寒冷紗とは?
家庭菜園などで、大事な作物を守るために活用される寒冷紗(かんれいしゃ)。害虫をはじめ強い日差しや水分、温度、風などのさまざまな要因から作物を保護してくれます。
寒冷紗はガーゼを丈夫にしたような生地で作られ、材料にはポリエチレンやポリエステルが用いられています。育てる作物や目的に合わせ、素材や厚みなどのタイプを使い分ける必要があります。
寒冷紗の効果
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・防虫
・遮光
・水分蒸発防止
・凍霜害防止
・防寒
・防風
寒冷紗を用いると、農作物の生育にさまざまな効果が期待できます。それらの多彩な効果の中から、特長的なものをご紹介していきます。
防虫
使用時期 | 幼苗期 |
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自然を相手にする家庭菜園において、とても重要なのが防虫です。害虫対策をおろそかにすると、せっかく育った葉や大事な実が食べ尽くされてしまうことも・・・。寒冷紗は発芽する前の種や、芽が出てすぐの幼苗が鳥に食べられてしまうのも防げます。
【防虫に関する記事はこちら】害虫に振り回されない!効果的な予防法と対処法【畑は小さな大自然vol.15】
遮光
使用時期 | 7~9月 ※地域によって多少異なる |
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植物にはそれぞれ、発育に適した光量があります。日陰が好きな作物に強すぎる日光が当たると、ダメージを受けてしまいます。寒冷紗を使って適切な光量に調整することで、作物がイキイキと育つことはもちろん地温の急激な上昇も防ぐことができます。
水分蒸発防止
使用時期 | 7~9月 ※地域によって多少異なる |
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日光によって土壌の温度が上昇すると、表面から水分がどんどん蒸発していきます。水分の急激な蒸発は、作物に大きなダメージを与えます。寒冷紗を上手に使って温度上昇を抑えることで、急激な水分の蒸発を防いで作物が健やかに育ちます。
凍霜害防止
使用時期 | 12~3月 ※地域によって多少異なる |
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夏場の急激な温度上昇だけでなく、冬場の土壌凍結や霜も作物には大敵です。霜に当たると葉がしおれたように痛み、作物が弱ってしまいます。寒冷紗を使って凍霜害対策を行うことで、凍結や霜による被害を抑えることが可能です。
【凍霜害に関する記事はこちら】凍霜害の仕組み、簡単にできる4つの防ぎ方
防寒
使用時期 12~3月 ※地域によって多少異なる
植物には耐寒性が強いものと弱いものがあり、作物によってその温度が異なります。寒さに弱い作物を育てたり上手に冬越しさせたい場合には、冬場の徹底した防寒対策が重要です。寒冷紗を使用して温度低下を軽減しましょう。
【防寒に関する記事はこちら】あなたの野菜は大丈夫? 家庭菜園の防寒対策!【畑は小さな大自然vol.18】
防風
使用時期 | 台風などの荒天時 |
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強すぎる風によって大事に育ててきた作物の茎や枝が折れたり、葉が破れたり、実が落ちたりと、台風の季節を中心に風によって被害を受けることがあります。寒冷紗で吹き込む風の流れをコントロールすることで、風の被害から作物を守れます。
【色別】寒冷紗の特徴
寒冷紗には育てる作物の種類や時期、目的や用途によってさまざまなものを選べます。その中でも大きな違いのひとつが「素材の色」。素材の色合いによって遮光率をはじめとする寒冷紗の効果が変わるため、目的に合致した色を選んでください。
色 | 遮光率 | 使用目的 |
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白 | 約20% | ・凍霜害防止 ・防寒 |
黒 | 約50% | ・凍霜害防止 ・防寒 |
銀色 | 商品によって大きく異なる | ・防虫 |
白
・スタンダードな寒冷紗で、遮光率は約20%
・凍霜害防止や防寒目的など、主に冬場に使用します
・それぞれ特徴がある「遮光ネット」「防虫ネット」「不織布」に比べると性能は落ちます
黒
・白色よりも遮光性能が高く、遮光率は約50%
・夏場の日差しから作物を守るために有効です
・光を吸収しやすく保温力も高いため防寒にもおすすめです
銀色
・銀色のタイプは害虫対策を重視した寒冷紗です
・光を反射する銀色のテープを使用しています
・防虫・防鳥効果を高めたい場合におすすめです
寒冷紗の正しい使い方
寒冷紗は正しく使うことでその効果を発揮します。基本的な使い方は支柱を立てて畝全体を覆う「トンネル掛け」。寒さ、強風、害虫などから作物を守ることで生育を助け、その後の生長も良くなります。
【用意するアイテム】
