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古民家リノベーションにかかる費用は? 出費を抑えるコツや使える補助金、リフォームとの違いなどを一挙解説

古民家リノベーションにかかる費用は? 出費を抑えるコツや使える補助金、リフォームとの違いなどを一挙解説

近年、古民家をリノベーションして自分らしい住空間や店舗を構えたいと考える人が増えてきています。しかし、どれくらいの費用がかかるのか、どんなことに注意すればいいのかなどが分からず、なかなか手を出せない方も多いのではないでしょうか。本記事では、実際に古民家を再生した宿泊施設を経営する筆者が、リノベーションにかかる費用のほか、出費を抑える工夫、使える補助金についても紹介します。本記事を参考に、ぜひ古民家をリノベーションし、夢の空間を実現する一歩を踏み出してください!

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古民家のリノベーションとは?

古い日本家屋には、現在の建物には見ることができない立派な柱や梁(はり)などがあり、現代を生きる私たちもその美しさに魅了されます。古民家ならではのたたずまいや趣を残しながら、現代の暮らしに合わせ手を加えることが古民家リノベーションです。一口に「古民家」といっても築年数はさまざま。「築何年以上経過した建物が古民家」というような明確な定義はありませんが、一般社団法人全国古民家再生協会では「昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた『伝統的建造物の住宅』すなわち伝統構法とする」と定義しています。

リノベーション前の古民家

リノベーションとリフォームの違い

「リノベーション」と「リフォーム」の言葉の使い分けは曖昧になりつつあり、混同しやすいですがそれぞれ違う意味があります。「リノベーション」とは、既存の建物に工事を行うことで、建物の性能を向上させ、さらには新しい価値や新たな用途を創り出すことを指します。一方、「リフォーム」は老朽化した建物を新築の状態に戻すことを指します。比較的小規模の工事は「リフォーム」、間取りや水道管、排水管の変更など大規模な工事を「リノベーション」と使い分けることもあります。

リノベーションの種類

一口にリノベーションといっても、費用や時間のかけ方で空間の変貌具合は全く異なります。ここでは、リノベーションの方法を大きく三つに分けてご紹介します。それぞれにメリット・デメリットがあるのでご自身にあったリノベーションのスタイルを検討してみてください。

フルリノベーション

建物全体を改修・改造することを指します。例えば、間取りを変えたり、断熱材を入れ、水道管や排水管などの設備を入れ替えたりすることなどが該当します。フルリノベーションのメリットは何といっても自由度が高く理想的な空間を作ることができる点です。ライフスタイルの変化に合わせて自分に合った空間を手に入れることができる喜びは格別です。一方デメリットとしては、大規模な改修になるため費用は高くなり、改修期間も長くなります。

表層リノベーション

壁紙やフローリングなど目に見えるもののみを改修し、水回りの設備を新しいものに交換するなど、表面的に見えている部分だけを改修するリノベーションのことを指します。メリットとしては、小規模の工事となるので費用を抑えることができ、工期を短くすることができます。工事規模としては小さいものですが、目に見える部分に変化がみられるので部屋の印象は大きく変わります。一方デメリットとしては、配管や電気配線など目に見えない部分には手を加えないので、劣化や老朽化に気づくことができず、長期的に見ると再度リノベーションをすることとなり結果的に費用がかさんでしまう場合もあります。

部分リノベーション

一部屋だけなど一部を改修するリノベーションのことを指します。メリットとしては、工事範囲が限られるため費用が抑えられ、工期も短くなります。一方デメリットとしては、部屋全体としての統一感を出しにくい点があります。また新しい設備と古い設備で見た目に差が出てしまうこともあります。

古民家をリノベーションするメリット

古民家をリノベーションすることで、古い日本家屋のたたずまいや趣を残しつつ、現代の暮らしに適した新たな機能を持たせることもでき、新旧の良さを掛け合わせた空間づくりを行うことができます。ここでは古民家リノベーションのメリットについてご紹介します。

