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環境保全型農業実証事業『Green‐Agri Challenge KYOTO』2021年度成果報告

環境保全型農業実証事業『Green‐Agri Challenge KYOTO』2021年度成果報告

京都市では、農業を未来へつなぐために、環境にやさしい都市型農業の構築に向け、2021年度から環境保全型農業実証事業『Green-Agri Challenge KYOTO』をスタートしました。環境負荷を軽減しながら生産性や付加価値を高める「環境保全型農業」を推進するにあたり、最大3年間で化学合成農薬・化学肥料を慣行レベルから5割削減する取組や、その際に生じる収量減少や労働力増加等を解決し得るアイデアを公募。提案が採択された3事業者の取組をご紹介します。

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◆嵯峨地域農場づくり協議会

    嵯峨地域農場づくり協議会
    https://www.facebook.com/KyotoSagaSustainableFarmCreatingCouncil/

    【実証品目】 水稲
    竹チップの発酵堆肥、象糞堆肥、超高温堆肥及びラクト・ゼリーの使用により、水稲栽培における化学合成農薬・化学肥料の削減を目指す。また、収量や食味に与える効果も検証する。

歴史的風土特別保存地区にも指定されている京都市右京区の嵯峨地域で、「稲穂たなびく景観の保全」や「生物多様性(トンボ類、ゲンゴロウ類、ホタルなど)の再生」に取り組んでいるのが、嵯峨地域農場づくり協議会です。

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協議会では、数年前から減農薬・減化学肥料による米づくりを推進しており、栽培したお米を『古今嵯峨米(ここんさがまい)』と銘打ち、“環境にやさしく、おいしいお米”としてブランド化を図っています。

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実証事業(実施面積約2ha)では、14軒の農家と連携し、地域バイオマス堆肥などを活用し、化学合成農薬・化学肥料の5割削減を目指しています。堆肥には、嵯峨地域の竹林整備で出た竹を活用した「竹チップの発酵堆肥」や、竹の枝葉を京都市動物園の象にえさとして与え、その糞を原料とした「象糞堆肥」を使うなど、地域資源が有効活用されています。

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更に市販の下水道汚泥と生ゴミを発酵させた「超高温堆肥(YM堆肥)」や乳酸菌を海藻類でゲル状にした「ラクト・ゼリー」を用いることで土壌内の有効菌の種類を増やし、地力を高める取組を行っています。

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ブランド化を目指している『古今嵯峨米』は、2021年産の品質検査で一等の評価を受け、また、タンパク質や食味スコアでも2020年より食味が向上しているという結果が出ています。

測定対象 2020年
(慣行)
2021年 備考
タンパク質 9.9% 8.4% 望ましい値【8.5%以下】
食味スコア 61 70 望ましい値【70以上】

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今後は、日本有数の観光地である嵯峨・嵐山地域の料亭などに広めることを目指し、環境保全型農業を軸にお米の高付加価値化と地域の活性化に引き続き取り組んでいきます。

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◆株式会社カルテック

    株式会社カルテック
    〒669-2431兵庫県丹波篠山市郡家87-10
    https://caltec.jp/

    【実証品目】 トマト・九条ねぎ・みず菜・いちご
    土壌中に不足しがちなカルシウムや発酵資材等の投入により、微生物を活性化させ、根がしっかりした、病気等に強い農作物づくりを目指す。実証区では、余分な肥料をできるだけ省き、対照区との収量や食味等を比較する。

株式会社カルテックは1977年の創業以来、肥料の3要素と呼ばれる「窒素・リン酸・カリ」を足し算的に施用する方法ではなく、「カルシウム供給」・「土壌の微生物」・「根の働き」を重視する『カルテック栽培』の普及に取り組んでいます。

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初年度の実証は3軒の農家の協力を得て、トマト・九条ねぎ・みす菜・いちごの比較栽培を実施。土壌pH(酸性度=土壌のバランス)と土壌EC(電気伝導度=肥料や塩分濃度の指標)を測定し、農地の状況や栽培する作物に合わせた対策を行いました。

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中玉トマトの実証区(左)と対照区(右)

