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ピートモスの効果や使い方とは? 代わりになる資材も紹介

鮫島 理央

ライター:

ピートモスの効果や使い方とは? 代わりになる資材も紹介

土壌改良材として使われることが多いピートモス。自然由来の材質でできていて、土の保水性や保肥性を高める力を持っています。非常に便利な農業資材ですが、使い方を知らないと思わぬ失敗をしてしまうことも。本記事ではピートモスの正しい散布方法など基本的なことから、腐葉土や堆肥(たいひ)との違いやpHについての注意点、選ぶときのポイントや相性の良い作物まで幅広く解説していきます。本記事を参考にして栄養いっぱいの土壌を作り上げましょう。

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ピートモスとは

ミズゴケやヌマガヤ、ヨシ、スゲ、ヤナギなどの植物が長い時間を経て腐植化し、泥炭となったものを乾燥させるとピートモスという土壌改良材となります。ピートモスは原産地やもとになった植物の構成比率によって、性質が多少異なります。

また、2000年以上前の地層から採取されるものを「白ピート」、8000~1万年以上前の地層から採れるものを「黒ピート」と呼んでいます。黒ピートは白ピートに比べて腐植(フミン酸)の含有率が多く、保肥性や保水性など土壌を改良する能力が高いと考えられています。しかし、黒ピートは採掘量が少なく貴重なので、白ピートと比べてコストが高いというデメリットもあるので、使い分けると良いでしょう。

ピートモスのpHはどれくらい?

ピートモスは材質自体の特徴として、フミン酸(腐植酸)という強い酸性を持っています。一般的には酸度を調整しているものと、無調整のものの2種類が流通しており、目的によって使い分ける必要があります。酸度調整済みのものはpH6程度と中性ですが、無調整のものはpH3~4程度と強い酸性です。

単に保水性や保肥性の改善など、土壌改良で使う場合は酸度調整済みのものを使用し、アルカリ性に傾いた土壌を中和する目的で使う場合は無調整のものを使うと良いでしょう。

ピートモスと腐葉土・堆肥の違いは?

ピートモスと同様に、腐葉土や堆肥も土壌改良材として良く聞く資材です。
それぞれ以下のような特徴を持っています。

腐葉土:落ち葉や枝などを発酵させたもので、pH6~7ほどと中性の資材です。
堆肥:動物の排せつ物を発酵させたもので、pH8~9とアルカリ性の資材です。
ピートモス:ミズゴケ類や植物が腐植化したもので、pH3~4と酸性の資材です。

それぞれ原材料や酸度、価格や入手のしやすさも異なります。
栽培する作物の性質によって使い分けると良いでしょう。

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ピートモスの役割や効果

ピートモスの役割や効果は次の通りです。

1.土壌のpHを酸性に寄せる
2.保水性や保肥性を高める
3.土壌改良効果

それぞれ詳しく説明していきます。

1.土壌のpHを酸性に寄せる

無調整のピートモスは強い酸性なので、土壌のpH調整剤として使うことができます。培養土や土壌に対して、20~30%ほど混ぜるとpHを0.2~1.0ほど酸性に傾ける効果があるといわれています。酸性の土を好むブルーベリーなどの作物を栽培する際に使用すると良いでしょう。

2.保水性や保肥性を高める

ピートモスは水や肥料分を良く吸収するという性質があります。
保水性や保肥性の向上を目的とする場合は、調整済みのピートモスを使うと良いでしょう。

3.土壌改良効果

ピートモスは、繊維質を多く含んだ有機物のため、土壌改良材として高い効果を発揮します。特に繊維質の粗いピートモスは、保水性や保肥性を高めてくれるうえに、土壌の通気性も良くしてくれます。またピートモスの有機物が緩やかに分解されていくため、土壌の栄養補給としても使えます。

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ピートモスを選ぶときのポイント

ピートモスを選ぶときのポイントは次の通りです。

1.無調整か調整済みか
2.産地や容量
3.キメの細かさ

それぞれ詳しく説明していきます。

1.無調整か調整済みか

ピートモスにはpH無調整のものと調整済みのものがあり、用途によって使い分けることが大切です。

無調整のものはpH3~4と強い酸性なので、酸性を好む作物や、アルカリ性の土壌を中和する際に便利です。

一方調整済みのものはpH6前後と中性なので一般的な土壌改良に適しています。

2.産地や容量

海外ではカナダや北欧、国内では北海道がピートモスの主な産地として有名です。
カナダのものは高品質で繊維質が細かく、北欧のものは繊維質が不ぞろいで、緩やかに分解されていきます。

また、10L入りから40L入りなど、さまざまなサイズのものが販売されているので、使う量によって選びましょう。なお、ピートモスは水分を吸わせてから使います。製品によってはかなり容量が増えるので、注意が必要です。

