そもそも黒星病ってどんな病気?特徴や主な症状
黒星病は黒点病とも呼ばれておりリンゴや梨、モモやバラといったバラ科の植物に多く生じるもので、梅雨時など湿度の高い時期によく見られます。
症状としては、まず葉の表面に滲んだ黒い斑点のようなものが生じ、次第に範囲が広がっていきます。やがて葉が黄色く枯れてしまい、落葉します。治療などをせず放置していると、ひどいときには葉だけではなく、茎や枝にも病気が広がり、枯れてしまうこともあるといいます。またリンゴや梨などの果樹が黒星病にかかってしまうと、果実にも黒い斑点があらわれたり、裂けてしまったりなどの被害が発生します。
黒星病の原因や発生しやすい時期
黒星病は何が原因で発生するのでしょうか。主な原因や、発生しやすい時期もあわせて解説していきます。
原因はカビ(糸状菌)
黒星病の原因は糸状菌というカビの仲間です。カビの一種だけあって、湿度の高い空間や降雨の多い時期を好みます。
雨自体に菌が含まれているわけではなく、土壌や枯れ葉などに潜んでおり、雨が降って跳ね返った雨水がバラなどにかかることで感染します。株の体力が下がっていると感染しやすいので、日頃の栽培管理が大切になります。
初夏や秋に発生しやすい
発生しやすい時期は初夏(5月~7月)や秋(9月~11月)です。
黒星病は雨が多い時期を好み、20℃~25℃あたりの比較的温暖な気温を好みます。また、梅雨時に雨が多く、気温が低いと病気の発生率が高くなるので、しっかりとした予防が必要です。
黒星病になりやすい植物
黒星病はバラやリンゴなど、主にバラ科の植物がなりやすい病気ですが、キュウリなどウリ科の野菜でもかかることがあります。ここでは、黒星病になりやすい植物と、よくみられる症状、その予防方法を説明していきます。
バラ

黒星病に罹ったバラの葉
発症すると、葉に滲んだような黒い斑点があらわれ、次第に拡大し葉全体に広がっていきます。病気が進行すると、斑点を中心に葉が黄色く変色していき、枯れ落ちてしまいます。病気が進行すると、株の葉が全て枯れ落ち、場合によっては枯死してしまいます。
対策としては、マルチングなどで雨の跳ね返りを防いだり、株間を確保し風通しをよくするなどの管理が有効です。
リンゴ
リンゴの場合、葉はもちろん果実にも被害が発生します。葉はバラと同じく黒い斑点があらわれ、やがて黄色くなり枯れて落ちてしまいます。果実については、まずがく片に黒いすす状の症状が生じます。幼果では葉と同じように黒い斑点を生じ、肥大に伴って割れてしまったり、奇形果になってしまいます。
農薬による防除や、枯れ落ちた葉や果実を畑の外で処分するなどの対策が必要です。最近では薬剤耐性菌の発生なども報告されており、様々な系統の種類の薬剤をローテーションして用いることで、耐性菌の発生を抑えることも大切です。
梨
梨の黒星病は幸水や豊水など赤梨に発生しやすい病気です。主に葉や果実にその症状があらわれ、農業現場などでは問題になっています。
葉では黒い斑点が生じ、やがて黄色くなり枯れ落ちます。果実では黒いすす状の病斑ができ、奇形果や裂果、落果などの原因となります。
枝葉を整理して風通しを良くしたり、病気になってしまった部分を迅速に取り除くなど日頃の管理が大切です。黒星病になり落ちてしまった葉や果実は二次感染の原因となるので、そのままにせず、穴をほって埋めるか畑の外で処分しましょう。
キュウリ
キュウリの黒星病は新葉や新芽、茎や果実にあらわれます。
葉では水浸状の病斑がつくられ、やがて茶褐色の斑点が発生します。進行すると穴が空いたり奇形になったり、枯れてしまいます。茎や果実では、同じように水浸状の病斑が発生するほか、亀裂が入ったりヤニが生じるなどの症状がでます。
密集状態を避け、風通しを確保することが大切です。また、畝の排水を良くし、マルチングをするなど雨の跳ね返りを防ぐことで感染リスクを下げることができます。
黒星病を予防するための対策
黒星病は勢いが強く、発生してしまうと一気に株全体へ被害が広がってしまいます。発病後は治療が難しく、黒星病の原因菌を近づけない、感染リスクを下げるといった予防が非常に大切になります。では、どういった予防法が効果的なのでしょうか。詳しく解説していきます。
マルチシートを活用する
黒星病は土壌や落ち葉、作物の残滓に潜み、雨や水やりの際の跳ね返りを利用して作物に感染していきます。こうした跳ね返りを防ぐためにもマルチシートを活用しましょう。
マルチングをすることで、株元からの跳ね返りの大半を防ぐことができます。また、雑草の抑制や害虫対策、地温の確保にも繋がります。
水やりは丁寧に行う
栽培において水やりはとても大切な作業の1つです。ですがホースなどで適当に散水しているとどうしても水が跳ね返ってしまいます。跳ね返った水が黒星病の主な感染ルートなのは既に説明した通りです。少しでも感染リスクを低減するためにも、水やりは丁寧に優しく行いましょう。
株元に注ぐようなイメージで水やりすれば跳ね返りを抑えることができます。耕作面積が広く丁寧に水やりをすることが難しい場合は、マルチングや敷き藁などで跳ね返りを防ぎましょう。
チッ素過多や肥料不足の状態にしない
