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人気の有機肥料「鶏ふん」の使い方と特徴 堆肥活用のカギは「地産地消」

人気の有機肥料「鶏ふん」の使い方と特徴 堆肥活用のカギは「地産地消」

安価で速効性のある有機肥料として、農業から趣味のガーデニングまで広く使われる「鶏ふん」。成分の特徴や、牛ふんや豚ぷんといった他の堆肥(たいひ)との違い、プロに聞いた正しい使い方や製造過程などをお伝えします。

鶏ふんの成分とは?

鶏ふんは、牛ふんや豚ぷんなどと比べ、三大栄養素(窒素・リン酸・カリウム)の含有量が多く、肥料の効きが早い(=速効性がある)とされています。成分のバランスに優れ、比較的安価で手に入るため、元肥・追肥の両方に利用できます。

C/N比とは?

肥料の特徴を表す指標の一つに、「C/N比(シーエヌひ=炭素率)」があります。たとえば、ある有機物に炭素(C)が100グラム、窒素(N)が10グラム含まれている場合のC/N比は「10」になります。

C/N比が低い、つまり炭素が少なく窒素(N)の割合が多い堆肥は、肥料効果は高い一方で、土壌病害の発生を抑えるための土壌改良効果が乏しいと特徴づけられます。逆にC/N比が高い、つまり炭素が多く窒素が少ない堆肥は、肥料効果は低いが土壌改良効果が高いという特徴を持ちます。炭素を分解するために微生物が活発に活動するため、土の団粒化が進み保水性の高いフカフカな土が作れます。一方で、微生物が必要とする窒素が不足し、成長不良につながりやすいともいわれます。

炭素分は、ワラや落ち葉などの植物質を主原料とする堆肥に多く含まれます。反対に、窒素はたんぱく質の主要構成要素で、動物質を主な原料とする堆肥に多く含まれます。鶏ふんは一般的にC/N比が低いとされます。

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鶏ふんが向いている野菜と施肥方法


また、鶏ふんには石灰が多く含まれており、石灰の節減効果が期待できます。ただし入れすぎると、土壌のカルシウム過多を招きます。
土壌分析を行い圃場(ほじょう)の地力を知った上で、勘ではなく、数字に基づいた適切な肥料設計を行うことが大切です」と話すのは、国内最大級の養鶏場を運営し、鶏ふんを使った堆肥の製造・販売事業も手がける株式会社愛鶏園の取締役生産部部長、上野竹生(うえの・たけお)さんです。

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「鶏ふんに向いているのは、葉ものや実ものなど、成長に多くの肥料成分を必要とする野菜です。使ってくださる方には、植え付けや種まきの4週間ほど前に土に混ぜ込むという方法をお伝えしています」(上野さん)

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「処理ではなく、資材づくり」。堆肥作りの現場から

では鶏ふん肥料は、どのように生産されているのでしょうか。
上野さんら愛鶏園では、埼玉と茨城の2拠点で230万羽の鶏をヒナから飼育し採卵、消費者や飲食店向けに卵を販売しています。分業が一般的な養鶏界で、ヒナの養育から卵の販売まで一貫して一社で行うのは、全国に約2000戸の養鶏農家がある中でわずか5社程度とされています。

「当社では毎日、総計230トンの鶏ふんを排出しています。採卵鶏が卵を産む確率を表す『産卵率』は、週齢(※)により異なります。
しかし、『鶏ふんの排出率』という指標があるとすると、こちらは一年を通して100%です。必ず出る鶏ふんをどのように扱うかは、社にとって大きな課題で、解決策を求めてうんと悩みました」と上野さんは振り返ります。

(※)鶏は年齢ではなく、日齢、週齢で数える

かつては不法に廃棄してしまう業者も少なくなかったといいます。周辺環境を汚染せずに家畜の排せつ物の活用を推進する目的で、1999年に「家畜排せつ物法」が成立するなど、2000年代にはふん尿の活用方法に社会の関心が集まり始めていました。愛鶏園も有機循環型農業を目指し、2011年から堆肥事業を開始しました。

