景況DIのマイナス幅が大きい業種はほぼ一致しており、2020年はコロナによる販売減が景況感を左右したことがわかる。だが過去にさかのぼると、業種ごとに違った事情も見えてくる。

構造的な不振にコロナが追い打ち

茶の景況DIのデータを見ると、過去10年余りほとんどの年がマイナスになっており、2009年、2014年、2015年、2019年はマイナス幅が50を超えた。コロナの感染が広がる前から状況はかなり厳しかったわけだ。
背景には家族でお茶を入れて飲む機会が減ったことや、ペットボトルの普及で割安な茶葉の需要が高まったことなどがある。そこにコロナによるホテルや飲食店向けの販売不振、葬儀の簡素化による香典返しの需要の減少などが追い打ちをかけた。帰省の自粛も茶の販売にとって逆風となった。
似たような状況にあるのが花だ。海外から輸入される切り花との競合が激しくなったことで、作付面積は1995年をピークに減少。2020年はコロナによるさまざまな式典の中止が響いたが、以前から景況感は芳しくなかった。

茶は構造的に状況が厳しい

少し事情が違うのが肉用牛。2020年は大幅なマイナスになったものの、2015~2018年はいずれもプラス。インバウンド(訪日外国人)消費で人気が高まったためだ。その反動で、コロナによる訪日客の激減が景況感を一気に冷え込ませたが、過去のデータは潜在的になお需要があることを示唆している。
一方、養豚は2020年の景況DIがプラス44.3。コロナの影響は「プラスの影響」と「ほぼ影響はない」を合わせると、83.3%に達した。「巣ごもり消費」で、家で豚肉を食べる機会が増えた。牛肉と比べて値段が安い点が、追い風になったようだ。ブロイラーも同じ理由で、景況DIがプラス6.4だった。

果樹や花、鶏卵はネット販売に半数以上が意欲的

ではコロナのもとで、農産物の販売先にどのような変化があったのだろうか。調査で「取引量が増えた販売先」について聞いたところ、1位は市場・農協の9.8%で、2位はスーパーなどの小売業者の8%だった。
いずれも農家にとっては昔ながらの売り先だ。とくに市場や農協は需要動向に応じて機動的に売り先を調整する機能があるため、飲食店の不振とスーパーの好調が同時に起きた今回のような局面では強みを発揮したと見られる。

コロナで農協への出荷が増えた

一方、コロナで一躍注目を集めた産直サイトなど、インターネットを使った販売は3位の6.8%だった。農協出荷などには及ばないが、直売所や加工向けなどに比べれば高く、一定の存在感を示したと言えるだろう。
そこで調査では、業種別にネット販売の意向についてもたずねてみた。それによると「すでにネット販売に取り組んでいるか、これから始めたい」とする比率は、果樹の65.4%が最も高く、花の56.3%や採卵鶏の53.3%が続いた。
共通しているのは、輸送時にかさばらない点。農家の段階で最終製品として出荷できる点も、ネット販売への意欲につながっていると見られる。ただコロナでにわかに注目を集めた側面があるため、どれだけ有力な販路になるかは、サービスを提供する業者と農家の努力にかかっている。

設備投資には前向き姿勢

調査で、すべての業種を通して前向きな回答が得られた項目もある。設備投資の動向だ。2021年に設備投資の予定があると答えた比率は全体で46.1%と、2020年の予定をたずねた1年前の調査と比べて1.8ポイント高まった。景況感が厳しい茶でも35.1%、採卵鶏は56.8%が「予定あり」と答えた。
今回の調査は、将来の担い手と期待される生産者が対象。今後の経営方針をたずねた項目では、多くの農家が「設備増強」や「生産規模の拡大」を挙げており、厳しい状況の中でも経営の発展に努める姿が浮き彫りになった。
農業は市場開放による安い海外産との競争激化や自然災害、相場の暴落などさまざまな困難に直面してきた。コロナはその一つであり、多くの生産者は政府による支援策も活用しながら、先を見据えて手を打っている。

日本政策金融公庫調べ。優先順位が高い順に3つを選択

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「食と農」の現場を日々取材する記者が、田畑、流通、スマート農業、人気レストランなどからこれからの農業経営のヒントを探ります。
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