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人手不足にあえぐ農家の意外な救世主とは。弘前市が副業を解禁した真意

人手不足にあえぐ農家の意外な救世主とは。弘前市が副業を解禁した真意

担い手不足が叫ばれて久しい昨今。特に、労働ピークが集中しやすい果樹栽培では収穫シーズンの人手不足が顕著で、産地維持を揺るがす深刻な課題となっている。こうした問題に歯止めをかけようと、リンゴ産出額全国1位(2019年、農水省調べ)の青森県弘前市はこのほど、市役所職員によるリンゴ園での副業を解禁した。果たして、労働力不足解消の一手となりえるのか。全国共通の難題に立ち向かう、同市の挑戦を伝えたい。

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自治体職員の副業が解禁。職員32人がリンゴ農園へ

「今年は長雨の影響で収穫が遅れるかと思われましたが、若者がアルバイトに来てくれたおかげで、おおむね予定通りに作業を進めることができました」。弘前市で5ヘクタールのリンゴ園を営む小林政貴(こばやし・まさき)さんは収穫のピークを乗り切り、ほっと胸をなでおろした。例年は近隣住民を短期で雇ってきたが、いずれも高齢のため頼める作業が限られたり、リタイアも相次いでいたりと人材的なネックを抱えてきただけに、アルバイトの働きぶりには目を細めていた。

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リンゴの収穫に汗を流す弘前市職員

アルバイトとは、弘前市役所の職員のことだ。地方公務員は本来、業務への支障や便宜供与などへの懸念から、原則として営利目的の副業が禁止されており、これを犯した場合は懲戒処分の対象となる。昨年の例でいうと、神奈川県内の自治体職員が休職中に副業を行ったとして停職6カ月の処分が下されたとの報道が記憶に新しいところだが、同市では2021年10月、市内でのリンゴ生産に限定する形で副業を解禁。職員が休日や終業後の時間を使って働けるよう、独自に兼業要領を策定した。

労働時間は「本業の勤務日は3時間以下」、「1週間で8時間以下」などの制限を設けることで本業への支障を回避。雇用先は、職員との利害関係を精査することで便宜供与の課題もクリアにし、事前に面談を実施することでミスマッチも防いでいる。

「農林業センサス(※)を見ても、管内の高齢化と人手不足は顕著です。直近10年の間にリンゴ農家数は1400近く経営体が減り、平均年齢も10年前の調査時点から2歳上がっている状態。まずは市の職員が少しでも労働力不足の一助になればとの思いから、今回の取り組みが始まりました」。同市りんご課企画推進係長の榊真一(さかき・しんいち)さんは、副業解禁に動いた理由をこう説明する。この言葉通り、背景には果樹の産地特有の根深い課題があった。

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副業解禁の経緯を語る榊さん

※日本の農林業の実態を把握するため、農林水産省が5年ごとに実施する調査。経営体数や従事者数、耕地面積や飼養頭数などのほか、全国の農業集落に関する調査を行う。

産地維持のカギは“補助労働力不足”の解消

高齢化や担い手減が深刻さを増している中、農家の大きな悩みの種が、臨時的な雇用を指す「補助労働力」不足だという。

果樹栽培の多くは手間をかけること(手作業)で品質を保っているのが実情で、他品目と比べて労働集約的な構造となっているほか、収穫をはじめとする短期間に作業ピークが集中する。上のグラフを見てもわかるように、リンゴ栽培の場合は摘果、袋掛けシーズンの6月、収穫シーズンの11月に、年間作業時間の半分に相当する作業が集中している。ほとんどが家族経営のリンゴ農家にとって、この間に補助労働力を確保する必要があることは言うまでもないが、前出の小林さんのように、高齢化等でリタイアする人が相次ぐなど、必要数には届いていないのが現状だった。

同市が管内2393人の生産者に実施したアンケートでは全体の約8割が、向こう10年の労働力不足を懸念しているという結果に。労働力が減れば当然、現在の生産基盤を維持していくことは困難になる。

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今後10年間の補助労働力の確保状況(弘前市調べ)

「来るべき時に備えて対策の仕組みをつくり、なんとしてでも産地を維持したい」(榊さん)。模索を続ける中で光明を見いだしたのが、多様な働き方を求める人材と人手に困る農家を結びつける仕組みづくりだった。副業解禁は、そうした取り組みの一環。事前に実施した意向調査では、249人の職員が「リンゴ農家への副業に参加したい」と回答していたこともあり、2021年秋の収穫シーズンに運用が間に合うよう、急ピッチで兼業基準の策定に動いた。

「本来禁止とされてきた副業を許可するには、市内外に納得してもらえる理由付けが必要ですが、幸い同市はリンゴの一大産地で、地域の経済基盤を支える重要なファクター。人手を求める農家さんの情報も、市がもともと無料職業紹介所を開設していたことから、早々に取りまとめることができました」(榊さん)

本業にも好影響

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