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地域おこし協力隊とは? 仕事内容や待遇、地方で就農するための活用方法までご紹介

地域おこし協力隊とは? 仕事内容や待遇、地方で就農するための活用方法までご紹介

地方に移住して地域の活性化に取り組む「地域おこし協力隊」。近年、隊員数や受け入れ団体が増え、移住・就農の最初の一歩としても間口が広がっています。本稿では「地域おこし協力隊」の概要を解説するとともに、就農に結びつけるための方法を紹介します。

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地域おこし協力隊とは


地域おこし協力隊は、都市部から過疎や高齢化などが進む地域に移住して、一定期間、さまざまな「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着をはかる取り組みで、政府が2009年に制度を創設しました。主な活動は、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PRなどの地域おこし支援、農林水産業への従事、住民の生活支援など。地域の要請に応じてその内容は多岐にわたり、移住・就農を希望する人には、その足がかりとなることもあります。

総務省によると、地域おこし協力隊として活躍する人は令和3年度で約6000人。政府はこの隊員数を令和8年度までに10000人まで増やす目標を掲げています。

地域おこし協力隊の主な仕事内容

・地域ブランド・地場産品の開発・販売・PR
・農林水産業への従事
・地域イベントの支援
・地域メディアを使った情報発信

 

地域の課題に応じてさまざまな活動内容がある地域おこし協力隊の仕事。条件や待遇も含め、募集自治体によって異なるため、自分のやりたいことと地域が必要としている活動がマッチしている自治体を選ぶ必要があります。

地域おこし協力隊の待遇・環境

地域おこし協力隊の概要は、下表のとおりです。

任期 1~3年
契約形態 雇用契約/委託契約(詳細は自治体へ確認)
報酬など 活動費として1人あたり最大480万円(詳細は各自治体へ確認)
隊員数 6015人(2021年度)
男女比 6:4(2021年度)
年齢層 10~60代 うち20~30代が約7割(2021年度)
受け入れ自治体数 1085団体(2021年度)

隊員数・自治体数ともに増加しており、2021年度時点では約6000人の隊員が1085の団体で活動しています。
契約形態が委託の場合は、個人事業主となるため、特に規約がない限り副業が可能です。

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地域おこし協力隊になるメリット

地域おこし協力隊は、任期終了後の定着率が高く、約6割が活動した自治体や近隣地域に定住しています。新規就農を希望する人が、隊員として地域に入るメリットをいくつか挙げてみましょう。

好きな土地で就農するきっかけ作りができる


地域おこし協力隊の募集内容には、任期終了後の独立就農や雇用就農を目的とするものも見られ、地域協力活動を通して研修などの支援を行っている自治体もあります。募集内容が農業への従事でない場合でも、農業をやってみたいと思う土地に入って活動をしながら、農業に関する情報収集をすることで自身の就農プランが立てやすくなります。

地域の人とのつながりができる

地域にはその土地ならではのコミュニティーがあり、移住した先で人間関係がうまくいかないというケースも少なからずあります。地域おこし協力隊は、活動を通して土地の人と接する機会が多く、自治体の担当者から住民へのコミュニケーションの橋渡しもあるでしょう。地域おこし協力隊として地域の人との良い関係性ができれば、その土地への移住もしやすくなります。

土地の農業の実態を知ることができる


地域の農業を通年で最長3年間、観察しながら情報収集ができます。その土地で作りやすい作物はもちろん、ニーズがあって足りていないもの、付加価値が高そうなものなどをリサーチしておくと、就農した際に営農計画が立てやすくなります。作りたい農作物を見つけたら、オフタイムを利用して技術を習得し、試しに自分で栽培してみることもできます。どのような販路があるのかも、知っておくといいでしょう。

サポート体制が充実している

地域おこし協力隊への支援として、国から1人当たり480万円の活動経費が支給され、報酬や活動費用に充てられます。また、企業・事業承継に要する経費として1人当たり上限100万円、任期終了後に定住するための空き家改修費の50%が国の特別特別税で補助されることになります。このほか、隊員向け研修会の実施や相談窓口の開設などでサポート体制を充実させています。

地域おこし協力隊になる際の注意点

地域おこし協力隊は、移住・就農へのステップとして有意義な活動になり得ますが、必ずしも任期終了後の道が保証されるものではありません。イメージと違って後悔することのないよう、留意点をいくつか紹介します。

