参加メンバーはこちら
たけもと農場代表 竹本彰吾(たけもと・しょうご)さん
39歳。石川県能美市在住。
大型稲作農家(50ヘクタール)。JA出荷のほか、ネット販売にも力を入れる。イタリア米、スペイン米などの変わった品種も育てている。
竹本さんが配信するポッドキャスト「青いTシャツ24時」
山ノ上農園代表 山ノ上慎吾(やまのうえ・しんご)さん
37歳。宮崎県宮崎市在住。
JA出荷を主とするキュウリ農家。家族経営。自らロジカルファーミングゴリラと語るスマート農業の先駆者。
山ノ上さんが配信するポッドキャスト「農業 タノしきラジオ」
佐藤文紀(さとう・ふみのり)さん
37歳。静岡県富士宮市在住。
イチゴとブドウを栽培する新規就農者。2020年に独立就農。「いちごとぶどうで家族が1日過ごせる農園」を目標に、ブドウの観光農園の開園を目指して目下奮闘中。
佐藤さんが配信するポッドキャスト「大人の社会科見学 223号(ふじさんごう)」
筆者:菜園生活風来(ふうらい)代表 西田栄喜(にした・えいき)
53歳。石川県能美市在住。
自称日本一小さい農家。家族経営の少量多品種栽培で直売を行っている。
ポッドキャスト「ゼロからはじめる独立農家~命の時代に向けて~」
農とポッドキャストの相性
ポッドキャスト(Podcast)とはインターネットで音声データを配信するサービスで、インターネットラジオのひとつとされています。2020年は日本のポッドキャスト元年とも言われ、その頃から多くの番組ができました。農家が配信する通称「農系ポッドキャスト」も増加中。毎月1日を「農系ポッドキャストの日」として、農系ポッドキャスター達が一斉配信したり、番組同士のコラボなどで農業の魅力発信に力を入れています。
西田(筆者)
皆さんがポッドキャストをやりはじめたきっかけは何だったのでしょうか。
教師を退職し2年の研修期間を経て2020年に独立就農したのですが、農業界のことが知りたくて、研修時代に「ノウカノタネ」というポッドキャストを聴きはじめました。実際に農家になる時に多くの人と知り合いたいと思い、それなら自分でポッドキャストを配信するのもありだなと考え、酪農家、野菜農家、果物農家、料理研究家の仲間4人で「牧場と畑とキッチンをつなぐ」をテーマに「農道223(ふじさん)号」という番組をスタートしました。
その後、「農業テーマパークを作ろう」という番組もはじめています。
佐藤さん
4Hクラブの会長をしてる時から後輩に何か残していきたいなと思ってて、農家にはすごい人がたくさんいるので、自分だけでなくそんな人の紹介もできればと、いろいろなスタイルで配信しています。
竹本さん
これまでは農作業を少しでも楽しくしようとラジオを聴いてたんですが、電波状況によって音が悪くなったりしてました。ですがポッドキャストならスマホがあればクリアな音声で聴けるので、そちらを聴くようになりました。実は6年前に自分でも何か配信してみようと思ったんですが、編集が大変で断念したんです。
そんな中「ノウカノタネ」にゲストで出たら楽しくて、その時にアンカーというツールの存在も知って、そこから重く考えずにとりあえずやってみようと配信しました。今は編集作業にどっぷりつかってます。
また、ポッドキャストの配信サービスがあるSpotify(スポティファイ)で、曲を会話の間に入れることができる「Music + Talk」という機能がついたことをキッカケに、「アグリミュージックレディオ」を竹本さん、佐藤さん、自分を含めた農家6人で配信しています。この番組は農業に関わるゲストさんが人生において励まされた曲のエピソードトークをするというコンセプトになっており、これまで多くの方に出演していただきました。
山ノ上さん
西田(筆者)