自由な間取りにできる

壁や襖をすべてなくして広々としたリビングを造ることができるのはもちろん、襖をドアに付け加えることで完全な個室を造るなど、自身のライフスタイルに合わせた間取りにすることができます。

風情を残しつつ機能を高められる

長い年月を経ることで生まれる建物の味わいを残しつつ、リノベーションで設備を新しくして、断熱工事等をすることで機能性を高めることもできます。

流行に左右されない

現代の住宅はデザインが似通っていて、時が流れるにつれ家のデザインのはやりも変わっていきます。一方、古民家はもともと古いものなので、流行に左右されることはありません。むしろ、時がたてばたつほど味わい深くなり価値は高まります。

固定資産税を抑えられる

固定資産税の税額は築年数により異なります。築年数の古い家をリノベーションする場合、新築に建て替えるよりは固定資産税を抑えることができます。

唯一無二の空間になる

古民家の天井板を剥がすと今では見ることができない立派な梁や柱があらわれます。それらをあえて見せることで開放的で独創的な空間をつくることができます。また、建具等も趣あるデザインのものが多く、それらを利活用することで唯一無二の空間をつくることができます。

古民家をリノベーションする際の注意点

古民家リノベーションというと、間取りの変更やデザインなど目に見えることだけにとらわれてしまいがちですが、重要なのは機能性や耐震性です。ここでは、古民家をリノベーションする際のデメリットについてご紹介します。

耐震・断熱工事等が必要なことが多い

古民家は耐震基準などが設けられていなかった時代に建てられたため、耐震補強が必要になることがあります。また、古民家は風通しが良く、夏場は風の通りが良いのですが冬場は、隙間(すきま)風が入り外の気温と変わらないほど寒くなります。そのため快適に過ごすのであれば、断熱工事は必須となります。また、天井が高くエアコンの効きが悪いため、あえて天井板をつける場合もあります。そして、現在の家と比べると段差が多いためバリアフリー化も検討する必要があります。

現代の建物をリノベーションするより時間がかかる

古民家は建築当時の図面が残っていないことが多く、建物の性能調査には時間がかかります。また、現代の建物では見ない、製材されていない丸太が床や天井に使われていることもあり施工に手間がかかり工期が長くかかります。長く空き家だった場合は、白アリ被害が深刻な場合もあり、その駆除で時間も費用もかかってしまいます。

基礎部分をプロが作業中

部分的に専門業者の力が必要

近年古民家リノベーションのブームもあり、DIYでリノベーションを行う人も増えてきています。DIYは予算を抑えることができ、自分の思い描いた空間をつくりあげることができますが、目に見える表層的な部分のみに適している手法といえます。電気や水道、ガス工事は必ず専門資格を有するプロが作業することが必要となります。また家の基礎部分や柱など建物の重要な部分は自身で判断することなく、必ず専門業者に見てもらう方が安心です。

古民家なので修繕箇所・回数が多くなる

新築の建物と異なり、長い年月がたっているため、家のあちらこちらに不具合が出てきます。修繕箇所は一つにとどまらず、修繕回数も多くなります。一度リノベーションして終わりではなく、定期的な建物の改修やメンテナンスが必要となり、思いがけず費用がかかる場合もあります。

古民家のリノベーションにかかる費用の相場

リノベーション費用は、建物の状態や広さ、施工内容によってさまざまなので一概には言えません。内装デザインの変更や一部屋だけなど部分的なリノベーションの場合は500万円以内の予算で行えることもあります。一方、建物全体をフルリノベーションするような場合は費用が数千万円ほどかかる場合もあります。予算を重視するのか、デザインや機能性を徹底的に追及するのかなど、施工主の意向に合った予算をたてる必要があります。

筆者が実際にかかったリノベーション費用と期間

筆者自身も古民家をリノベーションして、現在鹿児島県南九州市にて1日1組限定の1棟貸し切りの宿泊施設を運営しています。建物は築70年ほどで広さは約80平米です。建物は老朽化し、基礎部分のみ残した状態で表層リノベーションを行いました。襖を壁に変え、ロフトを造るなど大掛かりな箇所のみ工務店に依頼し、それ以外の部分はDIYで改修しました。

