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続く、災害級酷暑! 「日本一小さい農家」が教える夏の乗り切り方【ゼロからはじめる独立農家#32】

西田 栄喜

ライター:

連載企画:ゼロからはじめる独立農家

続く、災害級酷暑! 「日本一小さい農家」が教える夏の乗り切り方【ゼロからはじめる独立農家#32】

農家をはじめとした自営業者にとって、一番の資本は自分の体と健康。そう分かっていても、つい無理をしてしまいます。しかし、近年の猛暑は命にかかわります。温暖化の影響で、これまで作っていた作物が熱にやられてしまうというケースも珍しくありません。本稿では、近年厳しさを増す夏の暑さへの対策と乗り切り方について、「自称・日本一小さい農家」の筆者がお伝えします。

温暖化の実感

私は1999年に結婚し、2000年に農業で起業、2001年に自宅兼加工場兼店舗を建てました。石川県の海沿いの町に位置し、四方から風が入るということで当初はエアコンの設置はなし。夏場の加工仕事も、扇風機があれば大丈夫でした。

ところが年々気温が高くなってきて、今や加工場には3台のエアコンがあります。野菜セットの発送も、クール便の利用は6月から9月の4カ月間でしたが、今では5月頭から10月中頃まで必要に。クール便のコストは経営に直接影響してきますが、品質管理の面から常温便では怖くて送れなくなりました。

特に影響が顕著なのが7月、8月の真夏。露地栽培では、秋用にまいたニンジンが発芽はしても小さい芽のうちに暑さで枯れる事態も多発。ハウスの中でも熱がこもり、換気をしっかりしないとキュウリやトマトの新芽が焼けて枯れることもありました。

以前は7月の野菜セットの中の葉野菜として、水菜やリーフレタスなどを入れることができたのですが、最近では暑さによる発芽率の低下などから水菜やリーフレタスはあきらめて、暑さに強いモロヘイヤ、ツルムラサキ、空心菜などを中心に育てることにしました。

夏の葉野菜。モロヘイヤ、空心菜、ツルムラサキ

こうした温暖化や酷暑によって、育てるのが難しくなった作物は少なくないですが、逆に育てやすくなった作物もあり、決して悪いことばかりではありません。少なくとも、私自身は働き方を工夫するようになったという面もあります。

小さい農家、夏の働き方

我が菜園生活 風来(ふうらい)は加工場のすぐ後ろが畑。何かあってもすぐに帰ってこられるとの油断もあって、これまでは酷暑の実感はあっても、畑仕事の内容自体を変えることはしてきませんでした。ところがある年の7月、秋野菜の準備に畑で片付け仕事をしている時に軽いめまいと頭痛が襲ってきました。前日の深酒のせいかなと思っていたのですが、とりあえず室内に戻り水分補給。ネットで調べると、熱中症の初期症状だったことが分かりました。まさか自分が熱中症になるとは思っていなかったのですが、そのことがキッカケで気をつけるように。畑仕事のやり方もガラッと変わりました。

まず、畑に出るのは基本的に早朝と夕方に。7月はトマトやキュウリ、ナスなど実野菜の管理作業が多いのですが、収穫時に整枝や誘引(茎や葉を支柱やネットに固定する作業)ができるようにその道具も収穫カゴと一緒に持っていき、収穫と同時に作業することにしました。収穫の時間は以前より多くかかるようになり、予定が後ろ倒しになることもありましたが、発送作業は室内のクーラーが効いた部屋ですので安心してできます。

朝のうちに誘引したトマト

午後の畑仕事は夕方からで、基本的に16時以降からとしました。夏の時期は日暮れまで時間があります。何より涼しい中で作業に当たれるので効率が上がります。

それでも8月は秋冬野菜の準備の時期で畑の入れ替えなど多くの作業があり、予定が遅れている時は昼でも畑に出る必要があります。その時は管理機を使った作業などあまり体力を使わない仕事をするようにしました。クワを使うなどのかなり体力を使う仕事は、朝・夕に集中して行うように。そのことで精神的にも楽になり、また先を考えることで段取りもよくなりました。

ともあれ、酷暑の時は畑に出ないのが一番。朝は早めにでるけど、昼寝、昼休憩はたっぷり。明るい時に休むのは気が引けますが、酷暑は大雨と同じ自然災害と考えるようになりました。冒頭にも書きましたが、自営業者は自分の体が一番の資本。「畑に出ないのも畑仕事」と割り切りましょう。

百姓的農業で夏を乗り切る

酷暑への一番の対策は畑に出ないこと。風来でそれができているのは「百姓的」にいろいろな仕事をしているからこそです。

「百姓」には、百の仕事ができるという意味があると考えています。農家の加工というと餅やタクアンなどを冬の農閑期にまとめて加工というイメージがありますが、私は酷暑の夏こそ室内でできる加工仕事を増やすべきだと考えます。

以前の記事でも書きましたが、少量多品種農家は夏場に「玄米・野菜低温貯蔵庫」が必須となってきますし、さらに百姓的に6次産業化も視野に入れるのであれば冷凍ストッカー(冷凍庫の大きいもの)があると便利です。

あると便利な冷凍ストッカー。夏はトマト、冬は米こうじと一年中活躍

野菜を日持ちさせる方法としてはキュウリ、ナスなど漬物の下漬け(塩漬け)もやれば簡単なのですが、体力が奪われる夏は、そのちょっとがおっくうに。冷凍や冷蔵で日持ちさせられると心に余裕が生まれ、そのことで安売りしなくてもよくなります。また、加工仕事もあわてずできます。余裕があることは大切です。

冷凍ストッカーの使い方としておすすめなのがトマトの豊作対策です。風来ではとれすぎたトマトはトマトソースやトマトジュースにします。そのまま袋詰めして販売することもありますが、イベント販売でのカレーやスープの材料として活用しています。このトマト加工も時間がかかるので、夏場にやるのは大変。そこでとれすぎたトマトはそのまま冷凍ストッカーで保存。秋になって余裕がある時に自然解凍してから加工します。コツとしては冷凍する前にトマトのヘタは取っておくこと。一度凍らせると取るのがホント大変です。

冷凍庫があると熱中症対策にもなります。冷凍庫に凍っても硬くならない小さめの保冷剤をストック。昼に畑に出る時はこれをタオルで巻いて首にかけ、首の後ろを冷やすようにしていました。血管の集まる首の後ろを冷やすことで体温上昇を抑えることができます。ただ問題は、食品衛生の観点から一度使ったものを冷凍庫に戻すわけにもいかず、破棄しなければならないということ。ちょっともったいない気もしますが、まとめて購入すると高くはないのでトータル的に考えています。

夏場は塩味の強い漬物の売れ行きが減り、生野菜のサラダの販売が増える傾向があると実感していますが、ピクルスは下漬けしないため塩分が少なくさっぱりしているので夏場に好まれます。夏の加工品としてピクルスはいいのではないかと感じています。

酷暑の夏は無理に外に出ず体力温存。その上で時間を無駄にせず、「中仕事」を増やす。そうすることで売り上げアップにつながることも。酷暑を含め、これからますます自然災害が増えてくることが予想されます。その対策として普段から仕事を分散することを考えておきましょう。

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