九条ネギからトウモロコシ、枝豆へ
村田さんは現在、36歳。実家は兼業農家だが、農業を仕事には選ばず、いったん消防士になった。だが農作業を手伝っているうちに「やっぱり農業をやりたい」との思いが募り、2019年1月にロックファーム京都を設立した。
消防士の仕事をしながら手伝っていたときとの明確な違いは、専業農家として事業を大きくしようと決意したことだ。そのために必要と考えたのが、他の農家との連携。同世代が社長を務める京都府内の2つの農業法人と組み、農産物の販売会社の京葱SAMURAI(きょうねぎサムライ)(京都府久世郡久御山町)を2019年7月に立ち上げた。
筆者が最初に村田さんにインタビューしたのは2020年7月。ロックファーム京都のメインの作物は九条ネギで、トウモロコシの栽培も始めていた。面積は10ヘクタールで、ネギ農家としては大規模といえる広さになっていた。
じつはこのとき筆者は、村田さんの戦略について「ネギの生産者として事業を拡大していくのだろう」と想像していた。連携する2つの農業法人も九条ネギを主な作物にしており、販売会社にも「京葱」という言葉を使っているからだ。村田さん自身、九条ネギの潜在市場の大きさを力説していた。
ところが今回、2年ぶりに訪ねてみると、筆者の予想が正確ではなかったことに気づかされた。引き続き九条ネギとトウモロコシが中心だが、加えて枝豆やイチゴ、サツマイモ、カボチャの栽培にも着手していたのだ。品目を増やすのと併せ、面積も15ヘクタールに拡大していた。
単一作物の大量生産でも少量多品目栽培でもなく、品目を少しずつ増やす方向へとかじを切っていた。地方の産地と違って広大な農地を確保するのが難しい京都で、事業規模を大きくしていくための作戦だ。京葱SAMURAIに集う農業法人の売上高は、2年前の約3億円からすでに5億円へと拡大していた。
栽培品目は、味の特徴と栽培の効率で選定
栽培する作物の種類を増やし始めたロックファーム京都だが、狭い畑で数十から100を超す種類の野菜を育て、品ぞろえの豊富さで特徴を出すようなタイプの営農とは一線を画す。では村田さんは、どういう基準で新たにつくる野菜を選んでいるのだろうか。