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農家から漬物会社へ、そして再び農業にカジを切った3代目の原点回帰

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

農家から漬物会社へ、そして再び農業にカジを切った3代目の原点回帰

かつて日本の食卓に当たり前のようにあったにもかかわらず、食生活の変化で目にする機会が減った食品がたくさんある。漬物もそのひとつだろう。そんな漬物の需要の減退を受け、農業に活路を求めた経営者がいる。持田漬物店(埼玉県深谷市)の持田直光(もちだ・なおみつ)さんにインタビューした。

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戦後の食糧難に対応した漬物製造

持田漬物店には現在、2つの事業の柱がある。1つは社名が示す通り漬物の製造で、野沢菜やショウガを塩漬けにしたり、塩漬けにした大根を仕入れてカットしたりした後、袋詰めなどをする最終加工業者に販売している。

もう1つは農業。約8ヘクタールの畑で、野沢菜やショウガ、ブロッコリーなどを栽培し、漬物の原料にしたり、農協に出荷したりしている。

漬物の製造を始めたのは祖父の代。もともと養蚕や野菜の栽培などを手がけていたが、終戦から間もない時期に大根を原料にして漬物をつくり始めた。

当時は食糧難の時代。漬物は保存がきく食料として重宝され、売り上げが順調に拡大した。事業を徐々に漬物に絞り、原料は仕入れて確保した。所有していた畑は他の農家に貸した。持田さんの父親も漬物業に専念した。

持田漬物店の工場の様子

持田漬物店の工場の様子

持田さんが農業を始めたのは15年ほど前。漬物の仕事をする傍らで、祖母が野菜を育てていた10アールの畑を使い、まずキュウリを栽培し始めた。その後は周囲の農家から畑を借りる形で農場を広げ、栽培品目を増やしていった。

野菜の栽培を始めた当初、持田漬物店の売り上げに占める野菜の比率は1割に満たなかった。ところが面積が拡大するのに伴い、野菜の販売量が増えて、いまや6割と本業だった漬物の売り上げを上回るほどになった。

漬物の需要減退で軸足を農業に

なぜ持田さんは農業を始めたのだろうか。その点について質問すると、「以前と比べて農家の数が減ってしまったから」という答えが返ってきた。他の地域と同様、深谷市でも高齢化で農家の引退が加速し始めたからだ。

原料を自社でまかなおうとしたわけではない。背景にあったのは、

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