空いた時間で少しずつ作業をしていたので、10カ月ほどの期間を要しました。ほぼDIYで仕上げたこともあり、費用は200万円ほどに抑ええることができました。ただし、プロに依頼する場合は当然、もっと費用がかかってくるでしょう。

古民家のリノベーションにかかる費用を抑えるコツ

リノベーションの費用を抑えたいと考える人は多くいるでしょう。費用を抑えるコツとして、補助金や減税制度を利用する、すべて新しく造りかえることなく既にある建具など素材を生かす、そしてDIYを取り入れるなどがあげられます。具体的にどのような方法があるのかご紹介します。

補助金・減税制度を活用する

古民家をリノベーションする際に活用できる補助金や減税制度にはさまざまなものがあります。

住宅の耐震性は地域の安全に深く関わるため、木造住宅向けの耐震事業などがあります。
また、近年国が省エネに力を入れていることから、断熱に対する補助金制度などもあります。

既存の建具を再利用

なるべく既存の素材や建材を生かす

古民家に使われている木材は長年家屋を支えることができる、強度が高いものが多いため、再利用できるようであれば活用します。近年木材などの資材が高騰しているので費用を抑えるために有効です。

DIYの様子

できる部分はDIYを取り入れる

建物の基礎部分や水道・ガス・電気などはプロに依頼をしなければなりませんが、床板を張る、壁を塗装するなどはDIYが可能です。自分の思う通りのデザインで施工できるため、DIYを取り入れる人が増えています。

古民家のリノベーションで活用できる補助金・減税制度

古民家をリノベーションする際に、国や各自治体でさまざまな補助金や減税制度を設けています。リノベーションの検討を始めたらまずは自分の住んでいる地域で使える制度がないかを確認することをおすすめします。ここでは、補助金や減税制度について紹介します。

耐震補強の補助金

耐震リフォーム・リノベーションをする際に利用できる補助金制度は各自治体が運営しているため適用条件や補助金額等が自治体によって異なります。耐震補助金の対象となるかどうか、補助額等については「築年数」「構造」「建物の用途」の条件によって決められています。お住まいの地域の市役所等に早めに相談するといいでしょう。

省エネ補助金

カーボンニュートラルを目指し、省エネを促進する動きが活発なため、断熱・省エネリフォームに対する補助金制度は充実しています。「既存住宅における断熱リフォーム事業」や「次世代省エネ建材の実証支援事業」などがあります。

バリアフリー補助金

築年数がたっている住宅は段差が多いなど、バリアフリー化されていないケースがほとんどです。住人に要介護者がいる場合は、バリアフリーリフォームに対し介護保険から補助を受けることができます。また、自治体独自の補助制度を設けている場合もあります。まずは担当のケアマネージャーに相談することをおすすめします。

古民家解体費用の補助金

倒壊の危険がある住宅等は、地域の安全を脅かすものです。そのため、自治体によっては解体に対しての補助金制度を設けている場合もあります。ただし、さまざまな条件がありそれを満たさなければ補助対象となりません。まずはお住まいの地域の市役所等に相談しましょう。

自治体独自の補助金

国が定める補助金制度以外に、各自治体が地域の実態に合わせた制度を設けている場合があります。例えば福岡市では市街化調整区域における定住化促進のための「福岡市空き家活用補助金」があり、改修工事や家財道具の処分等にかかる費用の1/2(上限100万円)を補助する制度があります。

所得税の控除

所得税の控除には「投資型減税」「ローン型減税」「住宅ローン減税」の3制度があります。対象となるリノベーションの種類や控除期間・控除額が異なります。投資型減税は、リフォームローンの利用の有無に関係なく利用できるのが特徴です。ローン型減税は償還期間5年以上のローンを利用している場合、住宅ローン減税は償還期間10年以上のローン利用を条件にしています。

固定資産税の減税

固定資産税とは保有する土地や建物といった固定資産について各自治体に収める税金です。リフォームの内容が適用条件に該当する場合、その古民家にかかる固定資産税を減税することができます。減税対象となるのは「耐震」「バリアフリー」「省エネ」「長期優良住宅化」です。工事完了後、申告期限が定められているので完了次第速やかに申請しましょう。

