病害虫に負けない3つの考え方
季節の変わり目は、気持ちも畑もリセットできる良いタイミングではないでしょうか。夏野菜は少量多品目農家としてもやりがいのある楽しい時期のはずですが、2月から種まきを始め準備してきたところで梅雨という難関が待っています。日照不足による生育不良、そして農家を困らせる最大の問題、「病害虫の発生」。少量多品目農家でレストランへ出荷している私も毎年同じ課題を抱えてきましたが、今では「病害虫に負けない3つの考え方」を持ったことにより、ストレスは減り、売り上げをアップさせることができています。
自然は利用するが闘わない
前回も話しましたが、人間は自然の力には勝てません。これを早く理解することが大切です。夏には暑さに強い品目を作り、冬には寒さに強い品目を作る。これによって、病害虫のリスクも減らすことができ収量を落とさずにすみます。野菜の性質を知り、自然と共存し、闘わないことです。
収穫のタイミングを変える
通常、収穫する野菜は、種袋の写真や説明を参考にしたり、規格サイズに合わせます。しかし私の場合、販売先はレストランということあり、小さめのサイズが好まれますので、規格に合わせる必要はなく、一般的なサイズより小さくても販売ができるのです。これによって、畑で栽培している時間も短く、病害虫によるリスクも減少できます。販売チャンネルにもよりますが、販売先に新しい商品として提案してみてはいかがでしょうか。
確率を上げる
「良い野菜を出荷する」にはどうすればよいか。それは、「良い野菜を収穫する」確率を上げればよいのです。その為には、病害虫リスクも見込んで、同じ手間でたくさん取れる品目品種を選ぶか、数を多く栽培することです。
また、先ほど説明したように、収穫のタイミングを早めることで病害虫にやられるリスクが減り、結果的に出荷できる野菜の数が増えます。
栽培方法も確率を上げる一つの手段ではありますが、そこには経験値と機械や資材の導入という経費も要りますので、ここでは触れません。
この3つの考え方をもとに、タケイファームが病害虫のリスクを抑えて売り上げを上げている品種を紹介します。
オクラはつぼみで収穫する「島の恋」
夏野菜の代表オクラ。「島の恋」は赤いタイプの丸サヤのオクラです。暑さには強いですが、アブラムシやヨトウムシなどの虫害は避けることができません。私は、虫にやられてしまう前に収穫するのですが、それはオクラではなく、花が咲く前のつぼみです。つぼみの中には5枚の花びらがドリル状に巻かれていて、外の皮をむくととても美しく、しっかりとオクラの味がします。「つぼみで収穫したらオクラが取れないからもったいないのでは」と思った人もいるでしょうが、つぼみは市場になかなか出回らないので、オクラよりも高値を付けて販売すればよいのです。「島の恋」を選んでいる理由は、同じ丸サヤの緑色のタイプの「島オクラ」に比べて実をたくさんつけ、つぼみの形がきれいだからです。
1株から200個は取れるホルン型ピーマン「ライムホルン」
ライムホルンは、甘く柔らかくて苦みのないピーマンです。名前の通り、ライム色でホルンの形をしています。プランター栽培でも簡単に作れますので家庭菜園初心者にも向いています。私は毎年20株ほどのライムホルンを栽培していますが、それだけあればレストラン出荷には十分対応できます。しかも、サイズは長さ3センチほどで収穫してしまいますので、株の疲れも軽減されます。
数が取れ、秋までの長期間収穫できる優れものです。
全く辛くない大和の伝統野菜「紫トウガラシ」
紫トウガラシは、奈良県で古くから栽培されてきた「大和の伝統野菜」の一つに認定されているトウガラシです。私が黒い色の野菜を探していた時に出会った品種で、ナスのような黒紫色をしています。トウガラシと言っても、辛みはなく、生食でも安心して食べることができます。加熱すると緑色に変わりますので、出荷先のレストランでは生のまま縦割りにしたりして、料理のトッピングに使っています。こちらも1株からたくさん取れますので、ライムホルン同様、良品の確率を上げるための品種の一つです。
見た目のインパクトが強烈、小さなキュウリ「メキシカンサワーガーキン」
スイカのような模様が入る直径2センチほどの楕円(だえん)形のキュウリです。ワイルドキュウリやマイクロキュウリとも呼ばれています。食べ方は、サラダやピクルス、スープの浮き身など。栽培方法は普通のキュウリと同じで、水を切らさないようにすれば栽培は簡単です。問題点は、実が付きすぎて収穫が大変なこと。タケイファームでは1個20円で販売しています。
トマトのコンパニオンプランツに「ブッシュバジル」
一枚の葉が1センチほどのブッシュバジル。スイートバジルよりも香りが強く、草丈は30センチほど。プランター栽培にも適しています。トマトのコンパニオンプランツとしても最強なバジル。トマトは乾燥気味に育てた方が糖度は上がります。バジルは水を必要とする夏野菜のため、水をあげすぎてもバジルが水分を吸収してくれます。さらに、バジルの香りは害虫忌避の効果があります。スイートバジルの場合、成長すると風通しを良くするために茎先を摘み取る作業が必要となりますが、草丈30センチのブッシュバジルはその作業も必要ありません。収穫してもすぐに次の葉が出てきますので出荷ベースとして考えても売り上げに貢献してくれる優れものです。
小さな野菜で利益を上げるための工夫
今回紹介した品種は、最近タケイファームの夏野菜として売り上げに貢献している品種です。病害虫の被害を減らすために収穫のタイミングを変えて出荷していますが、早めに収穫してしまうとサイズは小さくなります。小さいものを重さの単位で販売してしまうと量が必要となりますが、タケイファームでは、基本オクラのつぼみもピーマンも1個売りですので、その心配はなく売り上げにつながっています。収穫のタイミングを変えるという事は、販売先への提案の仕方、パッケージングなど、利益を上げるための工夫も必要になります。