「目的を『ふん尿の処理』にしてしまうと、『その場からなくす』ことばかり考えてしまう。そうではなく、農業に必要な『資材づくり』として向き合いました」(上野さん)。栄養素の配合や発酵の方法を試行錯誤しながら、商品開発に5年の歳月を掛けたといいます。

健康管理を徹底し、「健全な鶏から健全な鶏糞を産出させ」、原料にこだわり有機JAS認証(※)を取得したりと、安全面にもこだわりました。

※ 一般社団法人有機JAS資材評価協議会による認証

愛鶏園について

創業者の齋藤虎松さん。採卵養鶏家として初めて黄綬褒章を受章

愛鶏園は1925年創業。創業者の齋藤虎松(さいとう・とらまつ)さんが、結核療養のために卵で栄養をつけようと、10羽の鶏を育てたことが始まりです。

1925(大正14)年当時の物価で、鶏卵1個はコメ30キロと同額の8銭という高級品。病から立ち直った虎松さんは、「栄養豊かな卵を、誰もがいつでも安心して食べられるようにしたい」と、当時としては珍しい専業の養鶏業を立ち上げました。それまでは農家が軒先で数羽を放し飼いする方法が主流でしたが、ベルトコンベアーを内蔵した鶏舎で、多羽をケージ飼いして配合飼料を与えるという工業的な養鶏を先駆けて始め、規模拡大を続けてきました。

カギは堆肥の地産地消

大型の堆肥舎で堆肥を攪拌する過程

大型の堆肥舎で堆肥を攪拌する過程

愛鶏園では、鶏舎から集めた鶏ふんを大型の堆肥舎に集め、炭素分である国産木材を加えて攪拌(かくはん)します。発酵温度を管理しながら、3カ月程度を掛けて発酵させます。有用微生物群(EM)の力で発酵が進むと、放出される熱により堆肥舎内の温度は最高で75度まで上がります。ここで十分に発酵させることで、鶏ふん独特の臭いを軽減させます。

発酵の状態を見ながら、職人が何度も切り返し作業をし二次発酵まで行います。水分量20%を目安に乾燥させ、「みのり有機」というぼかし肥料として販売します。

「みのり有機」は従来の発酵鶏ふん肥料よりC/N比が高く、肥料効果と土壌改良効果を併せ持ちます。また、病害虫を防ぐとされる「放線菌」が豊富、海藻を濃縮させたエキスを加えるため、ミネラル分を多く含むといった特長があります。

愛菜華

「みのり有機」をさらに熟成させたものは「さざん華」「愛菜華」という商品名で、関東圏のホームセンターで販売しています。

近隣の農家に対しては、圃場まで配送し、専用車のマニュアスプレッダーで散布するサービスも行っています。

愛鶏園のロゴが入ったマニュアスプレッダー

堆肥生産事業にとって、「地産地消」は大切なキーワードだといいます。
生産法人での勤務経験もある、生産部みのり有機グループ営業チームの三浦一政(みうら・かずまさ)さんは、「輸送コストが掛かる堆肥事業では、近隣の農家さんに気に入っていただき、使ってもらうことが重要です」と話します。
近年、世界的な穀物の値上がりや農地拡大によって、化学肥料の価格は上昇を続けています。資材のコストを下げるためにも、また地域の自然環境に配慮するという点でも、地元で生産された堆肥をうまく取り入れることは有効です。

「使っていただくために、効果を最重要視している」と話す三浦さん。愛鶏園の堆肥は、地元の野菜・コメ農家からの引き合いが多く、完売状態だという

堆肥生産は収益性が高い事業ではない、と管理部の齋藤孝夫(さいとう・たかお)さんは明かします。「畜産業は近隣住民の理解がないと続けられない。拠点はいずれも農業県にあるので、良い土作りをしてもらうための堆肥を作ることで地域に貢献し、その土で育った作物を養鶏に利用することで、真の有機循環農業を営もうとしています」

堆肥作りを通して地元農家とのネットワークを作り、その声を生かすという、商品作りの面でも好循環を培っている愛鶏園。「排出」ではなく、地域にとって価値の高い成果物の「輩出」を目指す──。そんな心意気を感じました。

(画像提供・取材協力)愛鶏園

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