古民家リノベーションの流れとは? 実例を交えて紹介

それでは、ここからは古民家をリノベーションすると決めてからの流れを筆者の実体験をもとにご紹介していきます。流れをつかむことで、より具体的なリノベーションプランを立てることができます。

床下の状態を確認する

手を付けてもいい物件かの見極め

古民家をリノベーションする際に、まず始めに手を付けていい物件なのかどうかを判断する必要があります。基礎や土台が傷んだまま他の部分を改修しても後で傾いてきたりするため、床下の状態確認が必要です。また、家の改修で費用がかさむのは屋根のため、屋根の状態も確認します。まれに地盤沈下で家が傾いているケースもあり、その場合は補修費がかさむためリノベーションするのは避けた方が無難です。

おおよその予算を決める

どれくらいの費用までなら捻出できるかをあらかじめ想定しておきます。その予算内で改修できる箇所を選定します。DIYする場合も、必ず始めに工務店などプロの目で建物を見てもらい、プロに任せる部分と、DIYする部分を決めます。

使える補助金制度を確認する

改修内容が決まれば、利用できる補助金制度がないかも確認します。改修前に補助金を受ける条件を確認することが重要です。

実際にリノベーション工事に入る

DIYで改修したい部分があれば、あらかじめ工務店などに伝えておきます。プロに依頼する作業とDIYが混在する場合は、作業の順番などをきちんと確認しておくとお互いにスムーズに動けます。

古民家リノベーションは後悔する? 後悔しないためのポイント

「古民家リノベーション」でネット検索すると、「後悔」や、「古民家は買うな」などマイナスな投稿を目にすることがよくあります。古民家は趣があり魅力的ですが、現代の住宅とは異なり機能性が低く、思いのほか費用がかかるなどトラブルもつきものです。ここでは後悔しないために、おさえておきたいポイントをご紹介します。

事前に予算を設定しておく

古民家リノベーションはお金をかければかけるほど仕上がりも満足いくものになりますが、なかなかそうはいきません。無理のない予算設定をして、現実的に改修できる箇所を選定します。建物の維持に直結せず、今すぐに改修が必要でないような箇所はゆくゆく余裕が出てきてから改修するなど、改修箇所の優先順位をつけることも必要です。

老朽化の確認をしておく

建物全体の傷み具合をきちんと確認しておきます。すぐに改修は必要なくても数年後には改修する必要がある場合もあるため、その費用を前もって確認しておくと安心です。

光熱費がかさむことを想定しておく

古民家は広く、天井も高いため、現代の住宅と比べるとエアコンなどの効きが悪いです。
また、隙間も多くあるため熱が逃げやすい構造になっており光熱費はかさみます。少しでも光熱費を抑えるため断熱リフォームが有効的です。

仕上がりのイメージを業者と共有しておく

言葉だけではなく、こういったイメージで改修してほしいと図面や参考になりそうな写真を用いて業者と完成のイメージを共有しておく必要があります。気になる点はあらかじめ確認をするようにしておきます。

近隣住民との交流が必要になることも

古民家は郊外にあることがほとんどです。都市部と違い、密なご近所付き合いが求められる場合もあります。改修を始めてすぐに近隣の住民と交流を図っておくと、暮らし始めてからもさまざまな場面で助けてもらえることもあります。

夢の古民家ライフへ、周到な準備を

本記事では古民家リノベーションとは何なのか、リノベーションの種類や使える補助金制度、実例を交えてリノベーションの流れなどについてご紹介しました。古民家は魅力がある一方、現代の住宅とは異なり、改修する箇所が多くあるため想定よりも費用がかかって大変だったなどという苦労話もよく聞きます。せっかく夢を抱いて古民家をリノベーションするのですから、事前に確認できることはしておき、一つでも不安を減らしてから手をつけることをおすすめいたします。思い描いた通りの古民家ライフを送れるよう、本記事が参考になりましたら幸いです。

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