協力農家が既に化学合成農薬や化学肥料の5割以上の削減に取り組んでいたことから、『カルテック栽培』を実践することで「収量の増加」や「食味・品質の向上」を目指すとともに、余分な肥料を減らし「コストや手間の削減」につなげることにも取り組みました。

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実証区では樹勢が上がり、トマトの根が通路まで

8月末に定植した中玉トマト(無加温)の実証区では、収穫量が約1.2倍になりました。従来使用していた有機物肥料をカルテック資材に置き換えたことで、カルシウムによる徒長抑制が見られ、誘引作業などの管理面での省力効果がありました。また、食味の面では実証区のトマトの方が、甘みが強いという分析結果が得られ、味と作物の病気や収穫後の日持ちなどに影響する硝酸態窒素の量にも改善が見られました。

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一方、みず菜では1株当たりの大きさ(重量)が約1.4倍となり、収穫量の増加が認められました。これにより袋詰めする際の株数を減らすことができ、作業の軽減にもつながりました。今後、カルテック農法を継続することで、更に土壌環境が改善され、カルシウムの効果が大きくなると見込んでいます。

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品目:中玉トマト

実証区 対照区
結果 収量:600個/57株(10.5個/株)
果糖:1.74g/100g
硝酸態窒素:0.12mg/100g
収量:492個/54株(9.1個/株)
果糖:1.66g/100g
硝酸態窒素:0.35mg/100g

品目:みず菜

実証区 対照区
結果 1株当たりの重量平均:31.3g(13本計測) 1株当たりの重量平均:22.0g(16本計測)

 

◆国土防災技術株式会社

    国土防災技術株式会社
    〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目18番5号
    https://www.jce.co.jp/fujimin

    【実証品目】 花菜・すぐき菜・九条ねぎ
    土壌への散布により、肥料吸収の効率化や土壌の団粒化促進等の効果が期待できる、高濃度フルボ酸植物活性剤(商品名:フジミン®)の使用により、対照区との肥料・農薬の使用量や農産物の収量・品質等を比較する。

国土防災技術株式会社は、自社開発した高濃度フルボ酸植物活性剤『フジミン®(JASOM-160101)』を使用し、実証に取り組みました。

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フルボ酸には、土壌中のミネラルを植物が吸収しやすい状態にして運ぶ働きがあり、これをキレート効果といいます。この効果によって植物が肥料分を吸収しやすくなるだけでなく、土壌の緩衝作用によって急激なpHの変動の抑制や団粒化を促進する効果が期待できます。

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初年度の実証では3軒の協力農家とともに、花菜・すぐき菜・九条ねぎを対象に『フジミン®』を散布する実証区と散布しない対照区での「土壌環境の変化」や「収量と品質の変化」などを検証しました。

特に良好な結果が得られたのはすぐき菜で、作物の肥大化が認められ、収量でも前年度を上回りました(50カゴ⇒53カゴ/10a当たり)。

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栄養成分分析では、基本的な項目で実証区と対照区において大きな差は出なかったものの、実証区のすぐき菜の方がβ-カロテン(ビタミンA)やアミノ酸成分(アスパラギン・プロリン・アラニン)が高い結果となりました。

品目:すぐき菜

毎週散布 隔週散布 無散布
10個当たりの重量[単位㎏] 12.9 17.2 11.0
根の太さ(周囲長さ)[単位cm] 37.3 40.9 33.5
毎週散布 隔週散布 無散布
β-カロテン[単位μg/100g] 593 410 469
アスパラギン[単位mg/100g] 18 16 11
プロリン[単位mg/100g] 21 21 13
アラニン[単位mg/100g] 19 16 15

更に実証栽培の前後(9月・11月)に行った土壌分析の結果からは、リン酸、カルシウム及びマグネシウムの数値が実証区の収穫後では大きく低下するなど、フルボ酸のキレート効果によって肥料成分が効率よく作物に吸収されたことがうかがえ、肥料の削減や連作障害の抑制などにもつながることが分かりました。

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栽培前後の土壌分析の結果

また、協力農家からは液体の『フジミン®』よりもペレット状の『フジミンForest』(フジミンとコンポスト資材を混合して石膏で固めた植物活性剤)の方が、「作業が一回で済み、散布作業の負担が無く、効果も大きい」という意見がありました。

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フジミンForest


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