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農垢界の大御所! フォロワー1万超トマト農家のTwitter活用術【農垢の素顔#6 あつトマ】

熊谷 拓也

ライター:

連載企画:農垢の素顔

農垢界の大御所! フォロワー1万超トマト農家のTwitter活用術【農垢の素顔#6 あつトマ】

農家のTwitterアカウント(略して「農垢(あか)」)の中で、1万人を超すフォロワーがいるアカウント(通称「万垢」)は“大御所”の部類に入ります。愛知県渥美半島でミニトマトを生産する「あつトマ」さんも、その一人。農家としての発信力を高めるために始めたTwitterですが、目指すものはその先にあると言います。5月の大型連休中もせっせと働くあつトマさんのもとを訪ね、話を聞きました。


あつトマ@渥美半島とまとランドのトマト王子🍅ミニトマト専門農家👨‍🌾農カードの言い出しっぺ(@atsumichantomat)
愛知県田原市でオリジナルブランド「あつみちゃんトマト」を生産する32歳。「生産者と消費者の距離を近づける」ことを自身のテーマとしており、2021年12月、より多くの人に親しまれる農園にしたいと「おがわ農園」から「渥美半島とまとランド」へと名称変更した。王子認定協会(@oji_nintei_org)公認の「トマト王子」。本名は、小川浩康(おがわ・ひろやす)さん。Twitterのフォロワー(2022年6月1日時点)は1.2万人に上る。

渥美半島を背負って農業を盛り上げる

あつみちゃんトマトのバックプリントのTシャツ

あつみちゃんトマトのバックプリントのTシャツが仕事着。腕の日よけカバーを含め、トマトカラーのトータルコーディネートになっている

年間を通して温暖な気候に恵まれていることから「常春(とこはる)」とも言われる愛知県渥美半島・田原市。全国市町村別農業産出額ランキングではトップスリーに入る常連で、2020年は全国約1700自治体の中でなんと2位! キャベツをはじめとした露地栽培に電照菊などの施設栽培、さらには畜産と、盛んに農業が営まれている地域です。

田原市は、伊勢湾を挟んで対岸に位置する三重県鳥羽市とフェリーで結ばれていて、休日には大勢の観光客が訪れます。そんな地域で「渥美半島」の名を背負って地元農業を盛り上げようと取り組んでいるのが、今回の主人公である「あつトマ」さん。取材当日は完熟のミニトマトを思わせる真っ赤なTシャツに、トマトのへたを連想させる緑色のスカーフを巻いて、待ち合わせの場所に現れました。弾けるような笑顔は、ポーズを決めて微笑みかけるTwitterのアイコンと同じそれでした。

農業用ハウスが6棟建ち並ぶ、近くの仕事場へと案内されました。あつトマさんの農場「渥美半島とまとランド」をGoogleマップで検索すると、高い評価の口コミが並んでいます。「こちらのトマトの大ファンです!」「うまみが凝縮されている印象で、ミニトマト本来の味を楽しめる」等々。取材の下調べの際にこれらの投稿を見ていたので、実際に現地を訪れるのが楽しみでした。

あつトマさんはここでミニトマトを栽培しています。グルタミン酸が含まれるトマトのうまみを引き出すために、だしを加えて養液栽培しているというユニークな商品です。「あつみちゃんトマト」はそのブランド名で、Twitterのアカウント名はその略称というわけです。

本連載「農垢の素顔」はこれで6回目。Twitterで人気の農家を取り上げてきましたが、中でもあつトマさんのフォロワー数は群を抜いています。人気の秘訣(ひけつ)をあつトマさんに単刀直入に尋ねると、Twitterと向き合う真剣な思いを明かしてくれました。

農業産出額「5年連続1位」のまちに生まれて

渥美半島とまとランドのハウスで育つミニトマト

あつトマさんが育てるミニトマト。ブドウの房を思わせるほど、ぎっしりと実がなっている

あつトマさんは就農7年目。もとは、農業資材を扱う愛知県の会社に勤め、田原市を拠点に農家相手の営業の仕事をしていました。その後、2016年に親元で就農。今も農園の責任者は父親ですが、自身も積極的に経営に携わっています。

具体的には、管理が行き届いていなかったハウスの生産性向上を狙い、約33アールあった栽培面積を20%ほど減らすという思い切った決断を下しました。生産量が落ち込むことが心配されましたが、結果的に面積あたりの収量は2倍以上に増加。「農家さんの所へ通い詰めて学んだ前職の経験を生かせている」とあつトマさんは言います。

あつトマさんがTwitterを始めたきっかけも、前職の経験と関係しています。田原市は前述の通り、日本有数の「農業のまち」。あつトマさんによれば、2018年までは5年連続で1位という快挙を成し遂げました。けれど、その割に農業関係者の中でもその事実は知られておらず、当事者である地元農家も「農業は休みもないし儲からない。家を継ぐのはやめておいた方がいい」と話したそうです。あつトマさんはそのことを悔しく思い、「自分が農業のプレーヤーになり、地元から日本の農業を盛り上げたい」と考えるようになったと言います。

