【監修者】いまむらゆい(管理栄養士)
管理栄養士・野菜の切り方講師。カット野菜工場での品質管理、地域密着型の八百屋での業務を経験後、料理教室やライター、レシピ開発などを行っている。食育レシピや野菜のおいしさを引き出すレシピが得意。インスタグラムでは200品以上の野菜レシピを公開中。 |
アボカドとは?
アボカドは果物に分類される
アボカドはサラダなどに使われることも多いため、野菜のように感じている方も多いでしょう。でも実はアボカドは果物に分類されます。ギネスブックでも生食の果実の中で最も栄養価が高いと認定されています。
アボカドはクスノキ科ワニナシ属に分類され、熱帯から亜熱帯の地域の常緑高木に実る果実の一種です。気温が低いと育たないため、温暖な地域で主に栽培されています。日本でも古くはアボカドのことをワニナシと読んでいた時期もあり、これは英名であるalligator pearを直訳したものです。
アボカドは大半が輸入品
アボカドはスーパーなどで手軽に購入できる品目の一つですが、基本的にそれらすべてが輸入品と考えて間違いありません。およそ9割がメキシコ産で、残りはアメリカ、ニュージーランド、チリ、ペルーからの輸入品です。和歌山県や愛媛県、沖縄県でもアボカドは栽培されていますが、希少なため国産のアボカドが店頭に並ぶことはほとんどありません。
アボカドの旬は?
アボカドは一年を通して安定して輸入されているので旬はないと思われがちですが、比較的味の良いアボカドが出回る時期はきちんとあるので覚えておきたいところです。
日本へ輸入されるアボカドの9割を占めるメキシコ産のものが市場に多く出回るのは3~4月頃です。その後6月頃までのアボカドは特に油分が豊富で美味しいとされています。また、大量に流通するため価格も下がる傾向にあります。この時期を過ぎて8~10月頃になってくるとサイズも小さく、油分も少なくなります。つまり、輸入アボカドの旬は3~6月頃と言えるでしょう。
アボカドに含まれる栄養素は?
ビタミン
- ビタミンK
- ビタミンC
- ビタミンE
アボカドに特に多く含まれているとされるビタミン類はビタミンK、ビタミンC、ビタミンEの3種類です。
ビタミンKは脂溶性ビタミンの一種で骨の形成を促し、骨粗しょう症の治療に使用されていることでも知られています。
ビタミンCは皮膚や粘膜を健康な状態に保ち、免疫力を高めるのに役立ちます。水溶性ビタミンの仲間なので、より効率的に摂取したいなら生食するのがおすすめです。
ビタミンEは強力な抗酸化作用があることで知られています。高血圧や動脈硬化、悪玉コレストロールの量が気になる方は積極的に摂りたいビタミンの一つです。
アボカドにはビタミンB群の一種であるパントテン酸が豊富に含まれています。パントテン酸は脂質の代謝を促進する働きがあり、ダイエット中の方からも注目されています。
ミネラル
- カリウム
- カルシウム
- マグネシウム
- 銅
アボカドには多くのミネラルも含まれています。特にカリウム、カルシウム、マグネシウム、銅の4種類は含有量が多いです。
最も多く含まれているのがカリウムで、塩分による高血圧を予防する働きがあります。カルシウムとマグネシウムは共に骨や筋肉を形成する際に必須となる栄養素です。銅は動脈硬化や貧血の予防に役立つミネラルです。
葉酸
- 貧血予防
- 疲労回復
水溶性ビタミンの仲間で赤血球の生成を助ける効果のある葉酸もアボカドに豊富に含まれる栄養素の一つです。貧血予防に効果がある他、新陳代謝を促すことから美容や疲労回復にも役立つと言われています。
また、葉酸の重要な働きの一つに胎児の正常な発育に役立つというものがあります。厚生労働省も妊娠中の女性に葉酸の摂取を推奨しています。葉酸を豊富に含むアボカドは妊婦の方が積極的に取り入れるべき食材の一つと言えるでしょう。
アボカドの美味しい食べ方は?