3.キメの細かさ

キメ(繊維質)の細かいものは、土壌に混ざりやすいので、すき込んで土壌改良材として使用するのに適しています。

一方で、繊維質が粗く長いものは、作物の株元に敷きわらやマルチングの代わりとして置くこともできます。

ピートモスの基本的な使い方

ピートモスの基本的な使い方は次の通りです。

1.使用前に十分な水を吸収させる
2.育てる野菜・植物に応じて混ぜる割合を調整する
3.そのまま種をまいてもOK

それぞれ詳しく解説していきます。

1.使用前に十分な水を吸収させる

袋から出したばかりのピートモスはカラカラに乾燥しており、水をはじいてしまいます。そのままでは保水性や保肥性も悪く、畑にまいても、土となじまなかったり、雨水などで流れ出てしまいます。ピートモスの能力を生かすためにも、必ず使用前に水を含ませましょう。やり方は簡単で、バケツなどにピートモスと水をたっぷり入れて、しばらく放置するだけです。十分に水を含んだら、バケツから取り出して、ある程度湿った状態のものを畑や鉢植えに散布しましょう。

2.育てる野菜・植物に応じて混ぜる割合を調整する

栽培する作物に応じて、ピートモスと土との割合を調整しましょう。
一般的な作物を栽培する際は、調整済みのものが便利です。一方で酸性土壌を好むブルーベリーやジャガイモ、ツツジやサツキなどを栽培する際は、無調整のものを使っても良いでしょう。

ピートモスは土壌に対して20~30%の割合で混ぜるとpHを0.2~1.0ほど酸性に傾けてくれます。例えば、ブルーベリーの場合はpH4.3~5.0くらいを好むので、土壌の酸度を計測しながらピートモスを混ぜていきましょう。

なお、ピートモスの割合が多すぎると根腐れの原因になることもあるので、入れすぎには注意しましょう。

3.そのまま種をまいてもOK

新品のピートモスは雑草の種や病害虫などが混入しているおそれもないので、種まき用土としてもぴったりです。

保水性が高く、通気性も良いので、発芽に必要な水分を確保しながら、カビなどのリスクも管理することができます。

ただしピートモス自体に肥料分は含まれていないので、ポットや植木鉢などを使ってそのまま栽培する際は、肥料を忘れずに。

ピートモスを使うときの注意点

ピートモスを使うときの注意点は次の通りです。

1.乾燥を好む野菜には使わない
2.酸性に寄り過ぎると生育を阻害する可能性あり
3.乾燥しすぎると吸水しなくなる

それぞれ詳しく説明していきます。

1.乾燥を好む野菜には使わない

ピートモスを加えた土壌は、保水性が高まり水持ちが良くなります。
そのため、乾燥した土を好むトマト・ネギ・ダイコン・ゴボウ・カボチャなどの栽培にはあまり向いていません。場合によっては根腐れを起こしてしまうこともあるので、注意が必要です。

一方で湿った土を好むサトイモ・ナス・ミツバなどの栽培にはぴったりなので、ピートモス自体が栽培する作物に適しているのかしっかり確かめてから使うようにしましょう。

2.酸性に寄り過ぎると生育を阻害する可能性あり

野菜の多くはpH6.5前後の土壌を好み、やや酸性寄りの畑でよく育ちます。しかし、土壌が酸性に寄り過ぎると、土壌中のアルミニウムが酸によって溶解し、根の生育を阻害してしまいます。またリン酸と結合しリン酸アルミニウムとなることで、根がリン酸を吸収できなくなってしまうので、作物が育たなくなってしまいます。

日本の土壌環境はもともと酸性寄りのものが多いので、酸性に偏りすぎないようにピートモスを使う際はしっかり土壌のpHを計測して、栽培する作物の最適土壌にするよう心がけましょう。

3.乾燥しすぎると吸水しなくなる

乾燥してしまったピートモスは強い撥水性を持つようになり、吸水性・保水性が著しく悪くなります。高温で雨が降らない日が続く夏などの時期は、土壌が乾燥しピートモスも乾いてしまい、水をはじくようになってしまうことも。

一度乾燥したピートモスを水につけても、保水性はもとに戻らないので管理には注意しましょう。

筆者おすすめのピートモス4選

サカタのタネ スーパーミックスA 40L

「サカタのタネ スーパーミックスA」は優れた保水力と有機質が特長の黒ピートと、吸水性と通気性の良さが特長の白ピートをミックスした改良材です。あらかじめ適度な水分が含まれているため、袋から出してそのまま使用できるのも嬉しいポイントです。またpH調整済みなので使い勝手も良いでしょう。

>>詳細はこちら

平和 ピートモス 10L

「平和 ピートモス」はカナダ産の品質の高いピートモスです。カナダという寒冷地で長い時間をかけて腐植化したミズゴケを使用しており、無調整のためpH3.7~4.0となっています。酸性土壌にしたいときや、アルカリ性の土壌を中和したいときにもぴったりです。

>>詳細はこちら

ピートモス(ロシア産)復元時320L

pH無調整のもので、その名の通りロシア産のピートモスです。水分を含ませると320Lほどの大きさまで膨らみます。とにかく大容量なので、ピートモスを一度にたくさん使いたいという人におすすめです。

>>詳細はこちら

ブルーベリー専用ピートモス ブルーベリー元気 20L

「ブルーベリー専用ピートモス ブルーベリー元気」はブルーベリー栽培専用に配合されたピートモス培養土です。根張りを促進する二価鉄や活着促進剤が含まれており、植え付け時や栽培時、月に1度土の表面に散布するだけで効果があります。

>>詳細はこちら

ピートモスは100均でも購入できる?

