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半農半Xはなぜ失敗する? 経験者が語る失敗事例とそこから得た教訓とは

hiracchi

ライター:

半農半Xはなぜ失敗する? 経験者が語る失敗事例とそこから得た教訓とは

2010年に非農家から新規就農を果たし、ライターとの二刀流で農業を続ける筆者が、「半農半X」だからこそ陥りやすい失敗と、そこから得た教訓について自らの経験談、そして周りの事例をもとに詳しく解説します。

「半農半X」というマインドが失敗のもと?

僕は2010年に非農家出身で新規就農を果たし、それ以前から続けてきたフリーライターの仕事と並行してずっと「半農半ライター」を続けています。幸いどちらの仕事にも恵まれ、農業が軌道に乗り始めた就農4〜5年目以降は、片方だけでも生活ができるくらいの収益をコンスタントに上げ続けています。こうした僕の働き方を「半農半X2.0」として、マイナビ農業でもたびたび紹介してきました。

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僕は地元自治体・JAが主催する研修を経て新規就農しました。同じタイミングで受講した同期の中には、僕と同じように別の仕事を持ちながら農業をしている人たちも少なからずいます。そういう人はだいたい農家出身で、親の農地を放っておけず、定年を前に「半農半会社員」を目指す人が多かったように思います。
一方で、僕と同じように若くして半農半Xを目指す非農家出身の人もいました。彼は研修修了を機に畑を借り受けて就農したのですが、農業がうまくいっている様子はありません。あくまで別の仕事で生計を立て、農業は趣味レベルにとどまったままで、農業からの収入はない状態。とても「半農半X」と呼べる代物ではありません。

なぜ、元々続けてきた「X」だけでなく、農業でも収入を得たいと考えているにもかかわらず、それがうまく実現できないのか。あえて厳しい言い方をすると、「半農」に対する意識が甘いことが一番の原因だと感じます。これには「半」という言葉に「片手間」「中途半端」という語感が含まれていることに大きな原因があると考えます。半農半Xを目指す人はいつの間にかその語感に引っ張られてしまうこともあるのではないでしょうか。僕が過去にあえて「半農半X」ではなく「半農半X2.0」という表現でマイナビ農業の記事を書いたのも、そうしたイメージを払拭(ふっしょく)するためです。

今の仕事とは別に農業で収入源を持ちたいと考えている人に伝えたいのは、「半農半Xってなんだか憧れるなぁ」「晴耕雨読って素敵だなぁ」といった夢追い人みたいな甘いマインドでは、結果的にどちらもうまくいかないということ。
農業にも、Xの分野にも、それぞれ専業で活躍する大勢のプロたちがいます。商売を成功に導くためには、その人たちと同じ土俵で戦わなくてはいけません。「自分は半農だから甘く見てね」なんて理屈が通用するはずはありません。個人農家として独立したのであれば、半農であろうと立派な経営者です。きちんと事業計画を立てる。お客様のニーズを拾う。営業活動に力を注ぐ。経営者であれば当たり前の努力をおざなりにしたままでうまくいくような世界ではない。それは「半農半X」も一緒です。

農業もXの仕事も、同じ土俵の上での本気のぶつかり合いが大事(画像はイメージです)

どちらの関係者からも「副業」「片手間」のイメージで見られる

これまで書いてきた内容ともつながりますが、「半農半X」が失敗する原因となりやすいのが、どちらの側からも「副業」「片手間」というイメージで見られがちなこと。特にXの仕事をフリーランスでやっている場合はなおさら。取引相手からすれば、どちらかの業務に専念している人の方が「しっかり頑張っている=仕事を任せたい」と考えるのが道理です。「半農半X」で稼ぐためには、このイメージを払拭するだけの頑張りと実績で取引先を納得させるしかありません。

そもそも「半農半X」は、従来存在する「兼業農家」と被る部分が大きいですが、地域によっては、この「兼業農家」に対する風当たりは相当強いと思います。僕が就農した地域では、兼業農家のことを「専業農家の規模拡大を阻む存在」「会社員をしながら片手間でいい加減な農業をする邪魔な存在」と言う専業農家もいます。こうしたイメージが強い地域で「半農半X」を実践する場合、地域の農家から信頼を得るのは相当ハードルが高いと覚悟しておきましょう。あからさまな嫌がらせを受けることはさすがに少ないと思いますが、地域の地主(多くは農家)から土地を借りるのが難しい、補助金が受けづらい、といったケースは耳にしたことがあります。