生のまま食べる
アボカドを生のままで美味しく食べるのなら、やはり定番はわさび醤油でしょう。手軽に美味しく食べられる王道の食べ方です。和風ならめんつゆや海苔、ポン酢なども美味しいですし、チーズや納豆、キムチといった発酵食品とも相性は抜群です。
レモン汁やオリーブオイルなどでオシャレに楽しんでも良いですし、ラー油やニョクマムといった変わり種にも合います。砂糖やコンデンスミルク、カルピスなどと合わせても意外と美味しいので一度試してみてはいかがでしょうか。
調理して食べる
アボカドは生で食べることが多い食材ですが、もちろん調理しても美味しいです。固めのアボカドは加熱することで食べやすくなり、ホクホクとした食感はクリーミーな生のアボカドとはまた違った楽しみ方ができます。
アボカドはわさびやにんにく、ハーブといった風味がしっかりした食材との相性が良いので、そういった食品と合わせるのがコツです。
アボカドのおすすめレシピは?
- 海老とアボカドのパスタ
- 卵とアボカドのサラダ
- 肉巻きアボカド
- アボカドとバナナのスムージー
- アボカドプリン
海老とアボカドのパスタ | クラシル
材料 | ・海老 (殻つき) ・アボカド ・パスタ ・塩 ・ジェノベーゼソース ・レモン汁 ・粗挽き黒こしょう ・バジル |
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調理目安時間 | 20分 |
費用目安 | 400円 |
ジェノベーゼソースを使ったイタリアンレストランで楽しめるようなパスタです。とても簡単に作ることができるので、ぜひお試しください。
>>クラシルの「海老とアボカドのパスタ」より引用 | 詳しい作り方は公式サイトをチェック!
卵とアボカドのサラダ | エスビー食品
材料 | ・ゆで卵 ・アボカド ・レモンの絞り汁 ・マヨネーズ ・S&Bマジックソルト |
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調理目安時間 | 10分 |
費用目安 | – |
アボカドに卵を使ったお手軽サラダです。アボカド本来の味をそのまま楽しむことができます。
>>エスビー食品の「卵とアボカドのサラダ」より引用 | 詳しい作り方は公式サイトをチェック!
肉巻きアボカド | アボカドフロムメキシコ
材料 | ・メキシコ産アボカド ・豚バラ薄切り肉(しゃぶしゃぶ用) ・サラダ油 ・付け合せの野菜 ・砂糖 ・酒 ・しょうゆ |
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調理目安時間 | – |
費用目安 | – |
甘辛クリーミーな肉巻きアボカドです。お好みでブラックペッパーをかけてお酒のおつまみにも最適です。
>>アボカドフロムメキシコの「肉巻きアボカド」より引用 | 詳しい作り方は公式サイトをチェック!
アボカドとバナナのスムージー | クラシル
材料 | ・アボカド ・バナナ ・牛乳 ・無糖ヨーグルト ・はちみつ ・ミント |
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調理目安時間 | 10分 |
費用目安 | 200円 |
アボカドとバナナを合わせた口当たりの良いスムージーです。ハチミツの代わりに砂糖でも代用できます。
>>クラシルの「アボカドとバナナのスムージー」より引用 | 詳しい作り方は公式サイトをチェック!
アボカドプリン | tsukurun
材料 | ・アボカド ・レモン汁 ・ココナッツミルク ・牛乳 ・砂糖 ・ゼラチン ・水 |
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調理目安時間 | 10分 |
費用目安 | – |
アボカドの濃厚な味をプリンにしたスイーツです。アボカド好きにおすすめしたい一品です。
>>tsukurunの「アボカドプリン」より引用 | 詳しい作り方は公式サイトをチェック!
>>アボカドのレシピ40選!おすすめの人気料理をジャンル別に紹介
美味しいアボカドの選び方は?