株の健康状態が良くないと黒星病にかかりやすくなってしまいます。例えば、チッ素成分の多い肥料ばかり散布していたり、逆に肥料不足の状態になっていると根の生育が悪くなります。根が大きく育っていないと、株が栄養や水分をうまく吸い上げることができず、生育や健康状態が悪くなります。黒星病はこういった株でよく発生するので、栄養状態には常に注意しなくてはなりません。
こまめに薬剤(殺菌剤)を散布する
定期的に殺菌剤を散布することも効果的です。梅雨時など雨の多い時期であれば、10日に1回くらいの頻度で薬剤を散布してあげると良いでしょう。
ただ、どうしても雨で薬剤が流れてしまうので、展着剤などと一緒に使い少しでも株に薬剤が残ってくれるよう工夫するとよいでしょう。また、薬剤耐性菌を発生させないために、異なる系統の薬剤をローテーションして使いましょう。ただし、作物によって使用できる薬剤は決まっているので、よく注意書きを読んだ上で使用してください。
落ちた葉は放置せず正しく処分する
枯れて落ちた葉は黒星病にとって絶好の潜伏スポットです。そのままにしておくと、新たな感染源になってしまったり、病原菌が繁殖したりといいことがありません。
落ちた葉や果実、茎などは地中に埋めるか、畑の外で処分するようにしましょう。
黒星病を発症した時の治療法や対処法
黒星病など糸状菌による病気は、万全に予防をしていても感染してしまうこともあります。もし、黒星病らしき症状を発見したら、直ぐに対処するようにしましょう。ここでは、発症後にすべき対処や治療法について解説します。
葉を切除する
黒い斑点など症状が出てしまった葉は治療することができません。被害が拡大する前に葉を摘み取って処分しましょう。摘み取る際はハサミを使って構いませんが、必ず消毒をしてください。摘み取った葉はその場に捨てず、地中に埋めるかゴミ袋に入れて捨ててしまいましょう。
治療薬を散布する
病原菌に感染したものの、まだ発症していない状態の場合は治療剤の散布が有効です。ただし、治療薬といっても既に黒星病の症状が出てしまった葉や茎、果実を治すことはできません。そのため治療薬はなるべく早く、病気が広がる前に散布することが大切です。
全体に広がっている場合は根治が困難
もし黒星病が既に全体に広がってしまっている場合は根治することは難しいでしょう。こういった場合は下記の対処をして株を枯らさず、新芽が伸びてきてくれることを期待しましょう。
まず、病気になっている枝や葉を全て切り落とします。健康な新芽や新葉があれば残しても大丈夫です。その後、株自体を少し切り戻しましょう。切り戻したら、株全体に殺菌剤を散布します。枝の一本一本裏表に薬剤のかけ残しが無いように注意してください。
黒星病が広がっている場合は株もかなり弱っている状態なので、肥料の量は多すぎず少なすぎず、適正量を施肥します。水や化学肥料の代わりに液体肥料を与えてもよいでしょう。新芽が伸びてきたら、こまめに殺菌剤を散布し黒星病にかからないよう予防しましょう。
黒星病の予防や治療におすすめの薬剤4選
ここからは、黒星病の予防や治療におすすめの薬剤を紹介します。
農薬を使用する時は注意書きを必ず読み、使い方を守って使用してください。
マイローズ殺菌スプレー
バラの黒星病やうどんこ病に効果のある予防と治療ができるスプレー剤です。
スプレー剤のため、自分で希釈する必要がないので農薬に慣れていない人でも使いやすくオススメです。
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ベニカXファインスプレー
バラの黒星病やうどんこ病の予防や治療に使えるスプレー剤です。バラの他にも花き類やトマト、ナス、キュウリなどの病害虫防除にも使えるので、さまざまな種類の作物を少量ずつ栽培する家庭菜園にはピッタリです。
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ベニカXガード粒剤
バラの黒星病やうどんこ病の予防に使える粒剤です。株元に散布することで、根から吸収され株全体に効果が行き渡ります。スプレー剤などと異なり、都度散布するわけではないので簡単です。野菜などの病害虫防除にも使えます。
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ダコニール1000
バラはもちろん、リンゴや梨、モモやキュウリなどさまざまな作物の黒星病予防に使うことができます。自身の手で希釈しなくてはいけませんが、長年にわたって農業現場で活躍してきた農薬のため、信頼性はバッチリです。
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黒星病は未然に防ごう
黒星病は発生してしまうと完治するのは難しい病気です。リンゴや梨の産地でも度々黒星病の流行が起こり、大きな経済的な被害が出ています。プロの農家でも被害を出してしまう病気ですから、どれだけ予防しても発生してしまうこともあるでしょう。少しでも被害を減らすための予防や環境づくりは忘れずに行いたいものです。
薬剤による予防だけでなく、水はけや風通しの確保、マルチングや落ち葉の処理など物理的な防除も欠かすことができません。また、日頃から作物をしっかりと観察することで、少しでも早く異変に気づくことも被害拡大防止の面で重要になってくるでしょう。