それにしても先駆者の「ノウカノタネ」の影響が大きいですね。今は「アグリミュージックレディオ」もそうなりつつあると思います。この番組はパーソナリティーが小規模オーガニックファーマーで、編集や台本書き、ゲストのオファーなど裏方として支えているスタッフが大規模農家。この入り混じった世界観が好きなんですよね。農法やスタイルは違ってもポッドキャストという共通項で深いつながりができることを体現してくれてると思ってます。
ポッドキャストをやって変わったこと
西田(筆者)
以前、Twitterで「絵文字3文字でどの農家か分かる?」なんてのがはやりまして、そこに富士山とイチゴとブドウがあって、自分のことだったんです。新規就農したてなのに、いろいろな方に認知されているんだと感動しました。
特に、普段なら声をかけることすら気おくれする先輩農家の山ノ上さんから「一緒に番組やらないか」と声をかけられたのは、ホントうれしかったです。こうしたチャンスを作れるところにポッドキャストのすごさを感じています。
今、イチゴは全量農協出荷なんですが、これから育ってくるブドウは観光農園も視野にいれています。そんな構想が配信によって多くの方に認知されていると思うと、安心して取り組めます。
佐藤さん
文字ベースのTwitterだと荒れそうな話題も、声で届けるとそれほど荒れないのも特徴だと思います。また農系ポッドキャストというと農家だけが配信するものだと思われてますが、私は「おてつたび」(※)などについて一次産業のことを発信する回もそのひとつだと思っています。以前と比べ違う職種とのクロスオーバーがすすんできました。
※ 農業の手伝い(仕事)と旅を掛け合わせたマッチングサービス。
竹本さん
以前だと、竹本さんのように4Hクラブの全国組織にでも入らないと知り合えなかった全国の農家と、こうやってつながれているのもポッドキャストのおかげです。
以前の座談会記事でも話しましたが、とあるポッドキャスト番組で「二酸化炭素(CO2)ください」と言ったところ、後日大企業からCO2いりませんか?と連絡があったりして、発信することで思わぬつながりが持てることを実感しました。
山ノ上さん
西田(筆者)
あと農業は天候や獣害、病害虫など基本的に思い通りにならない大変なことが多いんですが、そんなトラブルもネタになると思うと、そのできごとを客観視できたりしますね。
ポッドキャスターのススメ
西田(筆者)
そのためにも継続が必要ではないかと思います。最後に継続のコツ、またポッドキャスターになるためのおすすめポイントがあれば教えてください。
これからやる人は、ぜひこの4人に絡んできてほしい。どんどん引き上げてくれると思います。毎月1日の農系ポッドキャストの日は、夜9時からTwitterスペースで農系ポッドキャスターと話したりしていますので、ぜひ#農系ポッドキャストで検索して遊びにきてください。
佐藤さん
リスナー数とか再生数を優先度の一番にするとしんどくなってくる。まずは自分が楽しむことを優先にして、そのうちなんか再生数が跳ねる時もあるかな、引っ掛かりを持ってくれる人もいるかな程度に思った方が長続きしますね。
あとどんなに気取って編集しても、人柄が伝わるので結果的には自然体で話すのが一番楽になりますね。繰り返してると、人前で話す時も自然に言葉が出てくるようになります。
竹本さん
ですが、ポッドキャストを配信することで自分の意見をまとめることができるし、建設的な会話ができるようになったと実感しています。
自分の番組を盛り上げたいという気持ちもあるけど、自分だけだとムーブメントはおこらない。どんどんいろいろな番組ができて、農系ポッドキャストの定義が曖昧になるぐらいカオスになっていったらいいと思います。
山ノ上さん
西田(筆者)
思い通りにならないことばかりの自然を、直接体験している、つまり一次情報を持っている農家だからこそ、ポッドキャストは情報を発信するのに向いています。
呼吸も「息を吐いてから吸う」と言うように、情報も自分が出すからこそ入ってきます。ネットワークづくりのキッカケとしても、ぜひポッドキャストをはじめてほしいと思います。