主食米はすべて1等級を維持
横田農場の2023年の栽培面積は169ヘクタール。複数のコメの品種を作期を分けて育てることで、トラクターとコンバインを1台ずつでこなす効率経営で知られている。だが横田農場の収益性の高さはむしろ緻密な栽培管理に支えられているのだが、そのことは後述しよう。
稲作は2023年、猛暑による高温障害や水不足でコメの品質が低下した。農林水産省によると、1等米の比率は12月末時点で61.3%と、前年比で17.3ポイント下がった。横田農場のある茨城県も、56.3%の低水準だった。
では横田農場はどうだったのだろうか。
コメの検査は通常、モミを外して玄米にしてから、粒の小さい「くず米」を取り除いた後、玄米の色や形、異物の混入度合いなどによって等級を判定する。くず米には高温障害や病害虫で生育不良になったものが少なくない。
これに対し、横田農場はくず米を除外した後だけでなく、その前の段階でも検査する。それも調べた方が、コメの品質を全体的に把握し、栽培がうまくいったかどうかを知ることができると考えているからだ。

横田農場のコメの乾燥貯蔵施設
取材で見せてくれたのは、くず米を除外する前の検査結果のうち、暑さで米粒が濁る「白未熟粒」の比率だ。代表の横田修一(よこた・しゅういち)さんによると、「2023年は前年より若干比率が高まったものの、影響はそれほどひどくなかった」。
例えば、新潟などで深刻な影響が出たコシヒカリも、横田農場では白未熟粒の比率の上昇が3ポイント程度に収まった。くず米を取り除いてから検査し直したところ、7種類ある主食米はすべて1等米だったという。
栽培がうまくいったことを示すデータは他にもある。単位面積当たりの収量が前年を9%上回り、過去最高になったのだ。コメの栽培が難しかったとされる年に、なぜ例年以上の成果をあげることができたのだろうか。