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水田100ヘクタール超を預かるトマト農家 高糖度トマトの生産者と大規模稲作経営体の二つの顔を持つ理由

山口 亮子

ライター:

水田100ヘクタール超を預かるトマト農家 高糖度トマトの生産者と大規模稲作経営体の二つの顔を持つ理由

水田105ヘクタールを耕作するメガファームが徳島県小松島市にある。この有限会社樫山農園、もともとトマト農家で、2ヘクタールのハウスで高糖度トマトを年間200トン生産する能力を持つ。大規模稲作経営体の顔も持つ理由は、代表取締役の樫山直樹(かしやま・なおき)さん(冒頭写真)の「地域を一つの農場として見たい」という思いにあった。

先端技術使い高糖度トマトを生産

徳島市街から国道を南へと車で走ること30分弱、のどかな水田地帯に突如、巨大なハウス群が出現する。ここは樫山農園の本社で、ハウスは光や温度、湿度、二酸化炭素濃度、養液など、さまざまな環境因子を統合的に制御する統合環境制御に対応している。

栽培面積2ヘクタールのうち、1.3ヘクタールは2021年に完成し、同年6月に稼働したばかりだ。ここにはオランダの最新鋭の統合環境制御システムを導入した。システムのデータを確認できるパソコンの管理画面には、さまざまな項目がグラフで表示されている。画面を指し示しながら、樫山さんが「設定項目が1000くらいあって、かなり細かく管理できます」と説明してくれる。

栽培するのは独自ブランドの高糖度トマト「珊瑚樹(さんごじゅ)トマト」だ。糖度8以上のものを非破壊の糖度センサーで選別する。もともと樫山さんの父の博章(ひろあき)さんは、高糖度トマトを一般的なビニールハウスで栽培していた。より質の高いものを量産できる体制を作ろうと、統合環境制御のハウスを導入し、トマトをブランド化したのが実に20年前の2002年。

新設したハウスでは2021年秋に収穫を始めたばかりだ。効率的な選果ができる巨大な選果場も新設、稼働している。

新設したハウスの売上高は、1億2000万円は超えてほしい。それによって、現状2億円くらいの売上高を、3億5000万円くらいにはしたい」と樫山さんは意気込んでいる。

樫山農園のハウス群(提供:有限会社樫山農園)

地域の農地の受け皿に

ハウスを新設したのは、事業の柱はあくまでもトマトだということの決意表明でもある。というのも、売上高に占めるコメの割合がトマトよりも高くなっていたから。2005年に始めた水田の作業受託が拡大する一方だったためだ。

2004年に所有する60アールの水田にトマトの残渣(ざんさ)をすき込んで肥やしにしたところ、周りの農家の目に留まり「うちの田んぼもやってくれないか」と依頼された。以来、作業受託する水田は、毎年少なくとも数ヘクタール増えている。

離農者が増える中、農地の受け皿がないと「環境保全だったり治安維持だったりという、水田の多面的機能が機能しなくなる」と樫山さん。それではいけないと、自ら耕作を引き受けてきた。今では徳島県東部で1000枚超、105ヘクタールを預かる。

水田1枚の広さは平均9アールほどで、樫山さんいわく「飛び地のよう」に水田どうしが離れている分散錯圃(さくほ)の状態だ。営農支援システム「アグリノート」を導入し、圃場(ほじょう)の位置や作業履歴をスマートフォンなどで正確に把握できるようにした。とはいえ「管理がかなり大変なので、今は条件不利地の耕作をお断りしています。それでも農地は年々増えていますね」(樫山さん)。

新設した選果場(提供:有限会社樫山農園)

「地域を一つの農場として見たい」農家をつなぐ組織づくりに注力

農地が増えると、中には隣り合うところも出てきて、あぜを取り払って合筆することもできるのではないか。こう尋ねると、そうはならないとのこと。「田んぼの境界が土のあぜじゃなくてコンクリートでできていて、区画が細切れなまま」というのだ。

土のあぜだと、隣の地権者がだんだんあぜを削ってきて、自分の田んぼが狭くなりかねない。そういうもめごとも実際にあるので、地権者が互いにコンクリで境界を固めてしまったのだ。

「徳島の県民性は、他人と組まない。俺が俺がっていう自己主張と自己顕示欲が強くて、それが一番表れているのが水田」(樫山さん)。個々の農家が分断されている状況を、なんとか変えることはできないか。

「地域を一つの農場として見たい。地域にいる農業者も一つの資源として、組めるところは組んで、競争力を付けていきたい」

樫山さんはこんな思いから、農家をつなぐ組織づくりに注力してきた。まず、中規模のコメ生産者5軒とともにコメの集荷販売会社、株式会社た組を2014年に設立。構成員の持つ面積が計200ヘクタールに達するため、価格交渉に有利になる。さらに、地域のコメの乾燥調製作業を担う会社として、ほのか株式会社を2017年、JA東とくしま(本所・小松島市)とコメ生産者4軒とともに立ち上げた。地域にコメの貯蔵や乾燥調製をするカントリーエレベーターがなかったからだ。また、樫山農園の敷地内にはライスセンターを整備した。

同年、地域の農産物の一次加工や流通を担う会社として、あのか株式会社も設立した。コメやトマト、小松菜、シイタケ、レンコン、鳴門金時などの生産者に加え、製菓会社もメンバーで、本社は製菓会社に置く。農家がカットや乾燥といった一次加工を手掛け、その後の工程は加工のプロに任せ、無理のない6次産業化を実現しようと考えた。生産者が別々にしている営業活動を一本化したり、共同配送で輸送を効率化したりする。

樫山農園の従業員。前列右端が樫山さん、中列左端が博章さん(提供:有限会社樫山農園)

新卒採用に大学生のインターン募集も

組織づくりのほかに、地域のコメ生産者との助け合いが、自然に生まれている。樫山農園には農機や施設がそろっている一方で、稲作を担当する従業員が限られ、水管理や草刈りといった管理作業を自前で賄いきれない。

「その部分を個人経営の農家に委託しています。持ちつ持たれつで、地域の農地が回ればいいなと」(樫山さん)

樫山農園の従業員は41人、平均年齢は31.9歳と若い。大卒者の新卒採用もしている。農業の魅力を知ってもらい、就職先の選択肢に加えてもらいたいと、大学生を対象にしたインターンも募集してきた。

20年後のビジョンとして掲げるのは、売上高100億円の達成。耕種農業では、未踏の領域だ。

「若い人が、後に続こうと思ってくれる農業をしたい」

そう語った樫山さん。新設したハウスを足掛かりに、さらなる高みを目指している。

独自ブランドの珊瑚樹トマト

樫山農園
https://kashiyama-farms.com/

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