目的に合った自治体を選ばないと後悔する可能性が高い


地域おこし協力隊を採用している自治体は多くあり、そこでの活動内容はさまざまです。将来の就農の足がかりにするのであれば、農業移住を考えている自治体を選ぶことが大切です。その際、地域に適した作物や農業の形態が、自身のやりたい農業と合致しているかを確かめて応募しなければ、せっかくの任期を棒に振ることにもなりかねません。

任期終了後に必ず就農できるとは限らない

農業の担い手として地域おこし協力隊を募集している自治体では、農業研修の実施、農地の確保、独立経営の支援または雇用先とのマッチングまで、一気通貫でサポートしているケースも少なくありません。しかし、その地域が農業分野以外で隊員を募集している場合は、就農への道は自身で開拓することになります。地域の状況によっては、就農することが難しい場合もあるでしょう。

手取りは会社員に比べて少なめ


地域おこし協力隊への報償は、全国一律年間280万円で、隊員のスキルや地理的な条件を考慮して330万円まで支給可能とされています。報償は月給または日給として支払われ、雇用契約の場合は、健康保険、労働保険などが天引きされます。民間企業の一般労働者の月額の平均賃金は、30万7400円(2021年)となっていることから、隊員の手取りは会社員に比べて低くなる可能性が高いといえます。

地域おこし協力隊から就農を目指す手順

地域おこし協力隊になるまでのステップを紹介します。就農希望者は、就農までの計画を立てておくと、国や自治体の支援を上手に活用することができます。

1.就農プランを立てる

まず、任期終了後に活用できる支援を知っておきましょう。農林水産省の農業次世代人材投資資金で最長5年にわたり給付を受けることができます。まず、都道府県の指定機関で研修を受ける場合は最長2年間、月12.5万円(年間最大150万円)。その後、農業経営を始めてから経営が安定するまでの最長3年間、月12.5万円(年間150万円)が交付されます。いずれも、就農時の年齢が49歳以下であることが条件となります。地域おこし協力隊の募集には、就農をゴールにして研修などのプランを組み込んだものもあります。

2.理想の就労形態を提示している自治体を探す

地域おこし協力隊の募集は、各自治体のホームページ、移住・就農情報サイトなどで探すことができます。任地の気候や特色、活動内容、契約形態(雇用または委託)、勤務時間などの条件を確認して検討しましょう。

3.自治体へ申し込む

地域おこし協力隊は、任地の自治体へ申し込みます。提出書類は自治体によって異なり、小論文が含まれる自治体もあります。また、実際に活動する前に、「おためし地域おこし協力隊」(2泊3日以上)や「地域おこし協力隊インターン」(2週間~3カ月)に参加することもできます。いずれも移住という条件がなく、事前に地域の様子を知り、業務を体験することで参加のイメージを持って活動に入れるように、近年、創設された制度です。

4.自治体による選考を受ける

選考方法は、主に書類選考、面接です。選考基準は自治体によって異なります。

5.自治体から地域おこし協力隊としての委嘱を受ける

選考に通ったら自治体から地域おこし協力隊の委嘱を受けます。委嘱式を執り行って、隊員に委嘱状を交付する自治体もあります。

6.採用先の自治体に住民票を異動させる

地域おこし協力隊の委嘱を受けたら、任務開始日までに引っ越しを済ませ、採用先の自治体に住民票を異動させます。

7.地域おこし協力隊として活動を開始する

将来の就農に向けて、自身のアイデアやスキルを生かし、地域の課題解決や活性化に貢献してください。

地域貢献を通して、就農へ大きな一歩


知らない土地で農業を始めるのは、不安が大きいものですが、地域おこし協力隊の創設によって第一歩を踏み出しやすくなりました。制度の運用開始から10年以上が経ち、新たに「おためし地域おこし協力隊」や「地域おこし協力隊インターン」などの施策が始まり、さらにステップが踏みやすくなっています。悩んだときは、「地域おこし協力隊サポートデスク」のような、希望者やOB、OGを含む隊員向けの相談窓口も利用できます。政府が隊員数1万人を目指す中、農業の担い手として活躍するチャンスは全国各地に広がっています。

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