“毒物・劇物”とはどのようなものか
毒物・劇物は法律で定められている
まず、毒物や劇物とはどのようなものでしょうか。
毒物や劇物は「毒物及び劇物取締法」という法律で定められています。化学物質のうち、少量でも人体に害をもたらす恐れがあるものを指します。毒性が高いものから順に、特定毒物、毒物、劇物とされています。具体的には、毒物には水銀やヒ素など、劇物にはアンモニアや塩酸などがあります。
工業薬品など多くの場面で使われていますが、取り扱いによっては中毒になってしまうなどの危険性があり、注意しなければなりません。
毒物劇物取扱責任者を置かなければならないケース
こうした毒物や劇物を製造・輸入・販売する事業者は、保健所に届け出て、専任の毒物劇物取扱責任者を置く必要があります。
毒物劇物取扱責任者は、毒物や劇物が人体に害を引き起こさないように、保管管理や盗難防止に万全の注意を払い対策を講じなければなりません。
農業と毒物・劇物との関連は
農薬は農業でもっとも身近な毒物・劇物
では、毒物・劇物はどのように農業に関わってくるのでしょうか。
何よりも農業では、農薬の扱いで毒物・劇物と関わることになります。圃場(ほじょう)によっては広大な面積に使用したり、複数回の散布をすることもあります。大量に使用する場合もあるため、扱いには十分な注意が必要です。
使用だけなら毒物劇物取扱責任者を置く必要はない
使用するだけの農家の場合は、毒物劇物取扱責任者を置く必要はありません。
ただし、ラベルに書かれた使用基準を守ったり、手袋やマスクをするなどの防備をしたり、周囲へ配慮して使用時には風向きに気をつけるなどの注意を払ってください。
毒物劇物取扱責任者の資格を取るには
試験は各都道府県で年に1回
毒物劇物取扱責任者の資格を取るには、各都道府県で年に1回、実施される試験に合格する必要があります。
なお、薬剤師や大学の薬学部の卒業生などは、試験を受けなくても毒物劇物取扱責任者の資格を持っています。
その上で事業者に任命されることで、毒物劇物取扱責任者となります。
試験には3つの種別
試験には3つの種別があります。
すべての毒物や劇物を扱える「一般」、農業に関する品目に限られる「農業用品目」、特定の品目に限った「特定品目」です。
受験者はその用途により種別を選ぶことになります。
下表のとおり、「一般」はすべての資格があり、受験者数も多い種別です。
種別ごとの受験料は変わらず、各都道府県では異なりますが、1万円程度です。
販売業 | 製造業 | 輸入業 | 業務上取扱者 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | 農業用品目 | 特定品目 | ||||
一般 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
農業用品目 | × | 〇 | × | × | △ | × |
特定品目 | × | × | 〇 | × | △ | × |
○:資格あり ×:資格なし △:制限あり
試験は、筆記と実地が行われます。筆記試験では毒物や劇物に関する法律の内容や、その性質、取り扱い方法などを問われ、さらに実地試験では識別と取り扱い方法の試験が行われます。
筆記試験は、各都道府県で問題数やマークシートの選択肢の数が異なるなど、違いがあります。なお、それぞれの地域の過去問題は、試験案内のウェブページなどで見られますので、確認して対策をとるといいでしょう。
受験資格
試験を受けるには、学歴や年齢、経験は問われません。
ただし、合格しても次に当てはまる場合は毒物劇物取扱責任者になれません。
・18歳未満の者
・心身の障害により毒物劇物取扱責任者の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
・麻薬、大麻、あへんまたは覚せい剤の中毒者
・毒物もしくは劇物または薬事に関する罪を犯し、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して3年を経過していない者
農業大学校での取得
毒物劇物取扱責任者の資格は、農業大学校でも取得を目指すことができます。
農業大学校だからといって、「農業用品目」の試験に限るわけではなく、「一般」の試験についても対策ができます。学校ごとに支援体制は異なりますが、講習なども行われています。
受験を検討している人は、入学したい農業大学校のウェブサイトなどから、調べてみるといいでしょう。
安全な使用のために
毒物や劇物は扱いを間違えると、人体にも悪影響を及ぼします。毒物劇物取扱責任者の資格の有無に関わらず、十分な注意を払って扱いましょう。