こうした事態を少しでも避けるために、特に就農当初は周りの農家に対して「半X」については多くを語らないのが賢明です。たとえ最初のうちはXの業務割合が多かったとしても「農業が大好き。この道1本で頑張りたい!」という真剣さを積極的に周囲に伝えることが大事です。僕自身、「ライターで稼いでいる」と話しているうちは「どうせ農業は片手間でしょ?」という反応を示す農家が多かったのですが、あえてライターの仕事についてはできるだけ口にせず「農業が大好き」と言い続けるように変えていったら、徐々に認めてもらえるようになりました。

「二刀流」はそのうち大きな武器になりますが、刀1本で戦えるようになるまで、戦略的に「2本を同時に振り回さない(Xの実績をひけらかさない)」ことが大事です。その場の状況に合わせ、どちらの刀を使うべきかをきちんと考えましょう。「Xの分野ですごいんだ!」と言われても、周囲の農家にとってはどうでもいい話。むしろそんな新人は目障りでしかないですから。僕と同じように別の仕事を持ちながら就農したいと考えている人にアドバイスする時には、このことを肝に銘じるように伝えています。

戦略的に二刀流を封印することも必要(画像はイメージです)

オーバーワークに注意

「半農半X」のどちらの仕事でも認めてもらうためには、相応の頑張りが必要です。そこで陥りがちなのが「オーバーワーク」です。取り組むべき業務がどんどんと増え、次第に作業が回らなくなっていく。気が付けば取り返しがつかない状況に陥り、体だけでなく心までもむしばまれ、どちらの仕事も辞めざるを得ない……。これでは本末転倒です。

僕自身、就農当初はオーバーワークに悩まされました。特にはじめの頃は、農作業の段取りが全く理解できておらず、一つひとつの作業に現在の2~3倍の時間を使っていました。食事と睡眠の時間を除けば、ほとんど働いているということも珍しくありませんでした。

オーバーワークを防ぐためにも、就農当初は小さな面積から始めることを強くお勧めします。なぜなら上記のように、最初のうちは「作業時間がどれだけかかるのか」「作業に入るまでの段取りにどういった手間がかかるのか」などが全く見通せないからです。まずは小さく始め、作業時間を把握する。天候による影響なども考慮したうえで、基準となる作業時間を割り出しておけば、次年度以降は効率的に農業ともう一つの仕事を組み合わせていけるようになります。

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こうした農業ならではの特性を理解したうえで、小さい畑で試行錯誤し、作業の効率を高めていけば、徐々にオーバーワークも解消されていきます。特に「X」がオフィスワークなどの場合は、気分転換や運動不足解消にもつながり、いい相乗効果が生まれてくるはずです。

農業ともう一つの仕事が互いに良い相乗効果を生むようになれば、半農半Xは成功と言えるのでは(画像はイメージです)

まとめ

世の中にだいぶ浸透してきた感のある「半農半X」というワードですが、その実情についてはあまり知られていないのではないでしょうか。先駆者の事例はあくまで成功者の一例であって、それがそのまま自分にも当てはまるかと言えば、そうではないケースがほとんどでしょう。

人はどうしても「生存者バイアス」に陥りがちです。何らかの成功を遂げた一部の人物を取り上げ、その成功事例のみを基準にして誤った判断をしてしまうことを意味しますが、「半農半X」を成功させるためには、成功者の陰に「星の数ほどの失敗者」がいることを認識することが大切です。

ただ、少し先を歩く実践者として思うのは、「半農半X」は確かに大変さはあるけれど、メリットも非常に大きいということ。過去の記事にも書きましたが、現時点ではさまざまな偏見があるものの、農業従事者が急激に減り続けるなかで、今後は「半農半X」が日本の農業にとって重要な存在になっていくはず。現在は「先行者利益」を手にしやすい絶好のチャンスでもあります。勇気を持って農業に取り組む人が増えてくれることを願っています!

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