皮の色
アボカドは収穫後も熟成が進んでいく食材なので、購入する際にはいつ頃食べるのかも考えながら選ぶとより美味しく食べられます。
熟していない状態のアボカドは鮮やかな緑色をしており、熟成が進むごとに黒くなり完全に熟すと皮が黒色になります。購入してすぐに食べる場合は黒く熟したアボカドを、数日保存してから食べる場合には緑がかったアボカドを選びましょう。
弾力
アボカドを選ぶ際に軽く指で押してみるのも良い方法です。若く熟していないアボカドは固くへこみませんが、食べごろの熟したアボカドはゴムボールのような弾力があります。もし指で押したときに深く沈み込むようなら腐っている可能性があるので注意が必要です。
ただ、店頭に並んでいるアボカドを強く押すと傷む原因となりかねないため、既に購入したアボカドの中から食べごろになった物を選ぶ際に行うのが無難でしょう。
ヘタ
熟成が進んだアボカドは中の水分が抜けてヘタが取れやすくなります。ヘタがしっかりとついているアボカドはまだ固いので、柔らかいアボカドを食べたい場合にはヘタが簡単に取れる物を選びましょう。ヘタの周りを触って少しへこむくらいが食べごろです。
アボカドの保存方法は?
熟してない場合は?
まだ緑色が強く熟していないアボカドは追熟させてから食べるのが基本です。熟していない状態のアボカドは15℃以上の風通しの良い場所で保管すると熟成させることが可能です。
そのまま常温保存で熟すまで待っても良いですが、早く食べたい場合にはリンゴやバナナと一緒に保存するという方法もあります。紙袋やポリ袋にアボカドと一緒に入れておくと、果物が放出するエチレンガスによって通常よりも早く熟成が進みます。袋の口は軽く閉じる程度にして通気性を良くするのがコツです。
気温が27℃を超えると熟成が進みすぎて傷みやすくなるので、特に夏場は気をつけましょう。
>>アボカドの最適な保存方法は?冷凍しても大丈夫?長持ちさせるには?
熟している場合は?
皮が黒色になり、触ると空気の入ったゴムボールのような弾力が出てきたら完熟した合図です。その状態で保存する場合には乾燥を防ぐためにポリ袋に入れて冷蔵庫で保存します。5℃以下では低温障害を起こして変色する可能性があるため、できれば野菜室に収納しましょう。
完熟したアボカドはラップや保存袋で密封すれば冷凍保存することも可能です。冷凍したアボカドを食べる際には加熱調理することで美味しく食べられます。
アボカドの旬はいつ?
輸入品アボカドは?
アボカドは、熱帯地域で栽培が盛んに行われ年中収穫できますが、しいて言えば、多く収穫できる3~6月頃が旬です。中でもメキシコ産が世界最大の生産国で、日本は第2位の輸出先です。特に「ハス種」が多く流通しており、この時期のアボガドは脂肪分が多く濃厚で美味しく、ねっとりした食感が好きな方におすすめだと言えます。また、あっさりした食感が好きな方は8~11月頃のアボカドが良いです。他にも、ニュージーランド産のハス種が10~1月頃に秋冬限定で多く出回ります。
国産品アボカドは?
国産は10月下旬~1月頃が旬ですが、日本では限られた地域で年に1度しか収穫できないため、収穫量が少ないです。一般的なスーパーで見かけるアボカドの殆どが輸入品なので、国産は旬の時期のみの希少性が高い商品と言えます。普段は一般的なスーパーでは見かけないことが多く、ネットショップでもすぐ売り切れますが、旬の時期は流通量が増えて価格も安くなるので、旬に購入するのが良いでしょう。
切ったアボカドが固かったらどうする?
カットした固いアボカドは追熟しないので電子レンジでやわらかくしましょう。
熟していないアボカドはまだ固く、食感がゴリゴリしています。完熟するまで待てばやわらかくなりますが、もう完熟したと思っていざ切ってみたら固かったということは少なくありません。アボカドはカットしてしまうと、それ以上熟すことはなく、放置しておいても傷むだけです。そこで電子レンジを活用して、手頃なやわらかさに調整しましょう。やり方は簡単で、用意するものは果実のほかに、耐熱容器とラップだけです。
アボカドを2つに切ってみて、固いようであればこの方法を試してみましょう。まずは種を除去して、耐熱容器の底に断面を向けてのせ、あとはラップをかけて電子レンジで加熱します。500~600Wに調整し、お好みに応じて30~60秒ほど温めてください。やわらかくなると皮がむきやすくなるので、無理なく皮がむけるかどうかを目安にしましょう。60秒の加熱で十分にやわらかくならない場合は、追加で20秒加熱するなどして調整します。ここでのコツは最初から長時間の加熱をすると、やわらかくなりすぎる可能性があるので、20~30秒くらいずつ追加で温めることです。
アボカドの種類は?