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□トンネル支柱
□Uピン、クリップ
□重しになる石やレンガ
使用する「トンネル支柱」や「Uピン・クリップ」はホームセンターや100円ショップ、インターネットなどで購入できます。強度の高いしっかりとしたものを選ぶと長く使えます。
畑で使う場合
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1、畝に合わせたサイズの支柱を50㎝間隔で土に差し込む
2、支柱の上から寒冷紗をかぶせる
3、寒冷紗の端をねじり、Uピンで地面に固定する
4、風で飛ばされないように寒冷紗の端を土に埋める、もしくは石やレンガなど重しを乗せる
畑には凸凹があるため、隙間から虫などが入ってこないよう丁寧に重しをしてください。プランター栽培と比べると風の影響も強いので、しっかりと固定するのがポイントです。
プランターで使う場合
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1、プランターや植物に合わせたサイズの支柱をプランターの土に差し込む
2、支柱を上部でクロスさせて、ひもで固定する
3、支柱とプランター全体を覆うように寒冷紗をかぶせる
4、クリップなどで支柱に寒冷紗を数か所固定する
5、寒冷紗の端をねじりプランターの下に引き込んで固定する、もしくは石やレンガなど重しを乗せる
プランターごと寒冷紗で覆ってしまう方法もありますし、プランター専用の寒冷紗も販売されています。水やりの管理と光のコントロールに注意して生育を見守ってください。
寒冷紗を使う際の注意点
寒冷紗の扱いにはいくつかの注意点があります。「隙間」「日光」「換気」の3つのポイントをしっかり押さえて使うことで、より高い効果が期待できます。
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・隙間なく掛ける
・必要な日照時間を確保する
・適度に換気する
隙間なく掛ける
・わずかな隙間から害虫は侵入します
・せっかく寒冷紗を使っても隙間があれば意味をなさないので、わずかな隙間にも注意しましょう
必要な日照時間を確保する
・黒い寒冷紗は、遮光率が高いという特徴があります
・日照不足や温度上昇による蒸れのリスクがあるため、目的にあった寒冷紗を選んでください
適度に換気する
・高温多湿な環境が続くと、寒冷紗の中が蒸れてカビなどの発生につながります
・寒冷紗は天候や状況を見て、調節しながら使うことが大切です
寒冷紗と似たアイテムとの違い
種類 | 使用目的 |
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寒冷紗 | 虫、遮光、水分蒸発防止、凍霜害防止、防寒、防風 |
不織布 | 防虫、防寒 |
遮光ネット | 遮光 |
防虫ネット | 防虫 |
「不織布」「遮光ネット」「防虫ネット」など、寒冷紗と似た農業資材があります。それぞれに特徴があるので、違いを把握して状況に合わせて上手に使い分けてください。
不織布との違い
「不織布」とは「織っていない布」のこと。通気性のある繊維を熱や接着剤で結合させて作ります。そのため不織布には網目がなく、その代わりに細かい穴が無数に開いています(多孔質)。寒冷紗と同じように種まきの後に使用するのですが、特に冬場は保温性の高い不織布がその効力を発揮します。その一方で、春や秋には寒さと暑さに対応できる寒冷紗が使いやすいでしょう。日光が強く水分の蒸発を防ぎたい場合にも遮光率の高い寒冷紗がおすすめです。
【不織布に関する記事はこちら】寒さに強いトンネル・マルチに! 便利な高機能フィルム&不織布6選
遮光ネットとの違い
遮光ネットは、直射日光から農作物などの植物を守るための日よけです。植物も日かげに入れば暑さをしのぐことができます。寒冷紗と似たような効果があるのですが、遮光率が約30~85%と幅広いラインナップが揃っています。70%以上になるとほとんど光を通さず、遮光率が高いものは目が詰まって通気性も低いので寒冷紗の代用はできません。農業資材販売店や園芸店、ホームセンターなどでさまざまな遮光ネットが販売されています。
【遮光ネットに関する記事はこちら】遮光ネットで農作物を日差しから守る! 正しい選び方・使い方は?
防虫ネットとの違い
防虫ネットは、日光や温度ではなく害虫対策に特化したネットです。農作物に害を与える虫は多種多様。1ミリに満たないような害虫もいるので、ネットの目の細かさによって対策できる虫に違いが生まれます。使われる素材や色によってもその効果が異なるため、目的に合わせた使い分けが重要です。育てたい作物や対策したい虫に合わせて、最適なネットを選びましょう。
寒冷紗を使いこなして、ひとつ上の家庭菜園ライフを!
寒冷紗を扱うさまざまなメリットや、育てたい作物や目的に合わせて選ぶ大切さが、この記事で納得いただけたと思います。寒冷紗は、ひとつ上の家庭菜園ライフを送るためのマストアイテムと言えるかもしれません。上手に使いこなして作物がスクスクと育つ環境をしっかり整え、有意義な家庭菜園をお楽しみください!