就農1~2年目!奮闘中の松浦さんと錠前さん
今回お話を伺ったのは、宮城県亘理町で春菊などの露地栽培を行う松浦正さんと、宮城県山元町のいちご栽培事業所に勤務する錠前羽瑠さん。
2人とも、2023年11月に宮城県亘理町で開催された新規就農者向けの講習会参加者です。
昨年8月まで会社員だったという松浦さんは、農業高校を卒業後、JAに入職。7年半ほど勤めたあと民間企業へ転職しました。
一度は離れた農業の道。養鶏場を営む両親から「会社員のほうがいい」と勧められたこともありましたが、頭の中には常に「農業」があったといいます。
自ら農業をやりたいという想いは日に日に強くなり、独立就農を決断。
実家の畑を利用し、夏は長ナス、冬は亘理町逢隈地区の特産でもある春菊を栽培しています。
岩手県出身の錠前さんは、2023年4月に宮城県山元町のいちごを生産する農業法人に入社。農業大学校では野菜栽培を専攻し、卒業後は仙台への憧れから宮城県へ。
やるならその土地の特産をと、いちご栽培へのチャレンジを決意しました。
入社から半年が経過し、「ようやく日々の作業に慣れてきたかな」と笑みを浮かべます。
そんな錠前さんが今気になっているのは、職場の先輩との知識の差。
「こういうときはこの防除剤を使いたいよね」といった話を耳にすると、同じように理解できないことに引け目を感じることがあるのだといいます。
また、松浦さんも農薬への知識はJAで勤務していた頃に得たものがほとんどで、現場で知らないことが多いのでは、自身の認識は正しいのか、と不安になることがあるのだとか。
農薬は正しく使用しなければ、生産者にも消費者にも大きな影響が出てしまいます。
正しい知識を学ぶべく2人が参加したのが、『クロップライフジャパン』が委託し、公益社団法人『緑の安全推協会』が主催する農業適正使用の講習会でした。
「疑問を疑問のままにしないで」クロップライフジャパン/緑安協から学ぶ 講師派遣事業
宮城県では、就農1~5年目までの若手農業者に技術や知識を教える「みやぎ農業未来塾」を実施しており、2人が参加した亘理農業改良普及センターでの講習会はプログラムの一環です。
実は亘理農業改良普及センターがクロップライフジャパンに講師依頼をするのは今回が2回目。
担当の伊藤愛さんに伺うと、新規就農者からは農薬や病害虫防除を勉強したいという声が非常に多いこと、前年の講習の反響がよかったことから、再び依頼することになったのだといいます。
この日の講座のテーマは「農薬の知識と適正使用」。
講師を務めたのは、当講座で長年委託講師を務める森島靖雄さんです。
農薬に貼られたラベルの見方や適正使用のポイントといった基本的なことから、病害虫防除に関することまで、クイズなどを交えながら解説する森島さん。
丁寧な解説や繰り返し伝えられた「疑問を疑問のままにしないで」という言葉に、参加者たちも深く頷いていました。
伊藤さんによると、講習会後に配られたアンケートには「わかりやすくてよかった」という声が多く寄せられたのだとか。
伊藤さん自身も「開催してよかったです。参加者の皆さんには今回得た知識を生かしてほしいですし、またお願いしたいと思います」と、確かな手ごたえを感じたようでした。
「こんなとき、どうすればいいの?」若手農家2人が講師に直球質問!
講習会終了後、松浦さんと錠前さんに感想を伺うと「ナスは剪定更新後に農薬の使用回数がリセットされる※ことを初めて知ったので、とてもためになりました」(松浦さん)、「これまで受けた講習は応用的な内容であることがほとんどでした。それに対し、今回は基礎的なことを教えてもらえて勉強になりました」(錠前さん)と、2人とも講座の内容に満足の様子。
※【参考資料】「使用回数カウントできてる?」クロップライフジャパンリーフレット
講習中も質疑応答の時間はありましたが、せっかくの機会ということで、2人から講師の森島さんへ質問タイムを設けました。
その一部を抜粋してご紹介します。
錠前さん
森島さん
松浦さん
その場合、残りはもう一度かけても問題ないのでしょうか。
ただし、余ったからと言って残りの散布液を何かの容器に溜め置くことは絶対にやめてください。作物がない地面に、河川や地下水に直接流れ込まないように注意して廃棄しましょう。廃棄された場所は耕起作業を行えば、農薬の使用回数としてリセットもされますので、作物を栽培することもできます。
森島さん
錠前さん
重要なのは、最後にその情報が正しいかを最初に尋ねた病害虫防除所や農業試験場に確認することです。これを繰り返すと、新しい農薬の正しい情報を得ることができますし、ご自身の経験値を積むことにもつながります。恐れずにチャレンジしてみてください。
森島さん
そのほかにも、「スギナは他の雑草よりも希釈倍率が低いです。もったいなく感じるのですが、指定の希釈倍率でないと効かないのでしょうか」とか「今日使った農薬に希釈倍率が1000~1500倍と書かれていたのですが、結局何倍で使えばいいのでしょうか」など、現場にいる新規就農者ならではの質問が森島さんに寄せられました。
基本的な知識を学べることはもちろんですが、日々の疑問を農薬のプロに直接聞けるということは、この講習の魅力のひとつといえます。
クロップライフジャパン 教えて!農薬Q&A
農薬のお悩み、困りごと、就農者の講習に関する相談などはお気軽にクロップライフジャパンへ
講習参加者に対し、「2人のような若い方が新規就農されるのはとても頼もしいことですね」と目を細める森島さん。
「これから先、予期せぬ事態で心が折れそうになることもあるかもしれません。ひとつひとつ成功体験を積みながら、長く農業を続けていただきたいです」と話していました。
講習を踏まえて松浦さんは「今日学んだことを生かして、新たな作物を栽培するなど収入を増やしていけるような挑戦を続けていきたいです」と抱負を教えてくれました。
錠前さんも「食べた人に『おいしい!』と喜んでもらえる、安全ないちごをつくっていきたいです」と話していました。
クロップライフジャパンでは、今回のような講師派遣を全国で行っています。
新規就農者が農薬を正しく理解し、より良い作物を生産し続けられるよう、活用してみてはいかがでしょうか。
【取材協力】
宮城県亘理農業改良普及センター
【お問い合わせ先】
クロップライフジャパン
東京都中央区日本橋茅場町2丁目3-6 茅場町偕成ビル
公益社団法人 緑の安全推進協会
東京都千代田区内神田二丁目12-1