■高谷裕一郎さんプロフィール
1977年、秋田県鹿角(かづの)市に生まれ育つ。山形大学農学部から同大学院に進み、土壌中の菌根菌について研究。卒業後、横浜市の種苗会社勤務を経て2015年に岐阜県白川町へ移住、2016年「五段農園」を開業し、有機農法での営農を始める。同年、農林水産省「農業技術の匠(たくみ)」認定者の橋本力男(はしもと・りきお)さん主宰の「コンポスト学校」で学んだことをきっかけに、堆肥の技術を多くの人にとって身近なものにすべく、2020年に「堆肥の学校」を開校。
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土づくりとは
西田(筆者)
調べてみると、移住した白川町の圃場(ほじょう)は数十年前、稲作ができるように水をためる目的で粘土質の土を入れ土壌改良されたとのことでした。田んぼにはいいのですが、畑をするには耕せる土の部分が少ない、いわゆる作土層が浅い地域だというのが分かりました。
高谷さん
西田(筆者)
高谷さんはそんな作土層が浅いという状況から堆肥に興味を持ったのですか?
今、育苗土は自家製のものを使ってます。大手のものに比べて育ってきた時の根の張り方が違いますね。根がしっかりしてないと肥料分の少ない有機の畑ではすぐにダメになってしまうので、そういった点でも良かったなと思います。
高谷さん
西田(筆者)
研究者から実践者になった高谷さんにとって、土づくりにおける堆肥の役割とは何でしょう。
物理性が土台と言ったのは、畑に有用な微生物はほぼ好気性、つまり空気がある程度ないと生きていけないからです。水にすぐつかるようなところはどれだけ堆肥を入れても微生物が窒息してしまいうまく団粒構造ができず、物理性の土台が作れません。
高谷さん
西田(筆者)
堆肥づくりの実践
西田(筆者)
高谷さん
西田(筆者)
でも実際使ってみるとうちの畑に合わなかったのか、使い方が悪かったのか、効果の差はほとんどありませんでした。高谷さんのところでは堆肥をどのようにとらえ、具体的にどう作っているんですか。
落ち葉とモミガラとオカラを主原料にして10カ月ほどかけて完熟堆肥にします。微生物資材は購入していません。落ち葉についている土着菌が発酵を促す役割をしていて、そのことでその地域に合った堆肥になってます。作物によって施用量は多少変わりますが、10アールあたり1トン入れています。
高谷さん
西田(筆者)
できた堆肥の成分は検査していますが、うちではいわゆる施肥設計を厳密にはしていません。それでも土づくりができてくると野菜も養分を吸収しやすいのか、いい感じに育ってくれます。
高谷さん
西田(筆者)
これまでは窒素、リン酸、カリの肥料3要素が分かりやすく重視されてきていました。それも間違いないと思いますが、微生物の大切さはこれからますます解明されていくと思います。何よりこうやって実践している方がいるというのは心強いです。
生ゴミ堆肥で地域づくり
西田(筆者)
そこで1次発酵をそれぞれの家庭でやってもらって、難しい最終発酵はこちらでやるという取り組みを始めました。
高谷さん
西田(筆者)
取り組みの具体的な方法を教えてください。
1次処理した生ゴミを持ってきてくれた方にはモミガラ・オカラ堆肥(40リットル1400円)を半額でお分けしたりしています。でも、持ってくるだけの方も多いです。その時にまた2カ月分の床材(500円)を買っていかれます。
高谷さん
西田(筆者)
高谷さん
西田(筆者)
実際、1軒の農家でどのくらいの家庭と提携できるものなのでしょうか?
高谷さん
西田(筆者)