- ハス
- ベーコン
- フェルテ
- ピンカートン
- リード
ハス
アボカドのハスは、グアテマラから種が運ばれアメリカのカリフォルニアで育成された品種です。ハスの特徴としては完熟する前は緑色の皮の状態ですが、少しずつ熟成が進んでいくと緑色から黒色になります。緑色の時は完熟していないため食べたときに歯ごたえが残っていますが、完熟が進むと果実部分が柔らかくなって甘くねっとりとした濃厚な味わいになります。
ベーコン
アボカドは、完熟が進むと皮の色が黒色になっていくものですが、ベーコンは完熟が進んでも緑色をしているのが特徴です。アボカドの中でも油分が多いのでクリームのような触感と濃厚な味わいを楽しめます。そのためベーコンを食べるときにはスプーンですくってそのまま食べるのも良いですが、スプーンで掬った後にしゃもじなどでつぶしてクリーム状にした後に野菜やビスケットにディップするとおいしいです。
フェルテ
グアテマラ系のハスに、メキシコで収穫されるアボカドを掛け合わせてできたのがフェルテです。メキシコ系の特徴として種が小さいという性質があり、フェルテは見た目はハスと同じですが中央にある種がメキシコ系の小さい種を引き継いでいます。種が小さい分食べる部分が多いだけでなく、繊維質が多く歯ごたえがあるため包丁で切ってサラダにするとおいしいです。
ピンカートン
西洋梨を細長くしたような形のアボカドのピンカートンは、果皮は少し厚みがあり表面がザラザラとしているのが特徴です。ただ完熟するペースが速いために基本的にスーパーで流通することは少ないのが特徴で、このピンカートンを手に入れるためには専門店かネット通販で購入することになります。
リード
丸々とした形が特徴のリードは、品種改良によって他の品種よりも大型のサイズをしているのが特徴です。この品種は改良によって寒さに強い性質を持っていることから、日本でも栽培されているので徐々に一般家庭に広まりつつあります。
アボカドの育て方は?
自宅なら観賞用が現実的
アボカドは発芽率が高いので、食べ終わった後の種からでも育てることができます。取り出した種に付着した果肉やぬめりを取り除き、鉢植えに入れた市販の園芸用培養土に尖った方を上にして植えて発芽に適した20度の温度を保ち、土が乾かないように水やりすれば約1ヵ月前後で発芽します。発芽後は月に2回程度2000~5000倍程度薄めた液体肥料を与えると1年で1m近くまで成長しますが、アボカドは自家受粉しにくいため1本だけでは結実しにくい植物です。自宅では実の収穫を目的とせず、観賞用として育てるのがおすすめです。
アボカドを育てるのに適した環境は?
アボカドは中南米が原産地と言われており、寒さに弱い植物です。そのため、育てるには風が直接当たらず、日当たりが良い環境が適しています。特に屋外で育てる場合、発芽直後や幹の直径が1cm未満の幼木は、最低気温が10度以下なら室内に取り込むようにしましょう。室内でも15度以上の暖かい場所に置くことが大切ですが、窓付近は温度が下がりやすいため注意が必要です。
>>アボカドは日本各地で育てられる! 四国のアボカド名人に聞く露地栽培のコツ
まとめ
一年を通してスーパーなどで手軽に手に入るアボカドですが、ただ美味しいだけでなく栄養素も豊富な優秀な食材です。美しく健康に生活するためにもアボカドを普段の食事の中に積極的に取り入れたいところです。
これまであまりアボカドを食べてこなかったという方もこれを機にアボカドを食べてみてはいかがでしょうか。やはりまずは簡単に生で食べることから始めるのがおすすめです。