ピートモスはコメリやカインズ、コーナンといったホームセンターや園芸資材店で主に販売されていますが、ダイソーといった100円ショップでも売られています。

ダイソーの「ピートモス2.0L」はラトビア産ピートモスを使用した商品で、110円(税込み)で購入することができます。小さなポットで使いたいという人や試しに使ってみたいという人にぴったりです。

ピートモスを使ったほうが良い野菜や植物

ピートモスを使ったほうが良い野菜や植物は次の通りです。

1.ブルーベリー
2.ジャガイモ
3.ツツジ
4.サツキ

それぞれ詳しく説明していきます。

ブルーベリー

ブルーベリーはpH4.3~5.0くらいの酸性土壌が生育に向いています。
無調整のピートモスはpH4.0前後のものが多いので、ブルーベリー栽培に最適です。畑で栽培する際は土壌に適量のピートモスを混ぜ込むだけで良いですが、プランターや鉢植えで栽培する際は、軽石やパーライトと混ぜて使いましょう。

またブルーベリー栽培用に配合されたピートモス培養土も販売されているので、そちらを使うのも良いでしょう。

ジャガイモ

ジャガイモはpH5.0~6.0くらいのやや酸性土壌が生育に向いています。日本の畑は自然と酸性土壌に寄っていくので、調整済みのピートモスでも栽培前の土壌改良材として十分使えます。

プランターや鉢植えで栽培する際は、ジャガイモ専用に配合されたピートモス培養土などを使用すると良いでしょう。

ツツジ

ツツジも酸性土壌を好むので、ピートモスを使うと根張りが良くなります。
露地植えの場合は、植え穴に腐葉土とピートモス、花用肥料を1平方メートルあたり150グラムを与えて土とよく混ぜます。

プランター栽培の場合は、赤玉土:鹿沼土:ピートモス:バーミキュライトを4:2:3:1の割合で混ぜて土を作りましょう。

サツキ

サツキを露地植えにする場合は、根鉢の直径3倍ほどの穴を掘ってよく耕します。耕した土と同じくらいの量の無調整ピートモスをすき込み植え付けしましょう。保水性が良くなり根張りが良くなります。

プランターや鉢植えで栽培する場合は、赤玉土細粒:鹿沼土細粒:無調整ピートモスを5:3:2の割合で混ぜて土を作りましょう。

ピートモスの代わりに使える資材

ピートモスの代わりに使える資材としては、ココナッツ繊維(コイア)や腐葉土が挙げられます。それぞれ詳しく説明していきます。

ココナッツ繊維(コイア)

ココナッツ繊維(コイア)は文字通りココナッツ繊維で出来た土壌改良材です。
繊維状やチップ状、ピートモス状など規格がさまざまあり、目的によって使い分けることができます。ミズゴケのピートモスと比べても、多孔質で通気性・排水性が良く、ゆっくりと分解されていきます。

ピートモスは環境破壊につながるという意見もありますが、ココナッツ繊維はココナッツを人工的に粉砕し、池や川などにつけて作るので、環境への負荷は小さいと考えられています。
なお、原産国によって品質の差が大きいので、メーカーをしっかり選んで使いましょう。

腐葉土

腐葉土は広葉樹などの葉っぱや枝を微生物で発酵させたもので、身近な資材といってもいいでしょう。通気性や保水性、保肥性も良く、ピートモスと比べてpHも中性なので使い勝手も良い資材です。

腐葉土などの発酵資材は、発酵が不十分だと根腐れや病気、害虫発生の原因となってしまうので、よく完熟したものを使うことが大切です。

目的にあった使い分けが重要

土壌改良から栽培用土にと幅広い目的に使用できるピートモスですが、目的によって使い分けることが大切です。
土壌改良や一般的な野菜・花の栽培に使いたいのであれば、調整済みのものを使ったり、石灰を合わせたりして散布することで栽培に適した土壌酸度を守りましょう。

ピートモスは保水性や保肥性、通気性を良くしてくれる園芸の強い味方ですが、正しい使い方が出来ないと、逆に根腐れの原因になってしまったり、土壌から流れ出てしまったりしてしまいます。本記事を参考にして、より良いガーデンライフを送ってくださいね。

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