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ネギ農家に聞く6次産業化のコツ なじみの無い調味料をどのように売ったのか

ネギ農家に聞く6次産業化のコツ なじみの無い調味料をどのように売ったのか

農産物の生産から加工まで行う6次産業化。多くの農家さんが挑戦をし、やめていくということが現状繰り返されています。そんな中、広島県三次(みよし)市のネギ農家さんがネギ油作りに挑戦し、県内で人気を獲得しています。今回はそのAgre Lore Lab.(アグリロアーラボ)の代表、藤谷祐司(ふじたに・ゆうじ)さんにお話を聞きました。

サラリーマンからネギ農家へ

水が奇麗で米の生産が盛んな広島県三次市にあるAgre Lore Lab.。
同社では米を7ヘクタール、白ネギを2ヘクタール栽培し、収穫した白ネギからネギ油を作っています。白ネギという名は東日本の人にはなじみがないかもしれませんが、長ネギのことです。一般に日本の東では長ネギ、西では白ネギと呼ばれています。

ネギ

Agre Lore Lab.の白ネギ

元々藤谷さんは、自動車メーカーのマツダで製造を10年、開発を5年行っていました。退職後は、水耕ネギの農家で研修を経験。しかし、作った作物は就農後も研修先に出荷しなければならず、藤谷さんが考えていた「自分で販路を探して成長させていく農業」とは違いがありました。自分で販路を探す場合には、水耕栽培の施設に対する支援が得られなくなります。そこで、研修で教わっていた水耕栽培ではなく、土耕栽培で独立しました。

販売はJAに頼るのではなく、単価を上げるためにスーパーやマルシェで販売しています。更に藤谷さんには野菜の価値を変えたいという思いがあり、白ネギだけを作るのではなく、ネギ油作りをしているのです。

現在は、マツダで培った製造の効率性やデザインの重要性などの知識や経験を生かし、試行錯誤を繰り返しながら、ネギ油の6次産業化に取り組んでいます。

作業風景

作業中の藤谷さん

6次産業化を始めたきっかけ

最初にネギ油を作るきっかけになったのは、ある料理人が畑を見に来た時の一言「ネギ作るならネギ油とかいいんじゃない?」でした。帰って調べて見ると、自分でもできそうな手順だったことから、ネギ油作りが始まりました。

具体的に作り方を説明すると、ネギ油は植物性の油に白ネギをいれて低温で加熱していき、ネギの香りを油に移しこむことで完成します。

同社では、ネギ油とネギ辣(ラー)油の2種類を販売しています。しかし、聞きなじみのないネギ油。競合他社が少ないので強みだと思って始めましたが、需要がないから作られていないのだということを思い知らされました。取引先を増やしたり、ファン作りをしていくことに苦労をしたと言います。

商品

Agre Lore Lab.のネギ油とネギ辣油

製品化で重視したポイント

ネギ油を製品化するにあたり、藤谷さんが特に重視したこと、力を入れて取り組んだことを挙げてもらいました。

ターゲット層

ネギ油のターゲット層は、30代から50代の毎日料理をする女性。ネギ油やネギ辣油は、普段の料理が手軽にワンランク上がる調味料です。それぞれ合う料理は異なるので、どのように使い分けるのかなどもお客さんに伝えています。

見た目

デザインは、ターゲット層に合わせて高級感を重視しています。車の開発をしていた時にデザインの重要性について感じていたので、ラベルの質感から形までミリ単位でこだわっているのです。また、お客さんがこだわって奇麗にしているキッチンの雰囲気を崩さないよう、おしゃれであり、なおかつシンプルなデザインとなっています。

製造

製造については効率性を重視しています。藤谷さんは車の製造をしていた時に、ラインの効率性の改善に携わっていました。その経験から、商品に貼るラベルにしても、見た目のこだわりだけでなく貼りやすさという作業効率の観点から考え、現在のパッケージが完成しました。

販売

販売は、お客さんがネギ油を知らないところからのスタートだったので、認知活動から始めました。認知度を上げるためにマルシェに参加し、対面で説明し販売。
最初の年は45回のマルシェに参加し、2000人以上を接客したと言います。地道な認知活動から広島で広まり売れていったのです。

マルシェでの販売

マルシェの様子

農家の誰もが生かせる6次産業化戦略とは

他の農家さんに伝えたい6次産業化のコツについて、藤谷さんは次のように話してくれました。

始める前に強みと弱みを洗い出す

農家さんによっても、できることが変わってきます。例えば「商品を作る力がある(加工場をもっている)」「デザインができる(商品のパッケージなどを自分で作れる)」「お金がある(投資できる資金がある)」など、一人一人異なります。
全てを自分でやろうとしても中途半端になってしまうので、先に現状を洗い出すことが必要となってきます。

ターゲットを1人に絞る

大手の企業だと広告を大きく打つことができるので、多くの人にターゲットを広げることができます。それに対し個人の農家さんが広告による認知の部分で勝てないのはもちろんですが、そのうえ万人受けするものを作ってしまうと、価格競争の部分でも勝つことができません。それよりも、ターゲットを絞って売ることのできる場所で、気に入ってくれる人に買ってもらい、ファンを作ってリピートしてもらうことが大切です。
たとえば年齢や性別、生活や仕事のリズム、料理が好きでキッチンに置く物にこだわりがあるといったライフスタイルなど、具体的にイメージを絞ることで販売するべき場所まで見えてきて、作った先の行動につながっていきます。

デザインは大事

お客さんが購入する理由として、「おいしそうと感じた」という見た目からの購入が多くあります。そのうえで実際においしかったら、リピートにつながるのです。見た目は、味と同じぐらい大切になってきます。投資資金があってデザインを委託できるなら一番早いですが、農家さんは資金の面で難しい人も少なくありません。普段の生活から、コンビニなどで売れている商品のデザインなどを見たりして、知識やセンスを磨いておくべきです。

商品は100点よりも70点のスピード感

100点満点の商品ができたと思っていても、必ず変更したい点が出てきます。それよりも、スピード感をもって70点のものを作り、販売してみて試行錯誤していった方が近道につながるのです。農家さん目線で100点の商品が、消費者に100点と感じられるかはわかりません。販売してみないと見えてこない部分もあるのです。

法律の部分は100点に仕上げる

加工品を作る上では、多くの義務付けられた法律などがあります。先ほど70点でもスピード感が大事と言いましたが、法律など必ず守らなければならない部分は100点に仕上げないといけません。怠ると商品ができあがっても販売ができなくなるケースも。最終的に、全体的なスピードがゆっくりになってしまいます。

取材時の様子

インタビュー時の藤谷さん

農家さんにとって6次産業化は、決して簡単なものではありません。農産物を作ることとは全く違う知識や経験が必要となり、全てを自分で背負ってしまうと、業務が回らなくなってしまったり、間違った方向に向かってしまったりと客観的に見えなくなってしまうことがあります。この記事のようなメディアを見たり、周囲の人に頼ったり、相談したりしていろいろな情報や意見を取り入れることが、売れる為のヒントにつながってくるのではないでしょうか。

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