就農してからの目標は、「農業と関わりのない人が『農家といえば、あつトマ』と言ってくれるようになること」。それを実現するには、おいしいミニトマトを作るのはもちろんのこと、広く消費者とつながる必要があります。Twitterはそれをかなえるための一つの手段でした。

フォロワー数には2019年3月にTwitterを始めた当初からこだわりがありました。「自分の存在と商品を知ってもらわないと始まらない」と考え、実行に移したのがミニトマトのプレゼント企画です。

農業に無関心な人に届ける仕掛け

ミニトマトの誘引作業をするあつトマさん

7〜8月に定植して翌年の6〜7月まで収穫する。甘くて大きな実を作るには日々の作業が欠かせない

プレゼント企画とは、自身のアカウントをフォロー&投稿をリツイートしてもらうことを参加条件とし、抽選で当選した人にプレゼントを贈るというものです。この企画を定期的に開催することで、フォロワーがフォロワーを呼び、通常ではつながることのできないお客さんとつながることができます。しかもプレゼントする商品は、自園で作っているミニトマト。農家にとってはまさにうってつけの作戦です。

あつトマさんのフォロワーは、短期間に急速に増えていきました。しかしこの企画は、「フォロワーを獲得するためだけのものではない」と、あつトマさんは付け加えます。プレゼントを受け取ったフォロワーは「あつトマさんのミニトマトが届きました! おいしかったです」といった口コミを残してくれるのです。これは自発的な投稿であるためコントロールすることはできませんが、こちらからお願いせずにリアルな感想をツイートしてもらえることがポイントです。第三者からの「おいしい」という評判が積み重なることで、農園そのものの評価が高まっていくからです。

フォロワー獲得の仕掛けはこれだけではありません。第2弾の企画として始めたのが、クイズ形式の「収穫予想」です。写真に写った緑色の果房が、食べ頃の果実になって収穫される日を予想するというもので、「#あつトマの収穫予想」のハッシュタグを付けてコメント付きでリツイートするだけで参加できます。参加者には予想が的中した場合、抽選でミニトマトが贈られます。

花が咲き、受粉を経て実が大きくなり、収穫を迎えるまでの過程を、あつトマさんはその後もTwitterで投稿します。参加者は一連のツイートを見ているだけで、自然とミニトマトが食卓に届くまでの知識を得ることができます。

農業に関心のない人に対して自身の存在を知ってもらうためには、プレゼント企画は大変効果的でした。しかし当然ながら、その大半はミニトマト目当てでフォローしているにすぎません。そこから農業に対する興味を引き出すにはどうしたらいいか……。そう考えた末の次なる一手でした。

消費者とつながり野菜の価値を高める

取材に応じるあつトマこと小川浩康さん

日頃からTwitterのスペース機能を使ってフォロワーと雑談をしている。「仕事の時間は孤独。だからついTwitterを開いてしまう」とか

「生産者と消費者をつなげる役割を担いたい」。あつトマさんがこう考えるのには、「消費者にもっと野菜のことを知ってもらわないと、生産者が手間をかけて育てた野菜の価値が正しく評価されない」という問題意識があります。

「例えば、スーパーで1パック200円のミニトマトが売られていたとして、仮に1週間で収穫できると消費者が考えていたら、『高い』と思うかもしれません。でも実際には、収穫までに1カ月以上、長い時には2カ月以上の期間を費やします。野菜が育ち、店頭に並ぶまでの過程に目を向けてもらえたら、野菜そのものの価値が上がるんじゃないかと思うんです」(あつトマさん)

渥美半島とまとランドでは、日曜に収穫体験を行っています。あまりメジャーではない「ミニトマト狩り」ですが、方法にもあつトマさんらしい仕掛けがあります。それは、クイズを解きながらミニトマトの豆知識について学べる内容になっているという点です。学びながら農業体験できることから、家族連れなどに好評です。

そして、あつトマさんのTwitter企画は、すでに第3弾に突入しています。

トマトは夏の野菜。気温が高い季節になるにつれて、産地での生産量が増え、それにつれて価格も落ちていきます。野菜の相場は需要と供給のバランスで決まるので、仕方のないことですが、それを上回る消費を喚起するにはどうしたらいいか。あつトマさんが出した解決策は、みんなでトマト料理の画像をシェアすることでした。

あつトマさんが国別のトマトの摂取量のデータを確認したところ、日本人1人当たりのトマト摂取量は10キロで、世界平均18キロと比べてもかなり少ない数字でした。そこでトマトの摂取量が多い他の国のように、日本でもトマト料理の文化をもっと普及させたいと考えたのです。そこであつトマさんは「#トマト料理企画」のハッシュタグをつけた画像の投稿を呼びかけました。

Twitterで「#トマト料理企画」を検索すると、おいしそうなトマト料理の画像が出てきます。そうした投稿のコメント欄をのぞいてみると、「おいしそうです」「うちでもやってみます」と、フォロワー同士の交流が生まれている様子も見られました。

あつトマさんは近頃、音声で会話できるTwitterのスペース機能を活用し、フォロワーと雑談しているとのこと。「Twitterの中であれば、人と人の関係性を築くことができる。作り手と買い手という関係性を完全に超えているんです」

生産者と消費者をつなぎ、農業を盛り上げていく──。あつトマさんが掲げる目標への歩みは確実に前へ進んでいます。

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